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共和党がトランプ氏の躍進を阻止できない理由は?(Photo: ロイター/Kamil Krzaczynski)
共和党は、なぜトランプを止められないのか 躍進の裏で漂うファシズムの危険な臭い
http://toyokeizai.net/articles/-/113749
2016年04月17日 エリザベス・ドリュー :ジャーナリスト
原文はこちらhttp://toyokeizai.net/articles/-/111681
米大統領選の共和党候補指名を争う不動産王ドナルド・トランプ氏がなぜ躍進しているのか、米国民の多くが知りたがっている。
最初に理解すべきは、誰が大統領選に出馬するか、その決定について米国の政党は無力だということだ。大統領候補は実のところ、フリーランサーなのである。ある者は単に自身のエゴや欲望によって出馬を望み、仮に出馬できれば、敗退しても出版やテレビ出演で私腹を肥やし、演説家としてのキャリアを獲得しようとする。
トランプ氏も自身の名声を望み、指名争いに名乗りを上げた。彼は時代の精神をよく読み取っている。製造業主体から情報社会へと社会が変化する中、取り残された労働者の怒りに訴えかけたのだ。この労働者たちは、北米自由貿易協定(NAFTA)などの取り決めで、工場がメキシコに移ってリストラされたり、賃下げの圧力にさらされた人たちだ。
■移民を殺人者呼ばわり
彼はNAFTAを酷評しており、大統領になれば労働者により有利な協定を結ぶと約束している。また移民反対の感情にも訴えかけており、メキシコからの移民を「レイピスト」「殺人者たち」などとの過激な言い方で呼んだこともある。
トランプ氏の躍進は、彼のビジネスマンとしての成功が前提となって成り立っている。しかし実際、どれほど成功したかは不透明だ。彼はこれまで4度破産しており、事業に失敗した経験も多いとされる。保有資産は100億ドルに上ると自称しているが、その真偽について質問されると苛立ちを隠さず、納税用の所得申告書を公表することも渋っている。
トランプ氏の選挙活動には当初からファシズムのにおいが漂っていた。力を有する者が、力なき者を制していくのである。2015年11月、アラバマ州での集会において、トランプ氏の支持者数人が、抗議した黒人に暴力を働いた。
その際、トランプ氏は支持者らに、さらなる暴力を振るうよう促し、「やつをここから追い出せ」と叫んだ。この言葉の響きと聴衆の反応を好み、トランプ氏はその後の集会でも同じフレーズを繰り返した。
暴力を促すことは、トランプ氏がさらなる力を得るための武器の一つだ。3月半ばのシカゴの集会でも暴力事件が起こったが、彼はそこでも暴力を促した。そのうえで集会を中止して称賛を受けたのだ。
彼は暴力事件の映像が何度も放送されるよう、主要なケーブルテレビ局からインタビューも受けていた。このケースは以前のような、事故によるものだとは考えにくかった。
■高まる危険
共和党は今、あまりに力が分散されている。そのナショナリズムなどゆえに、トランプ氏が危険人物だという見方が強まっても、その躍進を阻止することができない。
共和党の一部では一時期、トランプ氏が大統領になっても悪くはないのではないかとの声が出たこともあったが、同氏が暴力を助長する姿勢を鮮明にし始めると、そうした意見は聞かれなくなった。ファシズムの危険は高まるばかりだ。
(週刊東洋経済4月16日号)
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