http://www.asyura2.com/16/kokusai13/msg/314.html
Tweet |
「パナマ文書」何を明らかに[NHK]
4月9日 0時55分
今、世界で大きな話題となっている「パナマ文書」。中米パナマにある法律事務所から流出した膨大な顧客データのことです。この「パナマ文書」をもとにした調査報道が、世界各国の首脳や著名人の「隠れた資産」を次々と指摘しています。
北欧アイスランドで首相が辞任に追い込まれるなど、各国の政治にも影響が出ていて、来月、G7の首脳が集まる「伊勢志摩サミット」でも議題に上がるといわれています。
この「パナマ文書」について、国際部の小原健右デスクが解説します。
パナマ文書とは
「史上最大の流出だ」。
今月3日、CIA=中央情報局のエドワード・スノーデン元職員が自身のツイッターで、そうつぶやきました。
アメリカの情報機関による大量の個人情報の収集を告発し、世界を震撼(しんかん)させたスノーデン氏をして、ジャーナリズムがこれまで扱ったデータの中でも類を見ないほど膨大で、汚職と腐敗を暴くものだと言わしめた「パナマ文書」。
最初に入手したのは、南ドイツ新聞に勤める2人の記者でした。
2人はおよそ1年前、ある人物から「見せたい情報がある。関心はあるか」との連絡を受けました。
数か月に及ぶやり取りの結果、分量にして2.6テラバイト、ファイルにすると1150万件という、実に膨大な量のデータを入手することになりました。
データは中米パナマにある法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出したものでした。
会計書類や電子メール、パスポートの写しなどのほか、会話を録音した音声ファイルなど、1977年から去年までの40年近くの活動を赤裸々に記録していました。
データは200の国と地域、21万4000の企業に及び、南ドイツ新聞は、世界各国の記者で作る団体、ICIJ=「国際調査報道ジャーナリスト連合」と連携して分析に乗り出したのです。
疑惑の「モサック・フォンセカ」
データが流出した法律事務所「モサック・フォンセカ」は、大きな資産がある個人や団体、それに企業の間では、世界的に有名な法律事務所とされています。租税の回避、すなわち、支払う税金の額をできるだけ少なくする方法を教えてくれるからです。
世界には、所得にかかる税率などが著しく低い国や地域があります。いわゆる「タックスヘイブン=租税回避地」と呼ばれるところです。
この法律事務所は、顧客にとって最も税金がかからない国や地域などを選び出し、そこに企業などをつくるのを手助けしていたといいます。
「パナマ文書」の流出前から、ブラジルの捜査当局などは、この事務所がマネーロンダリングといった不正な手法で得られた資金を隠すことに加担しているのではないかという疑惑を指摘してきました。疑惑に対して、「モサック・フォンセカ」は、不正は一切無いと、一貫して主張してきました。
しかし、今回流出した「パナマ文書」は、その主張に強い疑問を抱かせるものです。
次々と明らかになる「首脳」の疑惑
ICIJによりますと、「パナマ文書」には、アメリカがテロや麻薬取引などに関わる犯罪組織との関連が疑われるとしてブラックリストに指定した、少なくとも33の人物や団体の名前が含まれていました。
また、ICIJのメンバーとして調査に関わったイギリスのガーディアン紙は、北朝鮮の核兵器開発に関わる不正送金に関与した疑いで、先月、国連が制裁対象に指定した銀行が、この法律事務所の手助けを得てタックスヘイブンに企業を設けていたと指摘しています。
そして、最も大きな衝撃をもたらしたのが、世界各国の首脳や政府関係者などに関わる「隠れた資産運用」の詳細です。
皮切りとなったのは、北欧アイスランドの首相の「隠れた資産」です。
ICIJによりますと、グンロイグソン首相は2007年、タックスヘイブンとされるイギリス領のバージン諸島に、夫婦で購入した会社を通じて、自国の3つの銀行の債券に日本円で数億円の投資をしていました。しかし、この事実は、これまで公表されていませんでした。
アイスランドは、2008年のリーマンショックの影響で財政が破綻し、グンロイグソン首相が投資をしていた3つの銀行も破綻しました。問題とされたのは、首相が投資の事実を隠しながら、これらの銀行の債務処理に当たっていたことでした。国民からの批判の声の高まりでグンロイグソン首相は7日、辞任しました。
中国の指導層に近い人物たちの関わりも明らかになりました。
ICIJによりますと、習近平国家主席の姉の夫をはじめ、中国共産党で序列5位の劉雲山政治局常務委員の親族、それに序列7位の張高麗副首相の親族が、それぞれイギリス領バージン諸島の企業の株主になっていたとされています。
さらに、ロシアのプーチン大統領に関する疑惑も指摘されました。
ICIJは、大統領の古くからの友人とされる音楽家がいわゆるタックスヘイブンにある複数の企業に関わっていて、これらの企業がおよそ2200億円の資産を運用していたとしています。
運用は複数の企業の間で頻繁に行われていて、その複雑な企業ネットワークの構築には、プーチン大統領と関係が深いとされる「ロシア銀行」が関わったとしています。
ICIJは、この銀行について、アメリカが「まるで大統領の個人口座だ」と指摘していたことも挙げています。
ただ、ICIJは、ここで紹介した中国、そしてロシアの首脳について、企業を直接所有していたことなどを示す記載はないとし、資産の運用に違法性があるかどうかについても詳しく言及していません。
このほか、サウジアラビアのサルマン国王、シリアのアサド大統領、イギリスのキャメロン首相、そしてウクライナのポロシェンコ大統領もタックスヘイブンにある企業との関わりを指摘されています。
何が悪いのか
タックスヘイブンを活用して資産を運用することは、関係する国や地域の法律や規制、それにルールを守るかぎり、問題ないという主張もあります。
「モサック・フォンセカ」は、複数の国にまたがる企業どうしが合併するときや、各国の投資家から資金を集めるときなど、より効率的で競争力のある経済活動を行う必要がある場合、租税を回避できる国に関連の企業を設立することは合法的な活動だと反論しています。
しかし、ICIJが問題としているのは、こうしたタックスヘイブンを使って行われているマネーの流れが想像もできないほど巨額であるにもかかわらず、顧客のプライバシーなどを理由に、世界の一般の市民にはほとんど公表されていないことです。
NHKのインタビューに答えたICIJの担当者は「ガラス張りにすることが重要だ。政治家がなぜ会社を保有して外国に登録するのか。その会社がなぜ多額の資産を持っているのか。市民が聞きたいと思うのは当然だ」と指摘しています。
タックスヘイブンを使っていること自体を直ちに犯罪だとしているわけではなく、なぜ使っているのかを明らかにし、それに問題はないのかを問うのが目的だというのです。
注目は日本、そして各国の動き
ICIJの担当者は「世界各地で今も記者たちが新しい事実を掘り起こしている。今後、数か月にわたって文書をめぐる報道が続くだろう」と述べています。
気になるのは、やはり日本です。
調査に関わった報道機関などによりますと、「パナマ文書」には、日本国内を住所とするおよそ400の人や企業の情報が含まれているということです。
今回の流出と一連の調査報道を受けて、すでに各国は動き出しています。
問題の中心にあるパナマでは、バレーラ大統領が、海外の専門家などで作る独立した委員会を設置して、国内で行われている金融取引の実態を調査する考えを明らかにしました。
EU=ヨーロッパ連合は、加盟28か国共通のタックスヘイブンのブラックリストを作成し、不正が見つかった場合は厳格な制裁を科す制度の設立を目指すことになりました。
メキシコの税務当局は、パナマ文書で明らかになった国内の33人について、申告に問題がなかったか調査するとしています。
世界各国のジャーナリストが結集して発揮した調査報道の力が、隠れた巨額のマネーの流れに透明性を確保するのか。目を離せない状況が続きます。
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_0408.html?utm_int=tokushu-new_contents_list-items_001
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。