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●トランプの主張するTPP参加破棄は、別の方法で中国包囲網機能が補完されるならば日本にとってウェルカムである。
●トランプとプーチンは、公言し合っているように肌が合う。「米露同盟」が結ばれる場合には、日本は可能なら3国同盟化、少なくとも仲介等により優位な立場で絡まなければならない。
●トランプであろうが無かろうが、ファイナンスに行き詰まった米国は日本により防衛負担増を求める。日本はこれを、自主防衛を高める契機とすべきである。
ただし、核武装は別次元の問題であり、切り離して駆け引きしなければならない。
◆ジュリアーニ副大統領?◆
米大統領選挙の行方は予断を許さないが、共和党予備選挙の焦点は、ドナルド・トランプ候補の副大統領候補選定に焦点が移った感がある。
昨日4月8日に、ジュリアーニ元ニューヨーク市長がトランプ支持を正式に表明した。
もしジュリアーニを副大統領候補とするなら、本選挙で民主党のヒラリー・クリントンを本拠地のニューヨークにある程度釘付けする効果がありそうである。
また、市長在任中に治安対策等で確実な成果を上げた手堅い行政手段が、共和党主流派のアンチ・トランプ感情を宥めるのに多少役立つ。
トランプは、不法移民対策やテロ対策である意味現実離れした過激な主張をする一方、自分は政治家ではないので、実際の行政はプロの政治家に任せるとも発言しており、副大統領候補選び(ペイリン元アラスカ州知事となる場合は、国務長官選び)が実際の「トランプ政権」を性格付けるだろう。
何れにしても、大統領予備選挙および本選挙の結果は、悲しいかな大なり小なり今後起こる可能性のある米国内外のテロの規模、背景、タイミングにより、米国世論がどちらに転ぶかによって大きく左右されると思われる。
◆TPP破棄◆
さて前置きが長くなったが、米国「トランプ政権」が成立する蓋然性が相当程度ある以上、我が国日本としても、その備えをしておく事は当然に必要である。
既に外務省が、情報収集を始めたと先月公式に発表されたが、それと並行して国家レベルで対応基本戦略を立案しておかねばならない。
まず、トランプは「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は米国民の利益にならず参加を破棄する」と公言しているように、トランプ政権が成立すれば恐らく破棄されるであろう。
そもそもTPPには、次の3つの機能がある。(1)自由貿易の理想の実現、(2)中国包囲網の構築、(3)米国(グローバル)企業による日本からの収奪である。
(1)と(2)は、日本の利益になるが、(3)についてはISDS条項(投資家対国家間の紛争解決条項)や、ラチェット規定 (自由化不可逆規定)のような強力な武器がTPPに組み込まれており、丁々発止の米国(グローバル)企業・弁護士・ロビーに動かされる米議会により日本企業・政府・国民が手玉に取られ毟り取られる可能性が高い。
もし、TPPの持つ中国包囲網の機能が別の方法で補完されるならば、米国のTPP参加破棄は日本にとってウェルカムである。
ただし、トランプは誤解も含めて中国と並んで日本を貿易不均衡国として名指ししており、更に過酷な要求をしてくる可能性はある。
◆「米露同盟」と日本◆
「トランプ政権」となった場合に、「米露同盟」が締結される可能性も相当程度ある。
トランプとプーチンは、公言し合っているように肌が合う。
トランプが「米国の復活」を本気で進めるならば、「米露同盟」締結で中国を牽制し、中東関与を薄め、軍事予算を減らすのは合理的な選択肢だろう。
これまで、その選択を阻害していたのは、中国贔屓のキッシンジャーと、オバマの外交指南役のポーランド難民で旧ソ連に恨みを持つブレジンスキーという米外交戦略の2大巨頭の力が大きかったが、東欧・中東での度重なる失策と中国の台頭で発言力が低下若しくは微妙に方向転換している。
「米露同盟」が結ばれる場合には、日本は北方領土問題に筋道を付けて置き可能なら3国同盟化、少なくとも仲介等により優位な立場で絡まなければならない。
米露が日本の頭越しで米露同盟を結ぶ場合、日本の関与する余地は余りないが大国同士の面子維持のため調印式は第三国で行う等で、象徴的な意味だけでも日本が絡むことは可能である。
◆防衛負担増と核武装と新秩序◆
トランプであろうが無かろうが、ファイナンスに行き詰まった米国は日本により防衛負担増を求める。
トランプ等の言う、日本安保ただ乗り論は、日本が相当額の米軍駐留経費を負担しているとしても、ある意味正しい。
米軍が日本を守っても、先日安保関連法が成立した後でも基本的には日本は米国を守らないのが日米安保条約の内容である。
トランプ等の主張する防衛負担増には、日本が米軍駐留経費等を増額する方法と日本がより自主防衛を高める方法の2つの方法およびその混合がある。
筆者は、前者は選択すべきでないと考える。
先ず、トランプは大きく吹っかけて来るだろう。
第一、日本がより主体性を失って行く事になる。
日本はこれを、自主防衛を高める契機とすべきである。
場合によっては、米国や米軍が危機に在るとき日本が助けに行ってもよい。
しかし、例えばイラク戦争のような筋の悪い戦争に、従属的に付き合うべきではない。
兵を出す際には、国際的大義を伴い、かつ長期的国益に適う場合に主体的に出すべきである。
その内容で、安全保障基本法、進んでは憲法改正をすべきである。
ただし、トランプの言う日韓から米軍が撤退した場合、両国の核武装を容認するという発言には飛躍がある。
米軍が撤退しても、米国の西向きおよび太平洋上の核ミサイルは、中国と北朝鮮とロシアに向いている事は変わらないので、米軍の核配備費用が削減される訳ではない。(ただし、日韓が中・北に攻撃されたとき、米軍核ミサイル使用で米国が反撃されるリスクは減る。)
トランプの日韓核武装容認発言は、不動産王としての交渉術の側面が強い。
日本にとって、核武装は別次元の問題であり、切り離して駆け引きしなければならない。
核拡散の危険性(残念ながら日本の現在の核管理能力の不足も含めて)を考えれば、米国管理の核ミサイルの発射ボタンを日本がシェアリングする、所謂「レンタル核」が現実的だろう。
もちろん、米国が日本の永遠の味方である保証はなく、そのために核の自主開発を出来る能力と核物質を(核管理能力を高めて)、国際社会を説得しつつ保持しておく必要もある。
よく言われているように、モンロー主義的に米国が他国への軍事的関与を減らして行くというのは、トランプもオバマも同じである。
ただ、オバマは負け犬風に、トランプは吠えながら撤退戦を行おうとしている。
米国が覇権を降りたら、米国の衰退が止まらず、世界も多極化し混乱するとの恐れが、外交軍事の専門家からも語られるようになってきた。
しかし、米国も無い袖は振れまい。
筆者は、米露同盟に日本が加わり世界の安全保障体制の基軸を為し、イスラムを世俗化穏健化して統一させキリスト教と和解させ、他国も合わせ中国包囲網を完成させその牙を抜く事が今後の世界の大戦略であらねばならないと考える。
トランプ政権となろうが、ヒラリー政権となろうが、日本はタフな交渉で国益を確保しつつ、この画に近付けるべく主体的に動かなければならない。
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