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[グローバルオピニオン]米、格差縮小へ政策対応を 米ハーバード大教授 ジェフリー・フランケル氏
米国やいくつかの先進国における経済格差について、さまざまな説明がある。トマ・ピケティ・パリ経済学校教授の「21世紀の資本」は、高い資本収益率を重視する。これによって相続された富は勤労所得より急ピッチで蓄積される。2013年に出版された同書は、米経済学者が再び格差を議題にするようになるのに大きな役割を果たした。
しかしほとんどの研究者は、米国の格差拡大の原因を、勤労所得と不労所得(資本による収益)の差ではなく、主に勤労所得の中にあると考えている。勤労所得の格差の理由として真っ先に挙げられるのは技術革新だ。これによって熟練労働者の需要の伸びが供給を上回る。第二の説明は、成功を収めた専門職の男性は、今や秘書ではなく自分と同等の専門職の女性を選ぶという、いわゆる「同類婚」だ。
第三は、歯医者から大学教授、映画スターまで、多くの専門職の「勝者総取り的」な性格だ。第四の説明では、企業、特に金融部門の幹部の報酬が極めて高いのは、経営者が事実上自分の報酬を自分で決められることによる。これは企業統治の失敗や税制、金融工学を反映している。
最後に、多くの人が支持する説明は、富裕層が政治献金を通して権力のテコを独占しているというものだ。資金提供を受けた政治家は、進んで献金者に有利な政策をとる。
しかし格差の原因が何であれ、格差縮小のため実施できる政策はたくさんある。低所得勤労者の税率引き下げなどによって税制をより累進的にできる。勤労所得税控除の強化は現在、有効な選択肢だ。
オバマ米大統領は1月の一般教書演説で、賃金保障制度の拡大を提案した。貿易によって職を失う勤労者を支援するこの制度を、技術革新によって失業する人にも適用できるようにする。ヘッジファンド運用担当者の所得に低い税率が適用される「成功報酬」の税制優遇は廃止されるべきだ。
格差に憤る人々の多くは民主党の大統領候補のサンダース上院議員(あるいは共和党のトランプ氏)の主張に魅力を感じる。多くの人は、問題の核心は富裕層が政治家を「買収」していることにあり、そこに迫るため大手銀行の解体が必要だと考えている。
政治におけるカネの問題は確かに大きい。しかし政治家はそのカネを何に使っているのか。政治家は私腹を肥やしているわけではない(少なくとも米国においては)。資金は選挙広告や支持者の動員など選挙活動に使われる。
私は、適切な政策を法律として成立させる候補に投票することの方が重要だと考える。選挙資金を減らそうと銀行解体を呼びかける候補に投票するよりも、はるかに有効な戦略だ。
((C)Project Syndicate)
Jeffrey Alexander Frankel 専門は国際経済学。米マサチューセッツ工科大博士。1996〜99年、米クリントン政権の大統領経済諮問委員会委員を務めた。63歳。
[日経新聞4月1日朝刊P.4]
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