http://www.asyura2.com/16/kokusai13/msg/108.html
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日経新聞は「(4)妻は移民 主張ちぐはぐ」と頓珍漢なことを書いているが、トランプ氏が問題にしているのは、「米国永住を希望する不法入国者」(不法移民)であり正規の移民ではない。
合法移民でも過酷な生活を強いられるヒトが多いが、不法移民であればより低賃金で必要なときだけ雇われ米国経済の下支えに使われることになる。
問題にすべきは、不法移民をなくそうというトランプ氏の主張ではなく、政府も黙認し、労働規制や税制から外れた低賃金労働者として不法移民を重宝に使ってきた米国経済主体や金持ちである。
※関連記事
「米大統領選の行方」
http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/888.html
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異端 トランプ候補の素顔
(1)「王様になれ」原点は父
「富の力」信奉者に 実業の才能、商売敵も魅了
11月の米大統領選の共和党候補争いで首位を走る不動産王、ドナルド・トランプ氏(69)。極端な政策や過激な発言が不満の鬱屈した白人らに強く支持され、他候補を突き放す。米政界に現れた異端者は何者なのか。その素顔に迫る。
「おまえは王様になるんだ」。トランプ氏は幼少のころに父親からこう言われて育った。ドイツ系の父フレッド(1999年没)とスコットランド系移民の母メアリー(2000年没)の次男として1946年にニューヨーク市クイーンズで生まれた。若いころから父親を超えようと立身出世にまい進した。
父はクイーンズやブルックリンの中流世帯向け集合住宅の開発で財をなした。生家は23部屋・9浴室の豪邸だった。3兄弟・2姉妹で育ったトランプ氏は、厳格な父から勤労の精神と富の力を教え込まれた。少年時代には新聞配達に汗を流したが、雨や雪の日は父のお抱え運転手のリムジンに乗って配達した。
トランプ氏の人種差別発言の根っこには、父親の言動や育った環境が見え隠れする。父が開発・運営した集合住宅は黒人に貸さなかったという逸話が残る。クイーンズは黒人、ヒスパニック、アジア系と人種のるつぼのような街だが、トランプ氏が育ったジャマイカ・エステート地区は白人富裕層の閑静な住宅街。トランプ氏は多様な人種が織りなす「外界」から隔絶されて育った。そんな生い立ちがトランプ氏の扇動家としての顔につながったのか。
「トランプ氏には二つの顔がある。一つはステージで見せる顔。もう一つはあまり知られていない思索者としての顔だ」。共和党の大統領候補争いから撤退し、トランプ氏支持を表明したベン・カーソン氏は、こう語った。扇動家トランプ氏の裏の顔とは何か。
一つは父親の顔だ。トランプ氏は3回の結婚で5人の子供をもうけた。いずれも学業成績優秀で金持ちの子息にありがちな放蕩(ほうとう)やスキャンダルは一切ない。
最初の妻イヴァナさんとの娘イヴァンカさんは、米国屈指のビジネススクール、ペンシルベニア大学ウォートン校を「優等」で卒業し、父親の会社の幹部として働く。「たばこ、酒、ドラッグの絶対禁止」を子どもたちに徹底した。厳格で実直な父の姿が浮かび上がる。
商売敵の多くが魅了される敏腕実業家の顔もある。著名な物言う株主のカール・アイカーン氏はひかれた一人だ。アイカーン氏はトランプ氏が経営していたカジノ会社の債権者。この会社の破産申請を巡り激しい法廷闘争を繰り広げたが、この過程でトランプ氏の商才を高く評価し、大統領選で支持を表明した。経済誌出版社を経営し、大統領選に立候補したこともあるスティーブ・フォーブズ氏、金融会社経営のアンドリュー・ビール氏らもトランプ氏を支持している。
「究極のナルシシスト」といわれるトランプ氏にとって、選挙戦は自己顕示欲を満たす最高の場でもある。希代の扇動家が裏に秘めた顔を見せ始めるのはいつだろうか。
(ニューヨーク=伴百江)
[日経新聞3月18日朝刊P.6]
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(2)「日本たたき」は筋金入り
「中国製品には45%の関税をかけるべきだ。巨額な日本との貿易赤字も是正しないといけない」。大げさな身ぶりで持論を説くドナルド・トランプ氏の姿を、駐米歴の長い邦銀の幹部は苦々しく見ていた。「主張は1980年代と変わらない。筋金入りの保護主義論者なんだろう。当時と変わったのは金髪になったことくらいだ」
27年前の1989年、当時は黒髪に近かった若きトランプ氏は、日本製品に15〜20%の輸入課徴金納付を命じるよう主張して全米の注目を集めた。三菱地所がニューヨークの象徴でもあるロックフェラー・センターを買収した年のことだ。
トランプ氏は「米国は引きちぎられつつある」と反日感情をむき出しにしていた。
トランプ氏はその後、経営していた会社の資金繰りが悪化して事実上の銀行管理に入る。住友銀行(当時)など邦銀も約1千億円の債権があったが、金融支援でトランプ氏を救った経緯がある。それだけに、その後も対日批判をくずさず、人々の排外主義をあおって躍進するトランプ氏には複雑な思いが残る。
「環太平洋経済連携協定(TPP)は中国を利するだけだ」。トランプ氏はオバマ米大統領が政権のレガシー(遺産)ともくろむTPPにも、昨年6月の立候補当初から反対姿勢をみせてきた。もっともTPPに中国が参加すると誤解しており、協定の全体像を把握しているとは考えにくい。
ただトランプ氏の反TPP論は支持率拡大に結びついてきた。トランプ氏は「北米自由貿易協定(NAFTA)でメキシコに雇用を奪われた」と単純な理屈を繰り返す。貿易自由化を敵視するトランプ氏はTPPが雇用減に拍車をかけると危機感をあおっている。
米経済は6年半もの景気回復局面が続くが、貿易の自由化が低賃金のアジア勢・中南米勢との競争を強め、低中所得層の収入が増えない一因になっているとの指摘は根強い。
トランプ氏は国内でくすぶる格差の不満を敏感に察知して、反TPP論によってその受け皿になろうとしている。
「日本の円安誘導でコマツばかりが得をしている。アップルは工場を米国に戻すべきだ」。トランプ氏の保護主義的な主張は個別企業にも向かう。
実は名指しされたコマツは米国内に6カ所の生産拠点を持ち、海外生産比率は5割を超す。アップルは知的財産権などを武器に、モノづくりではなくサービス貿易で巨額の利益を得ているのが現実だ。
トランプ氏の極論は、有権者の誤解や偏見を広げる恐れがある。
通貨安を誘導していると日本や中国をトランプ氏が批判していることに市場はいまのところ無反応だ。しかし、11月の本選に向け、トランプ大統領の誕生が現実味を増せば、世界市場の大きな混乱要因となる。
主要国の政権首脳は株価や為替の水準に直接言及しないことが暗黙のルールだ。だが「政治的正しさ」を敵対視するトランプ氏には通じない。
(ワシントン=河浪武史)
[日経新聞3月19日朝刊P.6]
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(3)政治にビジネス交渉術
米ニューヨークの冬の風物詩として市民に親しまれているセントラルパークの「ウォールマン・スケートリンク」。老朽化して1980年に閉鎖したこのリンクは、市が1300万ドルの費用と6年かけても改修できなかった。
これを救ったのが不動産王ドナルド・トランプ氏だった。86年に自分で改修すると提案。250万ドルの費用とわずか2カ月で美しいリンクとして再生することに成功した。ビジネス面で発揮したこうした才覚を政治でもいかせるだろうか。
「税制を簡素にし、税申告時の頭痛を緩和する」。ドナルド・トランプ氏は、これから10年間で9.5兆ドル(約1100兆円)に上る減税策をぶち上げた。
全世帯の過半数にあたる7500万世帯の所得税がゼロになり、税の申告は「I win(勝った)」と紙1枚に書くだけで済むという冗談のような話だ。
所得税の最高税率は39.6%から25%に下がる。米シンクタンクによると一般家庭の平均減税額が5100ドルなのに対し、年収370万ドルを上回る超富裕層は平均で130万ドル超の減税となる。
個人や法人の巨額減税を実施すれば、財政赤字は当然膨らむ。トランプ氏は減税による景気刺激効果で税収が増えると期待するが、10年で予算を均衡させるには年10.4〜11.4%と新興国並みの経済成長が必要だ。
財源について、トランプ氏は説得力のある説明をしていない。例に挙げるのは「教育省や環境保護局の廃止」だ。両省庁の予算は合計で年860億ドル。単年度の減税額の1割程度にすぎない。
社会保障制度の維持も訴えるトランプ氏は、製薬企業との「交渉」で年3千億ドルを捻出すると豪語する。製薬企業が高価な処方薬で医療保険制度から不当な利益をあげているというが、そんな大金を搾り取れるとは思えない。
とっぴな発想は誰の入れ知恵なのか。「政策顧問は誰か」とテレビ番組で問われたトランプ氏は、ジャック・ジェイコブス元米陸軍大佐らの名を挙げた。しかしジェイコブス氏は米メディアに「政策についてトランプ氏と話したことはない。私がテレビに出演したのを見たのではないか」と答えている。
実現不可能な高めの要求を最初に提示し、交渉で着地点を見いだすのは、トランプビジネスの常とう手段だ。トランプ氏自身もすべての公約に実現性があるとは考えていないようだ。
「すべては交渉だ」。トランプ氏は米メディアとのオフレコ懇談でこう豪語したという。トランプ氏が不法移民対策として掲げる「メキシコ国境に壁をつくる」という公約は、実現不可能と分かったうえでの“見せ球”なのかもしれない。
「中国からの輸入品に一律45%の関税をかける」という公約を討論会で「無理」と批判されると、トランプ氏は釈明した。「45%というのは脅しだ。45%が無理ならもっと少なくてもいい」
軸がないのか、柔軟なのか。政治家として大きなリスクを抱えることになるのは避けられない。
(ワシントン=川合智之)
[日経新聞3月20日朝刊P.5]
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(4)妻は移民 主張ちぐはぐ
「私は法律に従いました」。ドナルド・トランプ氏の妻でスロベニア移民のメラニアさんは2月下旬、米テレビのインタビューで移民としての自身の経験を語った。
元モデルのメラニアさんはビザ(査証)を取得して米国に移住し、何年もかけて合法的な手続きを踏んで永住権と市民権を得たと訴えた。「みんなそうすべきです。とにかく永住させろと言うのはおかしい」。トランプ氏の不法移民排除政策をこう擁護した。
「国境に万里の長城を築く」「不法移民は暴行魔」。反不法移民の過激な発言と強硬な移民規制政策で注目されたトランプ氏だが、最初の妻も旧チェコスロバキアからの移民だった。身内に甘い「二重基準」との批判が向けられている。
トランプ氏は不法移民だけでなく、技術を持つ外国人労働者の受け入れも制限しようとしている。
「H1Bは正直なところ、私も使っている」。11日に開かれた共和党大統領候補のテレビ討論会。専門技術を持つ外国人が米国で働くのに必要なビザ(査証)「H1B」について、トランプ氏は自分の事業でも使っていることを認めた。そのうえで「米国の労働者にとってものすごく有害だ」とし、H1Bビザ原則廃止の公約を表明した。
H1Bビザはインドなどからの情報技術者に多く利用され、米国民の職を奪っているとの批判がある。一部で不正利用も問題になっている。一方で技術者不足に悩むシリコンバレーを中心とするIT業界は発給枠の拡大を求める。
H1Bビザの廃止を主張しながら自分が利用する。ここにもトランプ氏の矛盾がある。
「私は実業家だ。やらねばならないことをやっているだけだ」。トランプ氏は実業家の立場と大統領としての政策は別という理論を展開して反論する。
トランプ氏は移民政策で、学生や研究者などの交換プログラムが利用するJ1ビザの一部廃止も公約している。こうしたビザの利用者が多いアイルランドなどに懸念が広がる。
外国人労働者への永住権(グリーンカード)発給の一時凍結、米国での出生に国籍を自動的に与える制度の廃止、難民の審査基準の厳格化も公約した。
トランプ氏が提案する移民政策には実現性に疑問符がつくものも多い。トランプ氏が豪語する1100万人の不法移民の強制送還をほんとうに実行しようとすると、最高で2000億ドル(約23兆円)の費用がかかると推計される。オバマ米大統領は「現実的でない」と一蹴した。出生による国籍制度の廃止は憲法違反の可能性もある。
現実性が低く矛盾する政策をかかげながら躍進するトランプ氏。そこには米国政治が陥った危機の深刻さが映っている。
(ワシントン=芦塚智子)
=おわり
[日経新聞3月22日朝刊P.5]
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