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実は見分けるのがとても難しい…老人性うつと認知症、その違い 薬を間違えると命にかかわる
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58227
2018.11.24 週刊現代 :現代ビジネス
最悪の事態
「老人性うつの場合、きちんと治療をすれば、治癒します。しかし、診断を間違え、適切な治療をせずに放置してしまっていると、最悪の事態を招いてしまうこともあるのです」(「ストレスケア日比谷クリニック」院長の酒井和夫医師)
都内在住の高田晋介さん(66歳・仮名)は、妻(64歳)と二人暮らしをしている。3年前に3人の子どもたちが独立。以来、専業主婦だった妻はことあるごとに「寂しい」と漏らしていたという。
「妻はこれまでずっと家事と育児を懸命に担ってくれて、趣味などもありませんでした。子どもたちがいなくなり、心にポッカリ穴が開いたような気持ちだったのかもしれません。
2年前、妻の40年来の親友が亡くなってしまってから、随分ふさぎ込み、それ以降、物忘れがひどくなったんです。
初期の認知症かと思い、地元の病院の『もの忘れ外来』に連れて行き、しばらく処方された認知症薬を飲んでいました。しかし、一向に症状はよくならず、掃除や洗濯などの家事もほとんどやらなくなりました。
急に口数が減り、『髪がうまくセットできない』などと言って、外出もしないようになった。次第に、一日に何度も『生きているのが辛い』『死にたい』と言うようになったのです」
「これはただ事ではない」と焦った高田さんは、妻を連れて大学病院の心療内科を受診。そこで老人性うつの可能性が高いと診断されたのだ。『老人性うつ』などの著書がある精神科医の和田秀樹氏が話す。
「老人性のうつを発症しているのは、65歳以上の人たちの中の約5%と言われています。一方で認知症は15%ほど。違いとしては、認知症は加齢とともに割合が増えますが、うつ病は増加しません」
認知症は原因疾患が70種類を超えると言われるが、よく知られているアルツハイマー型と脳血管障害型で全体の8〜9割を占める。認知症薬による治療は基本的には完治は難しく、進行を遅らせる、症状を一時的に緩和することが目的となる。
一方で、うつ病は、軽い症状であれば、抗うつ剤を服用し、3ヵ月程度で治るケースも多いという。
しかし、誤診された高田さんの妻のように、両者の症状は、非常に似通っている。精神科医の井貫正彦医師が話す。
「老人性のうつ病と認知症は見分けることが非常に難しい。物忘れ、集中力の低下、不眠など、どれも両者に共通した症状です。
このため、採血や頭部のCT検査、うつ病と認知症それぞれのチェックリストなど、さまざまな検査を行います。それらを踏まえて、どちらの可能性がより高いか、暫定的に判断を下すこともあります」
専門医でも見分けることが難しいため、両者が混同されたままになっているケースが増えている。
パターンとしては、「認知症だと思っていたら、実は老人性うつ」が圧倒的に多いという。原因は、「うつ病は働き盛りの年齢の人間がなるもの」という思い込みだ。高齢者こそストレス量が多いと、前出・井貫氏は話す。
「よくある心理的ストレスの原因として、健康問題、家庭問題、経済問題、仕事などが挙げられます。高齢者は病気などの健康問題が次々と出てきますし、家庭内でも離婚、老々介護、死別など様々な問題が起きる年齢です。
年金や医療費などおカネの悩みも増えますし、退職すると、役割の喪失という悩みも生まれます。実は高齢者は心理的ストレスが非常に多い年代なのです」
若い頃と違って身体は思うように動かない。日々のストレスが積み重なり、そこに親しい人が亡くなったなどのきっかけがあると、一気に老人性うつを発症することがある。
まずは、高齢者こそうつ病に注意しなくてはいけないということを知ったほうがいい。
「両者の症状は似ていますが、進行はうつのほうが早い。急にしゃべらなくなったなどの場合には、うつを疑ったほうがいいでしょう」(前出・酒井氏)
家族にも隠そうとする
症状こそ酷似している老人性うつと認知症だが、当然ながらまったく別の病気だ。効く薬も異なる。誤診による誤処方が怖い。順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学先任准教授の馬場元医師が話す。
「本当はうつ病なのに、認知症の薬を処方される。あるいは、その反対もある。これは違う病気に違う薬を投与しているわけですから、当然効果はありませんし、副作用のリスクもあると考えたほうがいいでしょう」
高齢者に処方されることが多い抗うつ剤に、パキシル、ルボックスなどのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)がある。
「抗うつ剤を長く飲み続けると中枢神経に影響を及ぼし、感情の抑制が利かなくなるなどの症状が出てくることがあります。中でも認知症患者はSSRIを飲み続けることで、認知症の症状が悪化することがあります」(精神科専門医)
誤った診断によって、認知症が進行してしまうのだ。反対のケースはもっと深刻だ。本当は老人性うつなのに、医師に誤診されたまま認知症の薬を飲んでいたら、うつ病の症状はどんどん悪化していく。
「老人性うつで怖いのは、ご本人の自殺です。認知症だと勘違いされている状況では、いくら自分の症状に違和感があっても、家族など周囲の人に伝わらない。そんな絶望的な状況に置かれていることも多いのです」(前出・酒井氏)
さらに、「認知症薬によりせん妄(幻覚)などの副作用が出ることがある。特に高齢者のほうが副作用は起きやすい」(慶應義塾大学医学部精神・神経科講師の田渕肇氏)という。
せん妄によって、高齢者が転倒したり、階段から転落する事故も起きている。命にかかわる問題なのである。
認知症は自身の症状について自覚はないが、うつ病はある。「家族に迷惑をかけたくない」と、本人が隠そうとするケースもある。
「高齢者に多い『ほほえみうつ病』という症状があります。家族に迷惑をかけてはいけないと我慢をして、無理に笑顔で接したりする。無意識のうちに、自分がうつ病のような精神疾患だと認めないという理由もあると思います。
そうすると、家族は異変を感じていても『大丈夫なのかな』と見過ごしてしまうのです。家族はまず、行動をよく観察する、会話の時間を作るなどが大事だと思います」(前出・馬場氏)
「長尾クリニック」院長の長尾和宏医師が話す。
「相性の良いかかりつけ医を見つけるのが、ベストだと思います。そこで『先生、私はうつ病なんじゃないでしょうか』と率直に聞いてみる。
特に男性は、そういったことを聞くのが恥ずかしい、面倒くさいという人が多い。しかし、うつ病は適切な治療を行えば、99%は治ると言っていい。かかりつけ医と信頼関係を築き、なんでも聞いてみるのがいいと思います」
まずは、老人性うつの兆候を知ったうえで、家族ときちんとコミュニケーションを取り、信頼ができる医師に相談する。
そのうえで、少しでも老人性うつの可能性があれば、抗うつ剤の服用も考えるべきだ。自分から動かなければ、取り返しがつかないことになる。
「週刊現代」2018年11月3日号より
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