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大病院が笑えない、2018年度診療報酬改定のアメとムチ
http://diamond.jp/articles/-/160691
2018.2.22 週刊ダイヤモンド編集部
最新鋭のロボット装置を使ったロボット支援手術で一気に対象疾患が拡大するなど、2018年度の診療報酬改定には一見華々しさがうかがえる。しかし、医療費削減の重圧は強い。矢面に立つ病院は、のんきに笑ってなどいられない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝、臼井真粧美)
2月10日、東京の六本木ヒルズには全国から外科医が集まっていた。日本ロボット外科学会学術集会が開催されたためで、参加した医師たちは食い入るように壇上を見上げ、登壇者の言葉に集中した。
この3日前に医療の値段を決める「診療報酬」(医療サービスの公定価格)改定が厚生労働相に答申され、4月から公的な健康保険が適用される疾患や手術の値段が変わるからだ。
外科医がロボットを使って行うロボット支援手術はこれまで前立腺がんと腎がんで保険適用されていたが、今回の改定で胃がん、肺がん、食道がん、直腸がん、ぼうこうがん、子宮がんなど一気に対象疾患が拡大した。学会では、消化器や泌尿器など各分野のロボット支援手術でリーダー格となる外科医たちが次々と壇上に立ち、報酬改定の影響などを詳しく語った。
健康保険適用外だと患者の自己負担が百万円単位に上っていた手術が、適用によって大幅な負担減になるため、患者にとっても、患者が増える外科医にとっても朗報のはず。しかし外科医たちは満面の笑みというわけではなかった。
手術の値段がなんとも渋かったのである。高額なロボット装置を買ってどんどん手術すればじゃんじゃんもうかるという甘い構図にはならない。
医療費抑制が喫緊の課題である中、最新技術だろうと値付けはシビアだった。値段を上げるには、さらなる実績の蓄積なりが必要ということだろう。
最高ランクの重症対応病院は供給過剰状態
2018年度は2年に1度の診療報酬改定と、介護保険サービスの公定価格である「介護報酬」の3年に1度の改定が同じタイミングになる6年に1度の節目だ。
25年には団塊の世代が全て75歳以上となる。国民医療費が現在の約1.4倍の約58兆円(健康保険組合連合会推計)へ急増する「2025年問題」を乗り切るため、18年度同時改定は大胆な制度改革を行う事実上最後のチャンスといわれていた。
厚生労働相へ診療報酬改定を答申した諮問機関「中央社会保険医療協議会」。保険の支払い側と診療側の激しい議論が最後まで続いた Photo by Masataka Tsuchimoto
ロボット支援手術を手掛けるのは、重症度の高い患者を治療する大病院に多い。こうした病院における根幹部分にも、医療費抑制を目指す国の改革のメスは入った。
緊急性が高い患者や重症の患者に手術など高度な医療を行う「急性期病院」と呼ばれる病院は、地域住民にとって心強い存在である。このうち患者7人に対して看護師1人が配置された「7対1病床」は、最も手厚い体制を備えるランクに属している。
故に入院に対する基本料が高く、患者1人当たりに掛かる医療費も高くなる。病院にすれば収入が増すので、06年の創設時の4.5万床から現在は約35万床へと過剰に増えてしまった。
「同じような患者の治療を行う場合、患者10人に看護師1人を配置する『10対1病床』の病院の方が入院の基本料が安く、運営のコスト効率は高い。だから国は7対1病床を減らして10対1病床にシフトする政策誘導を過去数年来、報酬改定のたびに実施してきた」と医療コンサルティング会社、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHCJ)の湯原淳平氏は話す。しかし、「病院はなかなか誘導策に乗らなかった」(湯原氏)という。
病院団体の推計では、例えば200床の病院が7対1病床から10対1病床にシフトすると、少なくとも年間約1億2000万円の収入減。「経営への影響を考えると引くに引けないチキンレース」(医療業界関係者)となってシフトが進まなかった。
そうした病院にも、時代の変化の波が押し寄せている。
「7対1病床は利用する患者数、利用率共に減りつつあり、ピークを過ぎている」とGHCJの鳥海和輝氏は言う。つまり高齢者が増える中で重症度のレベルがもう少し低いところ、つまり急性期を脱した患者や在宅患者らの医療ニーズが膨らんできている。それにもかかわらず7対1病床の病院が近隣に複数あるような状況で、供給過剰に陥っているのだ。
7対1病床であるための要件は診療報酬改定のたびに厳しくなり、維持したい病院にとってはムチになる。
一方で10対1病床にシフトしやすいよう便宜を図るアメが今回の改定で用意された。今までは7対1病床から10対1病床へ“飛び降りる”イメージだったが、今回の改定では間に複数の“階段”を設けることで移行しやすくした。
最新鋭の装置で手術を手掛け、重症度の高い患者に高度な医療を提供し、地域医療の顔となっている大病院。
笑顔で患者を迎えるその裏で、経営のかじ取りが一層難しくなっている。
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