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平等な医療は「もはや建前」 現役医師が教える「信頼できる主治医を見つける方法」とは?
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171220-00000066-sasahi-hlth
AERA dot. 12/22(金) 7:00配信
どうすれば、頼りになる、信頼できる医師に出会うことができるのか。(※写真はイメージ)
東京を中心に首都圏には多くの医学部があるにもかかわらず、医師不足が続いている。そのような中、現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、「主治医の条件」について持論を展開する。
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医療を取り巻く現在の状況は、食料難に喘いだ終戦直後に似ています。
絶対的な医師不足のため、医師と患者の力関係は医師が有利になり、「コネ社会」になっています。厚労省が主張する、平等に医療を受ける権利はもはや建前に過ぎません。終戦直後、政府は食糧管理制度を通じて、食料を「適切に」配分しようとしました。ところが、実際は配給だけでは足りず、国民は縁故を頼って農家を訪ね、闇市で食料を調達しました。1947年10月には闇米を拒否し、配給食料だけを食べ続けた裁判官の山口良忠氏が栄養失調に伴う肺浸潤(結核)のために34歳で亡くなっています。食糧難が改善するには、米国が緊急援助し、日本が復興するまで待たねばなりませんでした。食料の供給量が増えるまで、事態は改善しなかったのです。
医療でもおそらく同じ事が起こるでしょう。厚労省は、「かかりつけ医制度」や「在宅医療」を推進していますが、これは、「配給制度」により、サービス供給の効率を上げようとしていることに他なりません。
ところが、官僚の計画通りには現場は動いていません。
77歳になる私の母も、かかりつけ医の限界を、身を以って知った一人です。彼女は祖母(母の実母)が97歳で亡くなるまで、兵庫県尼崎市の自宅で介護していました。祖母は認知症・陳旧性心筋梗塞・高血圧・逆流性食道炎・甲状腺機能低下症など多くの病気があり、近所の開業医に診てもらっていました。要介護5と認定され、介護サービスも受けていました。
ある日の夜中、祖母は呼吸困難を訴えました。母はかかりつけ医に電話しましたが、「すぐに救急病院に運びなさい」と言われただけでした。困り果て、京都市内の病院に勤める弟に電話して、大阪市内の病院を紹介してもらい、タクシーで祖母を連れて行きました。タクシー代は1万円以上かかったそうです。ところが、受診した病院の救急外来で「なぜこの程度で、遠くの病院まで来るのですか」と言われ、自宅に帰されました。
その後私に電話がかかってきたため、尼崎市で在宅医療を行う旧知の長尾和宏医師を紹介しました。長尾医師はすぐに往診し、心不全と判断し、すぐ関西ろうさい病院を紹介してくれたのです。祖母は適切な治療を受け、速やかに状態は改善しました。
医師が比較的多いとされる阪神間でさえ、夜間に具合が悪くなった場合、引き受けてくれる病院を探すのは容易ではありません。そして、いざという時に、かかりつけ医は機能せず、面倒をみてくれたのは、「コネ」を辿ってお願いした長尾先生だったのです。
この経験が相当堪えたのでしょう。母は、救急対応をしてくれる病院との関係を維持しようとしています。また、長尾医師のサポートに感激したのでしょう。長尾医師やそのスタッフを、近所の人たちに宣伝してまわっています。
■主治医の条件「柔軟性はあるか」
どうすれば、頼りになる、信頼できる医師に出会うことができるのでしょうか。
結論からいえば、自分で探すほかありません。
学校の同窓生や地元の地域会で探してもよいのです。医師の知り合いはいなくても、看護師など医療従事者の知り合いから情報を得て、信頼できる医師を探し、自分の主治医になってもらい、もしもの時には自分の立場にたってアドバイスをもらうことです。
主治医に求められる資質は、医学的知識の多寡や医者としての腕だけではありません。
問題が起こったとき、状況を適切に判断し、適当な専門医に紹介する対応能力です。主治医には「エージェント」としての役割が求められているのです。
この能力には個人差があります。重要な点は3つです。柔軟な思考力、コミュニケーション力、ICT機器を使いこなせることです。
ICT(Information and Communication Technology)とは情報通信技術を指し、ICT機器とはITに加え、コミュニケーション性を備えた機器のことです。具体的には、パソコンや携帯電話などが挙げられます。柔軟に考えることは、主治医として極めて重要な素養です。主治医はエージェントとして、自分の価値観を押しつけず、患者の希望に沿って対応しなければなりません。
ところが、エビデンスに基づく医療(Evidence-based Medicine)が全盛の昨今、患者の価値観よりも、エビデンスを優先する医師が珍しくありません。昨今の医療界で、柔軟に考えることは、皆さんが想像するよりもずっと難しいのです。
医師に柔軟性が求められるのは、全人的なケアが求められる時です。終末期の患者にとって、病気は人生の一部です。残された時間の中で、家族、仕事、人生の総括など、さまざまなことを考えねばなりません。医師は、患者がこのような問題に折り合いをつけていくことをサポートします。
患者は単なる病人ではなく、職業人、妻、母、地域住民などのさまざまな顔を持っています。全人的に患者を理解しようとすれば、医師には多岐に亘る教養が必要です。私が「柔軟な対応」をしていると感じる医師は、ほぼ例外なく読書家で、普段から貪欲に学んでいます。主治医にするなら、「エビデンスに基づく医療」として医学的に正しい情報だけを伝える医師と、柔軟に対応できる医師、どちらがいいか、言うまでもないでしょう。
次回は、さらなる「主治医の条件」をお伝えします。
※『病院は東京から破綻する』から抜粋
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