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金儲けのために、不必要な手術で患者を苦しめる医師たち?がん、ポリープ…医師が実態を報告
http://biz-journal.jp/2017/09/post_20526.html
2017.09.11 文=富家孝/医師、ジャーナリスト Business Journal
医者の勧めるままに手術をすると、大変なことになるということが、最近では患者側にもわかってきた。相次いだ腹腔鏡手術による患者死亡事件で、患者側の意識も高まってきたようだ。
しかし、いまだに「ブラック手術」という患者無視の手術は行われている。そこで今回は、そういう手術にはどんなものがあるかを指摘してみたい。
■腹腔鏡手術
まず、腹腔鏡手術だが、群馬大学医学部附属病院の事件は、S医師という手術は下手だが功名心だけは強い医師が引き起こした。腹腔鏡手術というのは、実績を上げると医師の評価が高まるうえ、患者も集められるので病院は儲かる。つまり、一石二鳥の手術である。
ところが、開腹手術より精度が要求されるので、下手な外科医に当たった患者さんはたまったものではない。
「すごく簡単な手術だから大丈夫です。2週間で退院できますよ」
こうS医師は患者さんに言っていたというから、これは詐欺に等しい。しかも、命がかかっているのだから罪は重い。
このように、ブラック手術には2つの側面がある。ひとつは、S医師のように実績をつくったり功名心を満たしたりするために行う手術だ。もうひとつは、現金な言い方だが、カネのために行う手術。つまり、診療報酬稼ぎである。この点で、腹腔鏡手術は一石二鳥というわけだ。
そこで、胃がんと大腸がんの手術について、開腹手術と腹腔鏡手術の診療報酬を以下のとおり比較してみる。
(1)胃の全摘手術
・開腹手術:6万9840点=69万8400円
・腹腔鏡手術:8万3090点=83万900円
(2)大腸がんの摘出手術
・開腹手術:3万5680点=35万6800円
・腹腔鏡手術:5万1750点=51万7500円
なんと、胃がんは開腹手術よりも腹腔鏡手術が13万2500円も高く、大腸がんも腹腔鏡手術16万700円も高い。こうなると、医者は可能なら腹腔鏡手術を選択するに決まっている。患者もまた、腹腔鏡のほうが手術跡が小さくて回復も速いので、医者から勧められたら、むしろ喜んで選択してしまう。
しかし、いくら診療報酬が稼げ、実績にもなるからといって、腕が悪いのに難易度が高い手術に挑戦していたら、最終的に外科医人生は破綻する。S医師の場合は、肝臓がんなど難易度が高いものに挑戦し、なんと患者を8人も死亡させていたのである。ちなみに、彼は開腹でも死亡事件を起こしていた。
まっとうな外科医なら、自分の腕を知っている。S医師の場合、道徳心も倫理観もなかったというしかない。醜悪なエリート意識の塊といってもいいだろう。こういう外科医は、患者を実験台にしてしまうのである。大学病院にいるブラック外科医の典型的なタイプである。
■ポリープ
逆に、エリート意識など持たず、単純に儲けることだけを考えている医者は、こういう手術はしない。「下手は打たない」ように、できるだけやさしい手術を選び、リスクを回避したうえで、手術の数で稼ごうとする。民間病院のブラック外科医は、こちらのタイプが多い。
たとえば、胃や腸の内視鏡検査を勧めて、ポリープが見つかったと言って、そのたびに切除手術をする。ポリープというと大変なことのようにとらえる患者さんがいるが、よほどのことがない限り手術の必要はない。
ポリープは、大きく2つに分けられる。過形成ポリープと腺腫。過形成ポリープは一生がん化しないポリープだが、発生個数は多く、とくに肛門に近い直腸やS状結腸に多発する。よく医者が「小さいポリープがたくさん見つかりましたが、問題ありません」と言うのがこれで、切除の必要はまずない。ところが、これを取ってしまおうとする医者がいる。
腺腫は大腸ポリープのうちの80%を占め、がん化することもあるので、「とりあえず切っておきますか」と医者は言う。しかし、小さければ放置しておいてもほとんど問題はない。私が懇意にしているベテラン外科医は、次のような場合だけ切除している。
(1)ポリープが2p以上あって、がん化の恐れがあると判断されるとき
(2)ポリープから出血が見られる場合
(3)胃の入り口や出口にポリープがあり、通過障害を引き起こしている場合
ひと昔前なら難しいとされた手術の多くが、いまでは医療技術の発達で簡単にできるようになった。その結果、心臓手術においても、ブラック手術が行われている。
たとえば、不整脈の場合、「ペースメーカー」と「ICD」(植え込み型除細動器)の植え込み手術を医者は勧める。一般にペースメーカーは徐脈(遅い脈、1分間の脈が30〜40回以下)に対する治療のために植え込まれ、心拍数を一定値以上に保つ働きをする。それに対してICDは、心室細動などの致死性の不整脈の危険性がある場合に植え込まれる。
このような機器ができた頃は、たしかに手術は難しかったが、いまでは機器も小型化し、心臓につなぐリード線が断線したりすることはなくなった。ちなみに、ペースメーカーは約25g、ICD は約77g 。どちらも、植え込み手術に要する時間は3時間ほどとされている。
そこで、必要ないのに植え込み手術を勧める医者がいる。なぜなら、手術代の診療報酬が稼げるうえ、患者がリピーターになってくれるからだ。植え込み手術をした後は、一般的に3カ月ごとに検診を受けて、機器の不具合や電池残量をチェックすることになる。こうして一生、患者は病院のドル箱になる。これは、医者の都合でつくり出された人工透析患者と同じ理屈だ。
不整脈だが、症状が重くなければ、ペースメーカー、ICD の植え込み手術は必要ない。なぜなら人はみな1日1回は不整脈を起こしているからだ。不整脈とは脈の打ち方が乱れること。その原因は、体質であったり、睡眠不足であったり、ストレスであったりするが、いちばんの原因は加齢である。歳を取れば誰もが不整脈を起こしやすくなる。そこに医者がつけ込んでくる。
■手術機械の減価償却
このように、ブラック手術はいくらでもある。がんの手術においても、高齢者の終末期のがんを手術に持ち込んでしまう医者は多い。発見されたときはほとんど助からない膵臓がん、胆のうがんなどは、手術をすると死期を早める可能性がある。
また最近、手術数が増えている前立腺がんは、発見されてもほとんど手術の必要がないがんの典型だ。一生、悪さをしない可能性のほうが高い。
しかし、内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を導入した病院では、これを積極的に行っている。このロボット手術は、腹腔鏡手術を行う際の鉗子をロボットが操作する。そのため、出血量が少なく、合併症のリスクもはるかに低いので、医者はやりたくてたまらない。しかも、2012年からは保険適用になったので、前記したように一石二鳥の手術となっている。
しかし、そうした手術の多くは必要なく、病院としては約3億円といわれる機械の減価償却のため、患者を手術に追い込むのである。ロボット手術といえども、医者の腕が下手だと事故が起こる。実際、ロボット手術にもかかわらず、執刀医が操作を誤って、76歳の男性が死亡した例が報告されている。
したがって、どんな手術であれ、なぜそれが必要かを医者に必ず聞くことである。そうしないと、何が起こるかはわからない。
(文=富家孝/医師、ジャーナリスト)
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