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遠赤外線乾式サウナで行なう和温療法(depositphotos.com)
副作用もなく、さまざまな病気に効果的な「和温療法」…歩行困難な患者が歩けるように!
http://biz-journal.jp/2017/04/post_18756.html
2017.04.20 取材・文=梶浦真美 Business Journal
病気や症状の性差(男女差)を考慮した「性差医学」を日本の医療の中に根付かせ、全国で女性外来の展開を推し進めてきた天野恵子医師。現在もっとも注目し、大きな可能性を見ているのが「和温療法」だ。この治療法で多くの女性の更年期障害や不定愁訴(原因不明の体調不良)が改善、いくつかの神経変性疾患などでも著効を示している治療例があるという。
全身を気持ちよく温める「和温療法」
和温療法とは、全身を気持ちよく(和む)温める治療法のことである。もともとは、鹿児島大学の鄭忠和教授が、難治性の心不全の患者のために「安全な治療」として始めたものだ。
具体的な治療方法としては、まず60度に設定した遠赤外線乾式サウナ治療室に入り、全身を15分間温める。その後、体を毛布でくるんで30分間安静保温し、最後に発汗した量に見合う水分を補給する。
「60度/15分間のサウナ浴により深部体温は平均1.0度上昇する。副作用はなく、全身の動脈・静脈を拡張させて血管抵抗を低下させ、血液循環を促進する効果があります。運動するのが困難な患者でも、気持ちよく発汗を促すことができるのです」(天野氏)
和温療法の心不全や閉塞性動脈硬化症に対する効果は?
和温療法の心不全や閉塞性動脈硬化症に対する効果については、すでにエビデンスが確立されている。
2010年に改訂された慢性心不全に対する日本循環器学会ガイドラインの非薬物療法の項においては、クラス1(有効)として掲載され、積極的に推奨される治療として循環器専門医からも承認されている。12年9月には、厚生労働省から慢性性心不全に対する「高度先進医療B」として承認を受け、多施設前向き共同研究が実施されている。
天野氏が和温療法に関心をもったのは、自身の体験がきっかけだ。
「私が更年期障害に苦しんでいた時、ホルモン補充療法、漢方、鍼灸、気功など、あらゆる方法を試し、そのなかで唯一、効果を感じられたのが入浴でした」(同)
入浴後2時間ほどは、体が楽になったという。それで「以前から慢性心不全への治療法として知っていた和温療法は効くはず」という確信が芽生え、06年ごろから自身の患者を鄭氏に紹介し、和温療法を体験させていた。
■更年期障害、線維筋痛症、慢性疲労症候群、パーキンソン病などで効果
女性特有の更年期障害や、それに付随するさまざまな不定愁訴の大幅な改善が見られるだけではなく、線維筋痛症、慢性疲労症候群、パーキンソン病など、決定的な治療方法がない疾患でも患者さんの症状が緩和されていく様子を目の当たりにして、この療法の効果に対する確信をますます深めたという。
現在、天野氏が女性外来を担当する静風荘病院(埼玉県新座市)にも2機の乾燥サウナが設置されており、入院しての治療も可能である。冷え性、線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、更年期症候群などに効果をあげている。
「治療後、自宅でも風呂に入って体を温め、“和温もどき”を続けることで、効果を維持している患者さんもいます。またパーキンソン病などの難治性の神経変性疾患では、歩行困難な患者さんが治療後に歩行が可能になるなど、劇的な改善が見られる症例もあります。身体を温めることは、すべての病気の根幹に効く治療です。体を温め、血流を促し、リラックスさせるのです。副作用もなく、悪いはずがありません」(同)
和温療法の開発者である鄭氏が主催するホームページ「和温療法」では、この治療法について次のように説明している。
「全身の血管機能・血管新生を促進して、全身の血流を改善する治療法ですので、すべての臓器別診療科と連携できる治療法です。また、『和温療法』は中枢・末梢の自律神経や神経体液性因子(ホルモン活性)を是正し、自己免疫や生体防御機構を賦活化し、さらに心・精神を和ませ、心身をリフレッシュさせる全人的治療法です。従って、様々な難治性疾患に効果的だけでなく、それらの疾患の軽症な時から施行すれば各疾患の進行を抑制し、さらには原因疾患の予防や健康回復にも効果が期待できる治療法です」
性差医療では男女の差を考え、患者さんの話を聞き、一人ひとりにじっくりと対応する。いってみれば、オーダーメイド医療の第一歩だ。そのパイオニアである天野氏が、和温療法のような「万人にやさしい」和温治療に行き着いた。
実は個別化医療を支える大きな力となるのは、専門化された先進医療だけではなく全人的治療法のようなアプローチなのかもしれない。
(取材・文=梶浦真美)
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