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13年以降、感染者数が急上昇し、16年の1年間で4518人(速報値)と、42年ぶりに4千人を超えた (※写真はイメージ)
20代女性「梅毒」急増に医師が懸念 そのリスクとは?〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170202-00000017-sasahi-hlth
週刊朝日 2017年2月10日号より抜粋
過去の病気と思われていた梅毒が急増中だ。2012年と比べ16年の感染者数は約5倍とすさまじく、主に若い女性の罹患が増えているという。
梅毒の2012年までの20年間の感染者数は、年千人未満にとどまっていた。そのころの主な感染経路は男性の同性間の性的接触によるもので、感染経路が似たHIV(エイズウイルス)の合併例も多かった。
それが13年以降、感染者数が急上昇し、16年の1年間で4518人(速報値)と、42年ぶりに4千人を超えた。急増分の多くは、若い女性の異性との性的接触によるものであり、女性の感染者の半数以上は20歳代だ。東京慈恵会医科大学病院皮膚科の石地尚興医師は、
「男性の同性間から、なぜ異性間に広まったのかは不明ですが、対象者が圧倒的に多い異性間の性的接触への拡大が感染者の急増につながったのでしょう」
とみている。
梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌が原因の感染症だ。主に、性的接触に代表される濃密な接触により、トレポネーマが粘膜や傷ついた皮膚などから体内に侵入する。肛門性交やオーラルセックスでも感染し、病変部が口にあればキスでもうつる可能性がある。
感染しても3週間ほどは症状が出ないが、その後、性器や肛門、唇など、トレポネーマが侵入した箇所で増殖して病変が生じる。
最初(第1期)にできるのは小豆程度の大きさの赤いしこり。放っておくと、崩れてただれたようになる。さらにトレポネーマがリンパ管を通って移動し、太ももの付け根などのリンパ節が腫れたりする。ただし、ほとんど痛みはない。
感染後3カ月ほどすると、トレポネーマは全身に回り、皮膚や粘膜に発疹ができる(第2期)。全身のリンパ節が腫れることもある。手のひらや足裏の発疹は梅毒に特徴的な皮膚症状である。
「1期でも2期でも、何もしなくても症状は消えてしまいます。はじめから症状の出ない無症候性梅毒もあります。感染に気づかない人が増えると、そこから感染が広がっていく可能性が出てきます」(石地医師)
第3〜4期となると病変が皮下や、さらには脳や神経にまで及ぶが、近年ではここまで進行する例はほとんどみられない。
東京都在住の会社員・川口幸三さん(仮名・43歳)は口と手のひらの発疹が気になり、15年7月、皮膚科クリニックの紹介で石地医師のもとを訪れた。
診察した石地医師は発疹の出方などから梅毒を疑い、皮膚の生検や血液検査などをおこなった。
梅毒の血液検査は、トレポネーマの侵入によって血液中にできた物質の量(抗体価)を測る方法などを組み合わせて判定する。
川口さんには、梅毒第2期の目安となる肛門の扁平コンジローマ(発疹)が確認された。
梅毒にペニシリン製剤(抗生物質)の筋肉注射が認められていない日本では、同製剤の内服が標準治療である。1日3回の服用を、1期なら2〜4週間、2期なら4〜8週間続ける。
「この治療で梅毒は治るのですが、症状が消えてしまうこともあり、決められた期間の内服を続けられない患者さんも少なくありません」(同)
服用開始後、定期的に採血して抗体価を調べ、服薬終了後も基準値以下に低下していれば治癒とされる。
川口さんは8週間の予定で服用を始め、最初の1カ月は順調に抗体価が低下。これに安心しすぎたのか、受診が半年間途絶え、その後に受けた検査では抗体価が上昇していた。石地医師はこの間に再感染したものと推測した。その後も不規則な受診が続き、治癒の確認までに合計3回治療し、1年ほどかかった。
そして、最近急増している若い女性患者には、妊娠・出産時に別のリスクもあるという。石地医師は、
「トレポネーマをもったまま妊娠・出産となると、胎盤を経て胎児に感染し、流産や死産、赤ちゃんの先天性梅毒のリスクが高くなります。先天性梅毒の治療はまだ難しいのが現状です」
と警告し、早めの検査や治療を呼びかけている。
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