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手術不可能な進行胃がん 抗がん剤の進化がもたらす希望〈dot.〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161229-00000110-sasahi-hlth
dot. 1/6(金) 7:00配信
胃がんが死亡者数の上位を占める原因は進行がんの存在だ。進行がんの根治率は依然として低いが、抗がん剤の進化で延命が期待できるようになってきた。
東京都の三田昭子さん(仮名・53歳)は、肝転移もある進行胃がんで、地元の病院の「手術の適応もない」という検査結果にふさぎこんでいた。
三田さんの治療を担当することになった国立がん研究センター中央病院消化管内科科長の朴成和医師は当時を振り返る。
「手術ができないと知った際の落ち込みはひどく、これから始まる化学療法に精神的に耐えられるか、心配しながらのスタートでした」
選ばれた治療はSP療法。毎日、朝夕食後にTS−1という経口の抗がん剤を服薬する。さらに5週間に一度入院し、シスプラチンという抗がん剤を点滴で投与する。
入院治療後に食欲が落ちるという副作用もあるが、三田さんは数日で治まった。治療から1年以上たった今も、日常生活を送れている。
「がんが小さくなっているためでしょう。最近では体調もよくなり、笑顔もみられます」(朴医師)
三田さんのようなケースは決して珍しくない。薬物療法が効きにくいとされていた胃がんの領域も、TS−1の開発を契機に状況は変わった。三田さんに実施されたSP療法は延命効果が期待できる一次化学療法の標準治療として、切除不能ながんに使われている。
また14年9月にはオキサリプラチンも保険の対象となり、シスプラチンの代わりにオキサリプラチンを投与するSOX療法も標準治療の一つとなった。
SPとSOXの治療効果はほぼ同等だが、シスプラチンに比べてオキサリプラチンは入院を要するような副作用が少ないため、外来通院が可能となる。高頻度に起こる、手足のしびれの副作用に気を付けながら使える薬剤だ。
「私の患者さんがデザイナーで、手がしびれては図面を描けないからと入院を要するSPを選択しました。効果は同等ですから、シスプラチンの入院とオキサリプラチンのしびれと、どちらが受け入れやすいかが選択の基準になります」(同)
さらに切除不能な患者の一部に対しては、分子標的薬のトラスツズマブを投与すると副作用もほとんどなく、がんの増殖・進展を抑えることもできる。
これらの一次治療を行ったにもかかわらず、(1)がんが大きくなった(2)明らかに副作用による不利益のほうが大きい(3)患者に治療を継続したくないという気持ちがある、のいずれかが該当した場合、一次治療を終了し、二次治療に移行することになる。ここに新規の薬剤が昨年承認された。
「ラムシルマブという血管新生阻害薬です。これを抗がん剤のパクリタキセルという薬と点滴投与することで、腫瘍の縮小効果は上がります。薬剤の性質上、脳梗塞などの既往がある人には使えません」(同)
ラムシルマブはがん細胞の増殖に必要な栄養を断つ作用を持ち、切除不能の胃がん患者の延命効果をさらに延ばすことが期待されている。
このような薬剤の選択肢が増えてきたことで、生存期間は確実に向上している。また、抗がん剤を使用した結果、がんが縮小し、手術で切除にいたった患者も少なくない。現在、リンパ節転移がある患者に術前抗がん剤治療を行う効果についても検討されている。
「抗がん剤の使用により何らかの副作用は起きるため、短期的にはQOL(生活の質)が落ちます。ただし、QOLを悪化させる最大の原因はがんの進行です。副作用の多くは一時的なもので、徐々に慣れる人も少なくありません。診察室で患者さんに縮小したがんを見せると、とても喜ばれます。希望を持ち続けてほしいです」(同)
(文/ライター・山崎正巳)
※週刊朝日MOOK「新名医の最新治療2017」より抜粋
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