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「中分子医薬」でがん攻撃
薬効・低コスト両立 神戸大、抗体から作製 大阪府大、マウスで効果
バイオ医薬の高い薬効と、従来医薬の安い製造コストの両方を兼ね備えた「中分子医薬」の開発を目指す研究が進んでいる。神戸大学と大阪府立大学はそれぞれ、がん細胞が持つたんぱく質に結合してがんを攻撃する中分子医薬の候補物質を作った。製薬業界も研究開発に力を入れ、文部科学省も研究を後押ししている。
がん治療薬「オプジーボ」などの抗体医薬は、分子のサイズが大きい高分子医薬だ。病気にかかわるたんぱく質を狙って作用するため効果は高いが、製造に手間がかかり価格が高くなる。一方、以前からある薬の多くは、分子サイズが小さい低分子医薬。工業的に合成でき安価だが、様々な細胞に広く作用するため切れ味は悪い。
中分子医薬は、両者の中間の大きさで、高分子医薬の効果を持ち、低分子薬のように安価に作れると期待される。
神戸大の近藤昭彦教授らは、胃がんや大腸がんを攻撃する抗体の一部を切り出した中分子医薬の候補物質を作製した。がん細胞の表面にあるたんぱく質と、がんを攻撃するリンパ球を結びつけ、リンパ球ががんを攻撃しやすくなる。
胆管がんの細胞を培養して人間のリンパ球を混ぜ、この物質を加えたところ、これまでに作製されたほかの候補物質の約100分の1の濃度で、24時間以内にほぼすべてのがん細胞が死滅した。リンパ球だけだと、死滅するがん細胞は1割以下にとどまった。
抗体医薬は、抗体の遺伝子を動物細胞に導入して抗体を産生させて作るため、手間と時間がかかった。開発した物質はサイズが小さいため、動物細胞より速く増殖する酵母に作らせることが可能。迅速に製造できる。
大阪府大の藤井郁雄教授は、がんが栄養を取りこむための血管を作る際に分泌するたんぱく質に結合し、働きを失わせる中分子医薬の候補を作成した。たんぱく質の原料となるアミノ酸が複数集まったペプチドだ。
マウスの皮下に大腸がんを移植して4回注射したところ、10日後に治療しないマウスに比べがんが56%縮小した。バイオ医薬の抗がん剤、ベバシズマブ(商品名アバスチン)とほぼ同等の効果という。化学反応によって合成でき、治験で効果が確認できれば、アバスチンと同じ薬効で安価な薬が作れる可能性がある。
中分子医薬、患部への到達効率に課題
中分子医薬への関心は高まっている。文部科学省などは2015年度から、中分子医薬の開発につながる研究を支援する5カ年の事業を始めた。中外製薬は16〜18年の中期経営計画で、ペプチドなどを用いた中分子薬の開発を重要テーマの一つに掲げている。
中分子医薬の応用を広げる研究も始まっている。慶応義塾大学の土居信英准教授らは、中分子医薬などのたんぱく質を細胞の中に効率よく届ける技術を開発した。人の胎盤ができるときに働くペプチドを結合することで、細胞内で働く効率が数十倍に高まる。
開発中の中分子医薬の多くは、細胞表面などにあるたんぱく質に作用する。このペプチドを結合すると、細胞の中に効率よく入れるので、中分子医薬の標的の幅が広がるとみられる。
ただ中分子医薬は、人間の体内で分解されやすく、目的の細胞にたどり着いて機能させるのが難しい。このことが実用化の壁になっており、薬として承認された例はまだ少ない。
中分子医薬とは
中分子医薬 分子量が数千程度の医薬品。遺伝情報物質を用いる核酸医薬やペプチド製剤などがある。高分子医薬のように特定のたんぱく質に結合して作用し、低分子医薬のように化学合成などで製造できる。
[日経新聞12月26日朝刊P.13]
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