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なぜ解熱剤を飲んではいけないのか
風邪で解熱剤を飲むのはNGだった! 「免疫力」を高める科学的方法
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161231-00514804-shincho-life
「週刊新潮」2016年11月17日号 掲載
厳冬の季節、油断すると風邪という外敵に簡単に攻略されてしまう。肝要なのは防御法で、端的に言って「免疫力」を高めるに尽きるのだ。ちょっとした生活習慣の改善で免疫力をぐっと高められる科学的な方法をお届けする。
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「ウルトラマン」に描かれた地球は、いつも怪獣やら星人やら外敵からの攻撃にさらされており、それを排除するために科学特捜隊が日夜出動している。古い喩えで恐縮だが、怪獣や星人をウイルスに、科学特捜隊を免疫に置きかえれば、免疫の仕組みを理解しやすいのではないだろうか。
もっとも、科学特捜隊は弱すぎて外敵の侵入を防ぎきれない、という疑問の声も聞こえてきそうである。
『疲れない体をつくる免疫力』の著書がある新潟大学名誉教授の安保徹氏は、
「働き盛りの人にとって、免疫力を下げる最大の理由は忙しさです。無理をしないことですね」
と言う。要は、科学特捜隊は、仕事をしすぎて疲れきった体で働いているようなもので、ウルトラマンの助けが加わってこそ百人力、というわけだ。そこで、以下にウルトラマンの呼び方を記していきたいが、まずは免疫とはなんなのか、あらためて安保氏に、科学的に解き明かしてもらう。
■リンパ球とNK細胞
「ヒトは多細胞生物として進化する過程で、外から来た危険な異物を処理する能力をむしろ失ってきた。その弱点を乗り越えるために、単細胞時代のアメーバのような細胞を残し、それを全身に分布させて身を守りました。これは異物を貪食して無害化するマクロファージというものですが、外界の異物と遭遇する機会が増えるにつれ、マクロファージの食べる力を強くして顆粒球を生み出します。これが人体に危険な細菌を処理してきましたが、もっと小さくて危険な異物、つまりウイルスを効率よく処理しようとして抗体が生まれた。この抗体が体内でウイルスと接触、吸収し、無毒化していて、抗体を作る能力があるのがリンパ球です」
このリンパ球こそが免疫の正体だという。
「今ではマクロファージはヒトの体内で少数派。血液中は顆粒球が60%、リンパ球が35%で、細菌が入り込めば顆粒球が処理し、ウイルスが入り込めば、リンパ球を送り込んで抗体を作るという仕組みです」(同)
そして、リンパ球のなかでも、平熱のときに体内を“捜査”して、発生したがん細胞でさえも即座に殺し、われわれの免疫力と直結しているのがナチュラル・キラー細胞(NK細胞)と呼ばれるものだという。
リンパ球、そしてNK細胞が、どうすればウルトラマンのように働くのかを続けて語ってもらうと、
「NK細胞は、休息や睡眠などでリラックスしたときに働く副交感神経が支配しています。だから、活動時に働く交感神経の緊張が続いて、ストレスを感じすぎると、副交感神経の支配下にあるNK細胞は減っちゃう。つまり、穏やかに生きている人は免疫力が高いので感染症に強く、長生きできますが、無理や悩みが続いている人は、NK細胞が機能しないので病気がちになって、風邪もしょっちゅうひいてしまうんです」
ところで、風邪をひくと解熱剤を服用する人が多いが、安保氏はそれに反対して、こう説くのだ。
「風邪をひくと熱が出ますが、熱は回復するための重要なファクター。実は、リンパ球は体温が一定以上に高くないと、抗体を作れない。だからヒトの体は発熱してまで、免疫力を上げる条件を作っているのです」
つまり、免疫力を高める方法その1は、体温を上げること。それなのに解熱剤を服用するなど、もってのほかだというのである。
■入浴の効用
イシハラクリニック院長で『「体を温める」と病気は必ず治る』の著書がある石原結實氏も、
「免疫とは病気を意味する“疫”から“免”れるための力で、その源泉は体温にあると考えます」
と、言って続ける。
「医学的なデータでも、日中も冷える冬場は、体温が1度下がると免疫力は約30%下がる。すると、免疫を司るNK細胞などの白血球の活性が低下してしまうので、解熱剤を服用するより葛根湯などで体温を上げ、自然の治癒力を高めたほうがいいのです」
石原氏によれば、昭和30年代に36・9度だった日本人の平均体温は今、35・8度まで下がっているという。その理由には追って触れるとして、体温を高めるうえで入浴の効能を説くのは、修文大学健康栄養学部の伊藤要子教授である。
「ヒートショックプロテイン(HSP)というタンパク質がNK細胞を活性化させ、免疫力を増強することが科学的に証明されています。熱などの外的ストレスが加わるとHSPが増加し、傷害を受け、構造がおかしくなったタンパク質を修復してくれるのです」
それを、入浴をとおして増やそうというのだ。
「HSPは40度から42度の熱ストレスで最も効果的に増えます。冬場となるこれからは、肩までお湯にしっかりつかって、41度なら計15分、42度なら10分を目安に、週2回のペースで入浴してください。ただし、基礎体温が36度に満たない低体温の方は、1週間この方法で入っていただき、基礎体温を上げてから週2回に切り替えてください」
また、石原氏は、食事の際のわずかな心がけで、体温を高められると話す。
「同じ食べ物も冷色より暖色、つまり色が濃いほうを選ぶように心がけるだけで、基礎体温が上がって免疫力が高まります。たとえば白砂糖より黒砂糖、うどんより蕎麦、白ワインより赤ワイン、緑茶より紅茶のほうが体温を高める効果があることがわかっています」
■満腹だとNK細胞が鈍る
石原氏がもうひとつ説くのは、空腹であることだ。
「NK細胞も生き物だから、ウイルス以外に血液内の糖やタンパク質なども栄養として摂取していて、われわれが満腹になると眠くなるのと同様、エサが多いと活動が鈍くなってしまう。逆にお腹を空かしていれば、血液内の栄養分も減るので、白血球はバイキンをよく食べてくれる。“貪食力”が高まって、免疫力を高めることにもつながります」
ところが、今の若い世代は空腹を知らない。
「飽食の時代に育った世代は、空腹時に白血球の貪食力が高まらない分、免疫力が下がっているようです」
と、石原氏。それによって体温低下の理由も説明がつくというのだ。
特集「伝染ってしまう前に出来ることがある! 『免疫力』をぐっと高める7つの科学的方法」より
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