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まずは10種類の薬を3種類に「減らす」その方法を教えます 飲まずにすむなら飲まないほうがいい
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49985
2016.10.28 週刊現代 :現代ビジネス
■高齢者の3割が「薬漬け」
「うちの病院で診ていた患者さんが、調子が悪くなって大きな病院に入院してから帰ってくる。すると毎日飲む薬がドンと増えているということがよくあるんです。
どこか具合が悪くなって大病院に入院し、そこで治療してもらってから帰ってくるので、患者さんも大病院のことを信じてしまいがちです。だから薬の量が多くてもなかなか減らそうとしない。
こちらが『こんなにたくさんの薬を飲んでどうするんですか』と説得しても、『いや、出してください』と処方を強く希望するのです。特に退院直後の患者さんにはそういう人が多い」
こう語るのは、全国でも珍しい「薬やめる科」を設けている松田医院和漢堂の松田史彦氏だ。
本誌でもたびたび指摘してきたように、高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)が大きな社会問題になっている。
厚生労働省が'14年12月の診療記録を集計したところ、75歳以上の高齢者で10種類以上の薬を服用していた人は27・3%。3割近くが10種以上の「薬漬け」状態になっていたことが、わかった。
薬の量が増えると、飲み合わせによる副作用も複雑で予測するのが難しくなる。
「薬には配合禁忌とか併用禁忌という、合わせて飲んだら危険な状態になったり薬効が失われたりするという薬の組み合わせがあるのですが、これは2種類の組み合わせまでは色々と調べられています。
薬剤師も代表的な禁忌は把握していますし、調剤薬局のコンピュータにも入っている。しかし、3つ以上の組み合わせになるとわかりません。ましてや10種類以上となると、組み合わせも無限大です。なにが起きるか誰にも把握できないのです」(松田氏)
また、これだけの量になると、薬の成分を体内で分解する肝臓への負担も軽視できない。加えて、とりわけ高齢者の場合は薬の効果が強く出過ぎて、血圧や血糖値が下がり過ぎた結果、意識があいまいになったり、ふらついたりして、転倒する危険性も増す。
「歳をとればとるほど、薬を分解する力は弱まっていきます。口から飲んだ薬というのは、基本的に肝臓を通る。肝臓には解毒の作用があるので、人体にとって異物である薬も『解毒』する。そして肝臓が解毒しきれなかった分が全身に回って、薬効として働くわけです。
だから多量の薬を飲むと肝臓の機能は限界になる。年齢による衰えを加味すればなおさらです」
では、自分や家族が明らかに多すぎる薬を処方されている場合、どのように減らせばいいか。冒頭の松田氏のような減薬を積極的に勧めてくれる医者が近くにいればいいが、そのような専門の診療科を設けている病院は非常に珍しい。
まずは自分の薬手帳をよく見て、重なっている効果の薬はないか、思い当たる副作用はないか確認し、減らせる薬を探してみよう。
ただし、患者が自分で急な減薬を進めると、症状が思わぬ形で悪化したり、離脱症状(禁断症状)に悩まされることがある。薬をやめるには、信頼できるかかりつけ医に必ず相談したい。
■まずは降圧剤を見直す
「理想としては薬の数はゼロにしたい。10種類の薬をすべてやめるのは難しいとしても、できれば3種類くらいには減らしたいところです」
こう語るのはサン松本クリニックの松本光正医師だ。
「多剤併用をしている患者さんのなかには、降圧剤を3種類も飲んでいる人がいますが、そのような人にはまず降圧剤を減らしなさいとアドバイスしています。安静時の血圧が200を超えているようであれば、飲んだほうがいいですが、そんな人はめったにいません。
先日来た高齢の患者さんも、上の血圧が110なのに降圧剤のオルメテックを飲まされていました。高齢者の場合は、逆に頭に血が回らないと脳梗塞を起こすこともありますから、血圧の下げ過ぎに気を付けるべきです。
血圧の基準値のガイドラインは、ここ十数年のあいだに何度も引き下げられました。その結果、血圧の基準値を超えている人の数は'87年には230万人だったのが'11年には5500万人と急増している。いまの日本人は明らかに高血圧を気にしすぎています」
東京慈恵会医科大学循環器内科の川井真准教授は、降圧剤を減らすときの順番を次のように説明する。
「例えば、(1)RAS系阻害薬(ARBとACE阻害薬。前者はミカルディス、オルメテックなど。後者はアデカット、コバシルなど)、(2)カルシウム拮抗薬(アムロジン、アダラートなど)、(3)利尿剤(フルイトランなど)といった3種類の降圧剤を併用している人が、減薬したいときには、まず(3)からやめるのがいいでしょう。
利尿剤は塩分摂取が多い人には効果が高いのですが、血液濃縮作用がありますし、その結果、尿酸値も高くなり、腎臓にも負担がかかる。
高齢者なら、その次にやめるのは(1)のRAS系阻害薬です。(2)は降圧作用が安定していますし、一種類残すとしたらこれでしょう。ただし若い人が長期間飲むとすれば、臓器保護の観点からRAS系を残してもいい」
■糖尿病薬も減らせる
次に糖尿病の薬を見て行こう。前出の松田氏が語る。
「SU剤(アマリール)、チアゾリジン誘導体(アクトス)、DPP-4阻害薬(ジャヌビア)と3種類の薬を処方されていた患者さんがいます。同じ病状に対して3種はさすがに多すぎます。
この患者さんの場合はアマリールの3mgと1mgが出ていました。用量は違うけれども同じ薬が2つ出されるというのはよくあることです。入院中、時間帯などに合わせて細かく血糖を調整するためにこのように処方されたのでしょうが、食事療法をすれば退院後も両方飲み続ける必要はない」
松田氏は、血圧などの循環器系と糖尿病系の生活習慣病薬は食事療法でかなり減らせると述べる。
「高齢者の場合、運動療法は限界があるので、食事療法がメインになります。糖質制限や小麦などに含まれるグルテンを減らすことが大切です。
糖質を摂る量を減らせば、胃酸の逆流も減りますので、よく出されるPPIのような胃薬(タケプロン、ネキシウムなど)もいらなくなる場合が多いですね」
前出の川井氏も同じ意見だ。
「糖尿病は、本当にインスリンが出なくなってしまった重篤な場合は別にして、運動と食事という本人の努力次第で、薬を減らすことができます。複数飲んでいる場合は、薬の特徴をつかみながら、医師と相談するといいでしょう。
SU剤は膵臓を刺激してインスリンを出させる薬ですから、長期的に高用量を飲むと膵臓に負担がかかる恐れがある。しかも低血糖など、効き過ぎへの注意も必要です。
一方、DPP-4阻害薬は、食後の血糖上昇に伴う時のみインスリン分泌を促すので、空腹時でも低血糖にはなりにくい。ただし、あまり強くないので、症状が重い人だと二重三重に薬を出さざるを得ない。
比較的最近出てきたSGLT2阻害薬(スーグラ、フォシーガなど)は脱水状態になるリスクがあるので、高齢者に出すのは慎重にならざるをえないですね」
悪玉コレステロールを抑える脂質異常症薬はどうだろう。
「コレステロール抑制の薬を飲むかどうか判断する場合は検査値だけを見るのではなく、動脈硬化の度合いを画像で判断することも大切です。例えば、頸動脈エコーで血管内にどれくらい脂質(プラーク)がたまっているのかを見て、動脈硬化の度合いを調べる検査があります。コレステロール値が高くても、エコーで血管がきれいであれば、薬物治療を急ぐ必要はない場合もある」(川井氏)
血液をサラサラにしてくれる抗血栓薬もよく処方されている。
抗血栓薬には脳梗塞や心筋梗塞の再発予防に出される抗血小板薬(プラビックス、バイアスピリンなど)と、心房細動や下肢静脈からの血栓塞栓予防と治療に対する抗凝固薬(ワーファリン、イグザレルト、エリキュースなど)がある。この2種類の薬が両方出されている場合は要注意だ。
「抗血小板薬と抗凝固薬の2剤併用を将来的に1剤にできないかという問題は、現在、医療の現場でも議論されているところです。2つを飲み合わせると、出血が非常に止まりにくくなるので、特に高齢者の場合は、リスク管理が重要となる。
ですからできるだけ1剤にしたいですが、どちらかの薬を選択しなければならないとすれば、抗凝固薬を残すことになるでしょう。心房細動などの既往歴がある人では、不整脈を根治しないうちに、この薬をやめてしまうことは非常に危険だからです」(川井氏)
■抗生物質はなるべく飲まない
以上のような生活習慣病薬に加えて、よく出されるのが痛み止めだ。高齢者になると膝や腰の痛みを訴える患者が多いが、どうしても我慢できない場合は仕方ないとして、慢性的に痛み止めを飲んでいると、体への負担が増すばかりだ。
「歳をとれば体のどこかが痛くなるものです。恒常的に鎮痛剤(ロキソニンなど)を飲むのはやめたほうがいいでしょう。腸閉塞や胃炎の副作用を起こす場合もあります」(松本氏)
「高齢者は痛み、尿の不具合、不眠、便秘などを訴えることが多いので、それぞれの症状に薬を出していては、あっというまに薬の量が増えてしまいます。とりわけ解熱鎮痛剤は、確実に体温を下げるので、恒常的に飲むのはやめたほうがいい」(松田氏)
体温の低下は免疫力の低下にもつながる。
「免疫力が落ちると、風邪を引きやすくなったり、肺炎を起こしたりします。そうすると抗生物質が処方されることもある。抗生物質を飲むと腸内細菌がダメージを受けてしまうので、免疫力が一段と下がったり、下痢をしたり便秘をしたりする。するとまたその症状に対する薬が出て、悪循環になります」(松田氏)
逆に身体を温めると、免疫力が高まり、薬をやめるハードルも下がってくる。頻尿の人はトイレの回数が減るし、足腰の痛みも和らぐことが多い。
離脱症状が出やすいのでやめるのが難しく、依存性が高いため、薬の数が増えがちなのが精神科の薬だ。
「抗うつ剤や統合失調症の薬、睡眠薬をあまりに多く飲んでいて、記憶力、理解力、判断力が落ちて、話もできない患者さんもいます。こういう場合は、できるだけ少しずつ薬を減らしていく努力をしますが本当に大変です」(松田氏)
増やすのは簡単だが、減らすのが難しい――それが薬だ。自分や家族の健康を守るためには、飲む数はできるだけ少ないほうがいい。
「週刊現代」2016年10月15日・27日合併号より
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