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病気の「啓蒙キャンペーン」のウラで動く製薬業界とカネ そのクスリ、本当に必要ですか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49539
2016.9.12 週刊現代 :現代ビジネス
医療・製薬業界のタブーを知らずに病院通いを続ければ、バカを見る。我が身と家族の健康を犠牲にしないために知っておきたいこと。
■宣伝して患者を増やす
「C型肝炎治療をためらっていた皆さん。治療は進歩しています。ハードルはぐっと下がっているんです」
テレビドラマでよく見かける女優が、視聴者にこう語りかける。そして、とても低く置かれたハードルを「せーの!」と飛び越え、こう締めくくる。
「お医者さんにお確かめください!」
これは、今年前半にしばしば流されていたテレビCMのひとコマ。目にした人も多いだろう。
最近、C型肝炎に関する広告や啓蒙活動が活発化している。C型肝炎はウイルス性の肝炎で、そのウイルスを保持している人は日本で150万人いると推測されている。発症し、慢性肝炎になると肝硬変や肝臓がんになる危険性がある。
だが、ここで一つの疑問がわく——。
「C型肝炎以外にも日本人がかかり、死に至る病は無数にある。とりたてて、この病気のCMばかりが目につくのはどういうことだろう?」
その疑問に大手製薬会社の幹部社員が答える。
「肝炎に関する啓蒙活動がこれだけ行われている理由は簡単です。昨年、非常に画期的な肝炎の薬がいくつか認可されたのです。代表的な薬はソバルディ、ハーボニー、ヴィキラックスなど。
それらの薬が非常によく効くことは間違いないのですが、信じられないほど高価なのです。製薬会社はこれらの薬をできるだけ広く多くの患者に使ってほしいと考えています」
例えば、ソバルディは1日1錠6万1799円で治療完了までに約546万円、ハーボニーは1錠8万171円で合計約673万円もする。
実際、この二つの薬は'15年度の処方薬の売上高ランキングで1位2位を独占した(1位のハーボニーは2693億円、2位のソバルディは1509億円)。
高額療養費制度があるので、実際に患者が負担する額は数十万円程度だが、患者一人あたり400万~500万円もの治療費が保険料や税金で賄われている。
これらの薬は非常によく効くので、多くの肝炎患者を救っていることは間違いない。だが、製薬会社だって営利企業。100%善意で患者を救おうとしているわけではない。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が語る。
「肝炎の薬があまりに売れすぎたので、厚生労働省は薬価を引き下げる予定です。それを見越した製薬会社としては、薬価が高いうちにできるだけ多くの患者に薬を売っておきたいと考えている。それで、肝炎に関するテレビCMを頻繁に流したり、肝炎啓蒙キャンペーンにおカネを出したりしているのです」
さらに新薬は効能が画期的だとしても、副作用についての情報が少ないという欠点もある。薬の認可後数年たってから重大な副作用が報告されることも多いからだ。
実際、厚生労働省は7月5日、ヴィキラックスを使用した患者9人が急性腎不全になり、死亡者も出たと発表。またソバルディやハーボニーについても、薬と因果関係の否定できない高血圧や脳血管障害の症例が報告されたとしている。
「医療の進歩のため、このような犠牲は仕方ない」という考え方もある。だが、自分が医療の進歩のための「実験台」にされてはたまらない。
■製薬会社と医者はグル
日本では、医者が処方する医薬品はテレビや新聞、雑誌などで広告を打つことが禁じられている。そこで、直接に薬を宣伝できない製薬会社は、新しい処方薬を売りたい場合、その病気に注目が集まるように宣伝する。これを「疾患喧伝」と呼ぶ。
「肝炎は、厚生労働省も協力して、『知って、肝炎』という大キャンペーンが行われています。レコード会社のバックアップの元、国民的アイドルグループや大物歌手・俳優が多く参加、肝炎ウイルス検査の重要性や、肝臓の専門医の受診を勧めている。
啓蒙活動自体が良いか悪いかは別にして、このような『疾患喧伝』の裏側では多くのおカネが動いているのです」(前出の製薬会社幹部)
このような喧伝は、これまでも様々な病気に関して行われてきた。民放テレビ局幹部が語る。
「例えば、サッカー選手のペレが出演していた勃起障害のCM。法律上、薬の名前は伏せられていましたが、これは誰にでもバイアグラのコマーシャルだと一目瞭然でした。他にも、人気時代劇ドラマの将軍様が爪水虫を啓蒙するものもあった。これはラミシールという薬の製薬会社のCMでした」
このようなCMを見た患者が病院に行くと、同じタレントが出ているポスターが壁に貼ってあることもしばしばある。
病院にはあらかじめ製薬会社のMR(医薬情報担当者)が訪れて、「このようなキャンペーンを行っているので、患者さんが来たら我が社の薬を処方してください」と医者に売り込んでいる。そして、医者はCMのスポンサーである製薬会社の薬を処方する、というわけだ。
もちろん、すべての疾患喧伝が悪だとは言えない。しかしなかには、これまで病気とは認められなかった症状に病名をつけて、新しい薬の市場を作り出そうという動きもあるから厄介だ。前出の製薬会社幹部が語る。
「近年、『逆流性食道炎』という病名が知られるようになりました。しかし、この病気は10年くらい前にはただの『胸焼け』と呼ばれていたものです。
なぜ、このようなもっともらしい病名が普及したかというと、PPI(プロトンポンプ阻害薬、商品名にネキシウム、タケプロンなど)という新しいタイプの胃薬を売りたいと考えた大手製薬会社が、さかんにコマーシャルを打って疾患喧伝を行ったからです。
胃薬は副作用が無さそうなので、なんとなく長期間服用する患者も多いのですが、実は慢性的に飲むのは危ない。長く飲んでいると骨粗鬆症になりやすいという研究結果もある」
PPIは製薬会社の大きな稼ぎ頭で、ネキシウムは'15年に824億円も売り上げている(売上ランキング7位)。
「製薬会社は数千人規模のMRを動員して、PPIの販促活動を行っています」(製薬会社幹部)
病名を仰々しくして、患者数を増やし、薬を売りさばくというのが製薬会社の常套手段なのだ。
自分たちの都合で患者に向き合いがちなのは、製薬会社ばかりではない。
メスを握った医者たちも同じだ。典型的なのは、群馬大学医学部附属病院で明らかになった、腹腔鏡手術の失敗である。
この事件では、一人の医師が高難度の腹腔鏡手術を行い、8人もの患者を死亡させていた(開腹手術での死亡者も含めると18人)。昭和大学横浜市北部病院、循環器センター教授の南淵明宏氏が語る。
「自分の力量もまったく顧みずに、患者を実験台にしてやりたい医療をして、死亡させる。この事件は医者の権威に盲従する日本社会の悪い特徴の現れだと思います。院内の看護士やスタッフは惨状を知っていたはずです」
■「資格」欲しさに手術する
南淵氏は、カテーテルによる冠動脈形成術にも警鐘を鳴らす。これは心臓内科医が行う治療で、先端に風船のついた管を冠動脈に入れて拡げ、ステントという網目状の筒を置いて、動脈が縮まるのを防止する治療法。
「カテーテル治療をやりたがる内科医が多いのですが、治療しても再発することが非常に多い。挙句の果てに『もうお年ですから、今後はおとなしく過ごして下さい』と切り捨てられる」(南淵氏)
「この患者は外科手術に回すべきか」と悩んでいる内科医でも、「たまたま来週、治療の予定が空いているから内科のカテーテルで処理してしまおう」と治療法を決めてしまうケースもあるという。
腹腔鏡の場合もカテーテルの場合も、症例を増やせば増やすだけ、病院は儲かる。勤務医自身の給料は変わらないにしても、経験を積めば「認定医」の資格がもらえる。資格欲しさに症例を積みたがる医者に当たってしまえば、患者は泣き寝入りするしかない。
「問題は、医者の技量を客観的に測る制度がないこと」と語るのは国立大学病院勤務の心臓外科医。
「本当に技量のある医者に手術してもらえるか、若い医者が経験を積むための『実験台』にされるのか、運かコネ次第というのが現実です。運任せにしないためには、患者自身がよく勉強をして、治療法について医師と話し合う必要がある。
大病院、とりわけ大学病院では、『患者は実験台』という意識がある。うちの大学の教授も『医療事故は、医学の進歩のためには避けられない。新しい手術法にチャレンジしなければ、人類の進歩が遅れてしまう』とよく口にします」
この言葉を裏返せば、手術の失敗で患者が死んでも、医療の進歩のためには仕方なかったのだということになる。確かに、医療の進歩は大切だ。だが、必要もない無謀な手術の犠牲になりたい患者などいるはずもない。
医者も製薬会社も、患者から見れば信じられないような論理に突き動かされている。このタブーを認識していなければ、知らない間に「実験台」にされてしまうのだ。
「週刊現代」2016年9月3日号より
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