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大腸がんにかかる人は年間約13万人(※イメージ)
目覚ましい進化! 大腸がんの薬物治療法とは〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160825-00000158-sasahi-hlth
週刊朝日 2016年9月2日号より抜粋
大腸がんのうち、とくに直腸がんの手術は難しい。日本の標準手術では、転移の可能性があるリンパ節も切除するが、この方法で再発するリスクを減らせることが米国の学会で発表された。
大腸がんにかかる人は年間約13万人いる。大腸は、大きく「結腸」と「直腸」に分けられ、直腸がんは手術が難しく、結腸がんに比べ治療成績が悪い。
大腸がんは、進行度により0〜IVまでの5段階の病期に分けられる。病期0はがんが粘膜にあって大腸内視鏡で切除できる。病期Iは大腸の壁(固有筋層)までにとどまり、手術などでがんの切除がおこなわれる。
病期IIはがんが大腸の壁の外にまで広がり、病期IIIはリンパ節にも転移がある。手術によるがん切除に加えて、転移の危険性があるリンパ節の切除(郭清[かくせい])も必要になる。病期IVは、肝臓や肺、腹膜などに遠隔転移があり、手術が困難な場合には抗がん剤などで治療がおこなわれる。
直腸がんの手術が難しいのは、肛門のすぐ上、骨盤の奥に直腸が位置し、膀胱・前立腺・子宮などの臓器や重要な自律神経が隣接しているためだ。
さらに、肛門からおよそ10センチ以内にがんがある下部直腸がんは、そのほかの大腸がんと違って、直腸から離れた骨盤の側壁にあるリンパ節(側方リンパ節)にもがんが転移しやすい。また、骨盤内に再発(局所再発)が起こりやすい。そのため、下部直腸がんは治療成績が悪い。
欧米では局所再発を防止するため、がん切除に加えて放射線治療をおこなうのが主流だが、日本では側方リンパ節を切除する「自律神経温存側方郭清」が標準手術として実施されている。
今年6月に、日本臨床腫瘍研究グループが実施した大規模な臨床研究(JCOG0212)の結果が米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された。病期II、IIIの下部直腸がん手術において、側方郭清をおこなうと局所に再発せずに5年生存する割合が87.7%であったのに対し、側方郭清をおこなわない場合には82.4%と治療成績が悪かった。
大阪府在住の会社員、田中重雄さん(仮名・54歳)は9年前、排便するたびに出血するようになった。だが、「重大な病気だと言われたら怖い」と、病院に行かずに放置していたところ、腸に便が詰まってパンパンになり、大阪府立成人病センターの消化器外科に駆け込んだ。
大植雅之医師が診察すると、直腸の下部、肛門から6.5センチ離れたところに、8.4センチの大きながんが見つかった。がんは腸管をふさぎ、もう少しで破裂するところだった。リンパ節に59個もの転移が見つかったが(直腸周囲31個、大動脈周囲24個、側方4個)、他の臓器への転移はみられなかった(病期III)。
大植医師は開腹手術により、排尿機能や性機能をつかさどる神経をできる限り温存しながら、がんがある部位の腸管と転移リンパ節をすべて切除した。手術後には、転移・再発を防ぐための抗がん剤治療(術後補助化学療法)をおこなった。
田中さんは術後、排便回数の増加、下痢時に便が漏れやすいといった排便障害や、薬で治療できる程度の勃起機能低下が起こった。しかし、日常生活に大きな問題はなく、仕事を続けられた。手術した年の夏には子どもと泳ぎに行って真っ黒に日焼けし、現在も再発なく元気に過ごしている。
「田中さんはリンパ節転移の数が非常に多かったのですが、がんと一緒にそれらを完全に切除して一命を取り留めました。下部直腸がんの過半数が局所再発を起こすことから、しっかりとした手術で側方リンパ節を切除することが非常に重要です」(大植医師)
術前の診断では精度の問題により正確にリンパ節転移を確認できないことも多いが、病期II、IIIの直腸がんのおよそ20%に側方リンパ節への転移が見つかることがわかっている。
「側方郭清には外科医の高い技術が必要とされるうえ、一つひとつのリンパ節をていねいに切除するには手間と時間がかかります。リンパ節転移の危険性が高い下部直腸がんの患者さんには、徹底した側方郭清をおこなっている専門病院で手術を受けることをおすすめします」(同)
一方、最近ではがんの薬物治療の進歩も目覚ましい。大腸がんの抗がん剤による一次治療は、細胞の増殖を阻止して死滅させる(殺細胞性)薬物であるフッ化ピリミジン系薬、オキサリプラチン、イリノテカンを単剤または2剤組み合わせ、そこに近年登場したがん細胞の増殖に関わる因子だけを狙い撃ちする分子標的薬を追加することで、治療効果が著しく向上した。
2014年には、フッ化ピリミジン系薬+オキサリプラチン+イリノテカンの3剤(FOLFOXIRI)に分子標的薬(ベバシズマブ)を加えた治療法の有効性が報告され、新たに標準治療の一つとなった。分子標的薬には、がん細胞に栄養を送る血管の新生を抑制するベバシズマブやラムシルマブ、がん細胞の成長を抑制する抗EGFR抗体(セツキシマブ、パニツムマブ)などがある。
静岡市在住の主婦・岡田豊子さん(仮名・62歳)は、夫と2人暮らし。旅行が大好きで明るい性格だが、14年6月に急に食欲が落ち、みぞおちが痛くなったため、近くの病院を受診した。
検査すると貧血がひどく、大腸内視鏡検査で結腸にがんが見つかった。がんはすでに肝臓にも5カ所転移していた(病期IV)。結腸がんは、腹腔鏡下手術で切除したが、肝臓の転移巣は大きいうえに数が多くて切除不能だったため、抗がん剤治療をすすめられて県立静岡がんセンター消化器内科・山崎健太郎医師を紹介された。抗がん剤で小さくなれば肝臓の転移も手術できると言われていた岡田さんは、治療にとても前向きだった。
最近では、患者のがん組織の遺伝子やたんぱく質、血液中の遺伝子を調べると、抗がん剤の効果や副作用などを予測できるようになってきている(バイオマーカー)。
治療開始前の検査により岡田さんは、細胞増殖に関わるたんぱく質の一つであるRASの遺伝子に変異があるため、抗EGFR抗体の効果が期待できないことがわかった。そのほか、イリノテカンの代謝に関連するUGT1A1遺伝子には異常がないためイリノテカンの副作用リスクが高くないことも判明していた。
山崎医師は、岡田さんがもともと持病もなく元気であることも考慮し、この状況で最も効果が期待できるFOLFOXIRI+ベバシズマブによる治療を提案した。
治療開始2週間後、副作用による血液中の好中球減少がみられたため、投与量を減量して治療を継続した。4週後に脱毛が起きたが、山崎医師のアドバイスで院内の美容室に相談し、かつらを用意していたので、変わらず活動的な日常生活を送ることができた。
2カ月後、がんが縮小し、3カ月半後に手術可能と診断された。その後、岡田さんは無事肝臓の転移を手術ですべて切除することができた。現在は経過観察中で、ご主人との旅行を楽しんでいる。
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