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知っておきたい「万能薬ステロイド」の重大リスク 副作用のオンパレード
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49373
2016年08月16日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
■安倍総理も使っている
内科医のジェフリー・トッド博士らが'02年、イギリスで行ったステロイドについての調査の結果をご存知だろうか。
ぜんそくが持病で、「吸入ステロイド」による治療を行っていた人々のうち33人もの患者が、低血糖や意識障害、けいれんといった症状を引き起こす「副腎不全」という重篤な症状を起こしていたのだ。そしてそのうちの1人は死亡していた。
この調査は、ステロイドという薬が、恐ろしい副作用をもたらすことを示している。
日本でも'05年に、ステロイドによる死亡事故が起きている。急性骨髄性白血病で入院した当時20歳の女性が臍帯血を移植する手術を受けたが、手術後、移植された細胞のリンパ球が体を攻撃する反応が現れた。
医師が症状を抑えるためにステロイドを投与したところ、女性は筋萎縮の症状を起こし、寝たきりの状態になった。女性は手術から1年半ほどして、死亡した。
こうした事例から分かるのは、ステロイドは「非常に効果が高いが、副作用もまた強く、恐ろしい」ということだろう。実際のところ、ステロイドにはどのようなリスクがあるのだろうか。
ステロイドは、副腎皮質ホルモンを含む薬で、人間の免疫を抑制する効果を持つ。主に腎臓病やネフローゼといった病気に使われるが、広い効能と強い効力のため、ほかにも潰瘍性大腸炎、肝炎、低血圧症など様々な目的で頻繁に利用されている。安倍晋三総理も、持病の潰瘍性大腸炎の薬としてステロイドを使い、症状を抑えていると言われている。
イシハラクリニック院長の石原結實氏が言う。
「ぜんそくの発作やリウマチといった病気は、アレルギー現象や、免疫が自分の体を攻撃する自己免疫疾患ですが、ステロイドはこうした病気には非常によく効くことで知られています。
たとえばステロイドの経口薬は1粒が5rのものが多いですが、リウマチの人に1~2粒使うと、ものすごくよくなります。その効き方は、まるで神様の薬のようです。
ほかにもメニエール病にも効きますし、出血を止める血小板の機能を亢進させるため、事故で大出血をしている患者にも使用されることが多い。
ですが、こうした短期間の服用での劇的な症状の改善効果がある薬は、その分、長く使い続けることには大きなリスクが伴います。ステロイドは、いわば副作用のオンパレードなのです」
実際、副作用を挙げていくと、代表的なものだけでも以下のようになる。
・糖を合成する働きを高めるため糖尿病になりやすくなる
・免疫力が低下し感染症にかかりやすくなる
・血小板の機能を亢進させるため血栓症になりやすくなる
・白内障が進行する
■骨がスカスカになる
ほかにも、胃潰瘍、副腎不全、多毛症、湿疹、ムーンフェイス(顔の膨張)、骨粗鬆症、緑内障、動脈硬化、高脂血症——挙げれば切りがない。
ほかにも、おそろしい副作用として、「大腿骨頭壊死」という症状がある。'03年、香港や中国でSARS(重症急性呼吸器症候群)が大流行した際には、患者に対して抗ウイルス剤とステロイド剤が併用されたが、その副作用によって数十人という人々がこの症状に苦しむ事態となった。整形外科医が言う。
「ステロイドは多用すると、骨に血液が循環しにくくなる症状を引き起こします。この影響を受けやすいのが股関節の大腿骨頭、つまり太ももの付け根にあるボール状の骨です。ここがスカスカになって潰れてしまい、激しい痛みを感じた患者が駆け込んでくることがあります」
あまり知られていないが、ステロイドは精神にもダメージを与える。前出の石原氏が言う。
「不眠症や多幸症、うつ症状を発症します。私の知人は、アトピーで長い間ステロイドを飲んでいましたが、精神的に不安定になり、うつ症状を発症することがありました。最終的に自殺してしまいましたが、私はステロイドがきっかけだったのではないかと疑っています」
ステロイドは外用薬としても使用され、経口薬ほどは副作用がないといわれることもあるが、そうとも限らない。
アトピーなどの治療に使われ、当初の効果は劇的だというが、これも使い続けると、「ステロイド性皮膚炎」になることがある。皮膚が黒く、薄く、ただれたようになるのだ。
本来なら、こうした副作用を避けるために、長期の使用は避けなければならない。しかしステロイドはその性質上、ほかの薬に比べて長く使用してしまう可能性が高い。前出の石原氏が指摘する。
「とにかくよく効くので、患者はステロイドをやめたときの体調の悪化を考えると、やめようという気にならない。医師も、患者に嫌がられてまでやめさせるのは難しい。
実際、生活も改善されていますから、副作用があると頭でわかっていても、『大丈夫だろう』という気持ちになってしまう。一度使い始めてしまうと、医師が『やめどき』を失いがちなのです。
しかし、そればかりに頼ってズルズルと使い続けると、副作用も現れますし、その副作用に対応するための薬がさらに処方されます。胃潰瘍になればその薬を処方され、骨粗鬆症になればビタミンDの薬を出され、と雪だるま式に薬が増えてしまう。症状を抑える対症療法だけでなく、『根治』をきちんと考えなければなりません」
そして、2~3年のスパンで目に見える重篤な副作用が出なかった場合でも、長く使い続けた場合、結局は命を縮めることになる。
「ステロイドは免疫を抑制することで様々な病気の症状を抑えています。都合よく、体の『一部の免疫』が弱められるわけではなく、全身の免疫が弱くなっていく。外敵に抵抗する力が小さくなるのですから、様々な病気にかかりやすくなる。
たとえばリウマチにステロイドを長期間使うと、肺炎やがんにかかりやすくなります。こうした病気は高齢者にとっては危険なものです。結果的には、ステロイドを使わなかった人に比べて、10年以上も寿命が短くなるということがあるのです」(前出の石原氏)
夢のような効果があるものには、必ず強い副作用がある。そのことを知った上で、薬は選ばなければならない。
「週刊現代」2016年8月13日号より
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