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七月四日、および七月十五日の二度にわたり、二名の元創価学会員から、名誉毀損で刑事告訴された『聖教新聞』――。
その原因となったのは、告訴に先立つ六月下旬から七月上旬にかけて、『聖教新聞』(山梨版)に掲載された、山梨県の学会幹部による座談会記事である。
この記事中、幹部らは、元学会員二名の人権などまったく無視し、実名を挙げた上で虚偽を並べ立て、再三にわたって二名の誹謗中傷を繰り返したのである。
「邪悪に対する復讐は正義である。断じて許すな!」(七月十七日付『聖教新聞』一面「わが友に贈る」欄)とのメッセージに象徴されるように、創価学会はこれまで、反創価学会と見なした人物・組織に対して、常軌を逸した攻撃を加え続けてきた。
例えば学会男子部による大石寺僧侶宅"襲撃"事件(本紙五月十六日・六月一日号既報)や、東京・江戸川区に住む老婦人に対する徹底的な嫌がらせ事件(同七月十六日号既報)のような実力行使で、あるいはまた、張り込み・尾行・盗撮等々、ありとあらゆる手段を用いて得た情報を元にして、名誉毀損も厭(いと)わぬ誹謗・中傷記事を作成し、各種機関紙誌を使って徹底的に報じることで、敵対者に対する攻撃を続けてきたのである。もちろん、その人権などまるで無視して――。
そんな創価学会の機関紙『聖教新聞』が、今回ついに刑事告訴されたのである。
発行元の「聖教新聞社」は、いかにも会社組織のような名称を名乗ってはいるが、驚いたことに、法人の形にはなっておらず、あくまでも創価学会内の一部門である。
しかも、この聖教新聞社の体制といえば、編集代表の原田光治をはじめ、代表理事である山崎良輔、出版・営業代表の鈴木琢郎と、いずれも創価学会の副会長が首脳陣を占める。
さらには学会の重鎮・青木亨副会長が相談役に、秋谷栄之助会長・森田一哉理事長の両学会トップが最高参与に名を連ねているのであるから、いざとなれば、学会本体がその責任を問われることは必至。
それだけに、今回の刑事告訴が学会本部に与えた衝撃は、計り知れないものがあったろう。
聖教新聞社を別法人にしておかなかったことで、不用意にも本陣まで切り込まれる形となってしまった創価学会だが、じつは、聖教新聞社を学会の一部門に留め置いていたことで、これまで、国から税制面での優遇措置という大きな恩恵を蒙ってきたのである。
例えば、聖教新聞社の土地・建物――。
一般法人であれば、当然、固定資産税の課税対象となるが、「宗教法人所有の宗教施設」ということになれば、非課税。
ちなみに、聖教新聞社本社内には、「言論会館」と名付けられた、地方の中心会館にも負けない、立派な礼拝施設が存在する。
さらに見逃がせないのが、収益事業に対する税の優遇措置。
まず、宗教法人が上げた事業収益のうちの三〇%は、その宗教法人の宗教活動部門への寄付金とすることができる。言い換えれば、宗教法人は、事業収益のうちの七〇%だけを、事業所得として申告すればよいことになる。
そのうえ、一般法人は、申告所得の三七・五%を税金として納めねばならないのに対し、宗教法人は、税率自体も二七%に軽減されている。
すなわち、宗教法人は、実質、全事業収益のうちの一八・七%を税金として納めるだけでよいわけで、一般法人と比較した場合、実効税率は半分程度に押さえられているのである。
ちなみに、平成八年度の創価学会の申告所得は九十三億三千六百万円。この全てを事業所得と見なし、さらに、寄付金枠が最大限に活用されているものとして計算してみると、創価学会が実際に得ていた事業収益は、百三十三億三千七百万円だったことになる。
一般法人であれば、この三七・五%、すなわち五十億円強を納税すべきところを、優遇税制のおかげで、創価学会は、九十三億三千六百万円の二七%、約二十五億二千万円で済ませた計算になるのである。
なんと、年間に約二十五億円の得だ。
こうした特権が与えられてきたのも、創価学会が、宗教法人という公益法人だったからに他ならない。
公益法人とは、いうまでもなく、公共の利益に広く寄与すべき存在、ということである。
ところが、実際の創価学会および聖教新聞社は、というと、先に述べたように、他者の基本的人権を踏みにじり、反対者を叩きつぶすための誹謗・中傷を繰り返してきた結果、ついに今回、刑事告訴されるまでに至ったのである。
与えられた特権だけはフルに利用して利益を得ておきながら、社会に対し果たすべき義務は完全に放棄する――。これでは、「詐欺にも等しい"脱税行為"だ」との批判の声が上がるのも、当然のことではないか。
この異常事態について、日本大学法学部の北野弘久教授は、
「私は本来、宗教法人の収益事業について、税制面で優遇すること自体が、憲法二十条の政教分離原則に抵触する疑いがあると考えていますが、仮に、優遇税制自体は合憲だとしても、日蓮正宗から破門されて宗教法人としての資格を失い、さらに今回、刑事告訴されるに至った創価学会に対して、税制面での優遇措置を適用することは、明らかにおかしい。適用すべきでない法律(優遇税制)を適用している。適用違憲を構成し、違法といえます」
と語る。
こうなれば、創価学会がとるべき道は、自ずから明らかであろう。すなわち、自ら宗教法人としての公益性に欠けることを認め、速やかに解散して、これまでに免除されてきた莫大な税金を国庫に納めよ。
あるいは、少なくとも今回の刑事告訴の重さを考え、聖教新聞社を公益法人の中に組み入れることをやめ、一般法人として分離すると共に、これまで優遇されてきた聖教新聞の分の税金を国庫に納めよ。
以上が、宗教法人としての良識ある対応である、といえよう。
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慧妙紙 平成9年10月16号1面より
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