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https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20190806/pol/00m/010/003000c?inb=ys
文大統領は「盗っ人たけだけしい」と言ったのか プロ通訳と読み解いた
堀山明子・ソウル支局長
2019年8月7日
韓国の文在寅大統領
日本が輸出管理上の優遇対象国であるホワイト国(グループA)から韓国を除外する閣議決定をした8月2日、反発して日本を強く批判した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の表現が、日韓間の新たな火種になっている。
発端は「賊反荷杖(ジョクパン・ハジャン)=泥棒が罪もない人にむちをふるう」という四字熟語。日本語では直訳できない表現だ。
私は「開き直って」と意訳して報じたが、他の日本メディアは「盗っ人たけだけしい」という訳が圧倒的だった。第一線で活躍するプロの通訳ならどう訳すのか?話を聞きながら、語感と問題の背景を考えた。
文大統領は「決して願わなかったが、韓国政府は日本の不当な経済報復措置に対して相応の措置を断固として講じていく」と述べた後にこう続けた。
「いくら日本が経済強国であろうと、韓国経済に被害を及ぼそうとするなら、我々も対抗する方法がある。加害者の日本が賊反荷杖のように、むしろ大口をたたくような状況を決して座視しない」
NHKはじめテレビ各社、共同・時事の通信社は「盗っ人たけだけしい」と訳した。辞書にもそう書いてあるので、間違いとは言えない。
メディアにもよく登場する国際会議通訳者のAさんは、メディアから訳を聞かれ、「盗っ人呼ばわりは強すぎると違和感を持ったが、対案を提案できなかった」と話す。「定訳がないなら、辞書的表現に従わざるをえない」と、感情表現を翻訳する難しさを打ち明けた。
毎日新聞は、文喜相(ムン・ヒサン)韓国国会議長が今年2月、天皇陛下に歴史問題で謝罪する趣旨の発言をして撤回するか韓国人記者に聞かれて「賊反荷杖」と言った際、「盗っ人たけだけしい」と訳した共同通信の原稿を掲載した。
今回は私が記事にしたが、大統領の発言としての重みや、「加害者である日本が」と明確に言っている文脈を踏まえ、泥棒の比喩を直接出す必要はないと考えた。では韓国メディアの日本語版はどうだったろうか。
韓国メディアは「居直り」に軌道修正
聯合ニュースの日本語版では、「加害者の日本が居直り」という表現で、「盗っ人」は登場しなかった。聯合ニュースは文議長発言を「盗っ人たけだけしい」と訳したが、今回は変わった。
その理由について聯合ニュースの日本語チームに聞くと、スタッフの張智彦(チャン・チオン)さんは「大統領発言としての重み、日本で予想される影響を考え、不必要な摩擦を起こさないようにした。その結果、文議長の時とは違う訳語になった」と話す。実際、日本メディアの翻訳に対する日本の猛反発を見て、「軌道修正して正解だった。今後、大統領ではない要人であっても、居直りという翻訳を使うようにしようと担当者同士で確認した」という。
一方、韓国政府の政策放送である「KTV国民放送」は8月5日、文大統領の臨時閣議での冒頭発言を3日遅れで日本語字幕付きでユーチューブに流した。「賊反荷杖」のあとに()をつけて「過ちを犯した者がむしろ何の過ちもない人を責めること」と説明を補っている。
http://img.asyura2.com/x0/d9/22803.jpg(画像)
8月2日の臨時閣議で行った文在寅大統領の対日批判について、日本語字幕付きで伝える韓国政府政策放送の「KTV国民放送」=YouTube画面より
字幕は正しいかもしれないが、記事に使うには説明が長すぎる。盧泰愚(ノ・テウ)大統領から歴代大統領の共同記者会見や夕食会を同時通訳した経験を持ち、第一線で活躍する崔銀珠(チェ・ウンジュ)さんに、どう訳すか聞いてみた。
「通訳で重要なことは、辞書的な意味ではなく言葉の文脈、語感の強さ、品位をすべてくみ取って表現すること。私が訳すなら、『非のある者が大口をたたく』でしょうか。少なくとも『盗っ人』という表現は使いません」
語感の強さ、品位、ともに日韓でニュアンスが大きく違うからだという。
下品ではないケンカ言葉?
崔さんによると、「賊反荷杖」という韓国語は女性同士の口げんかでも日常的によく使う言葉だ。相手を強く批判する表現であるのは間違いないが、ニュアンスとしては「悪いのはあなたでしょ」程度の語感だという。四字熟語は教養の高い人が使うので、下品な表現ではない。
しかし日本では、佐藤正久副外相が2日のBSフジ番組で「『盗っ人たけだけしい』という品のない言葉まで使っているのは異常だ。日本に対して無礼だ」と反発。
これに対し、韓国青瓦台(大統領府)の尹道漢(ユン・ドハン)国民疎通首席秘書官が、自身のフェイスブックで「無礼だ」という言葉に反応して「次官級の関係者が相手国の首脳に、こうした下品な言葉を言うのが国際的規範に合致するか疑問」と不快感を示した。最近よく起きている日韓双方が「そっちこそ無礼だ」と非難し合う負のスパイラルだ。
「日本では、翻訳が独り歩きしている。韓国人の感覚では、教養高い四字熟語で表現したのに、日本語訳を通じて、やんちゃな大統領になった印象を受ける」
韓国閣僚や国会議員の同行通訳をした経験を持つ国際会議通訳者のBさんも、「盗っ人」という日本語訳への違和感をこう語る。そのうえで、「相手が目の前にいる通訳では、品位のない直接的な批判表現はあまり出てこないし、聞いた方にも誤解が生じにくい。今回は相手の顔が見えない場だから起きた摩擦ではないか」と話す。
コミュニケーション欠如で摩擦が起きた――。指摘を聞いて、一つ腑(ふ)に落ちた。今回の「賊反荷杖」の訳を巡るすれ違いは、本質的には翻訳の問題というよりも、日韓首脳会談も開けないほどの相互不信から生まれた事件ではないか。
翻訳より根深い認識ギャップ
実は翻訳問題よりも根深いのは、日韓首脳の歴史認識ギャップだ。
日本による一連の輸出規制強化策は、昨年10月に日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟の韓国最高裁判決に対する「経済報復」だと韓国側に受け止められている。そして文大統領にとって、そもそも徴用工問題は日本による植民地支配があったから起きたことだという認識がある。
文大統領は今年1月の新年記者会見で徴用工問題の対応を聞かれた際、「基本的には」と前置きしたうえで「韓国政府がつくった問題ではない。不幸な歴史がつくった」と述べた。
新年会見から一歩踏み込んで、不幸な歴史は「加害者である日本」がつくったと指摘したのが今回の発言だ。臨時閣議では、経済報復に絡み「二度と負けない」という発言もあったが、植民地支配を受けた歴史を念頭に置いたものだろう。
「賊反荷杖」という言葉を韓国大統領が発したとき、日韓間で論争があってもいい。ただ、論点は表現が「無礼」かどうかではない。
争点となるべきはあくまでも、徴用工問題や輸出規制問題をどこまで国際法上、外交上、本格的に扱うかでなければならない。日韓双方ともに相手との関係を土台から見直そうとするのなら、なおさら感情的な非難の応酬は終わりにしたい。相手の顔を見て、深い議論をしてほしい。
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