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テレ東の伝統と魂 情報は買うのではなく、自分の足で稼ぐ
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171203-00000006-pseven-ent
女性セブン2017年12月14日号
番組に共通する“テレ東イズム”とは(公式HPより)
近頃絶好調なのがテレビ東京だ。『家、ついて行ってイイですか?』、『YOUは何しに日本へ?』、『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』など、個性的な番組が好評で、今年6月には、週間平均視聴率(5月29日〜6月4日)でテレビ朝日、フジテレビを抜き、民放3位となり、開局以来初の快挙を達成した。
『池の水ぜんぶ抜く』『モヤモヤさまぁ〜ず2』を手掛けるプロデューサー・伊藤隆行さんは、テレ東の番組作りについて、こう語る。
「テレ東の番組はキラキラのセットにツヤツヤのタレントさんを呼ぶのではなく、そこらへんに転がっているガラクタを拾って、一生懸命磨くスタイル。ぼくは入社22年目ですが、そうした番組作りは昔から変わっていません。足と頭を使い、汗をかく」
他局では花形の女子アナもテレ東では特別扱いされない。元テレ東アナウンサーの亀井京子さんが振り返る。
「他局は情報番組やスポーツ、報道と分担しますが、テレ東の女子アナは人数が少ないので全部やります。ロケに出た時も技術さんやADさんのガンマイクなどの荷物持ちをお手伝いします。そもそもテレ東は女子アナにタレント要素よりもしっかりとニュースを伝えられることを求めています。だから『女子アナ』という言葉は禁止で『女性アナウンサー』と呼ぶんですよ」
テレ東社員で、自らのAD生活を綴った漫画『オンエアできない!〜女ADまふねこ(23才)、テレビ番組つくってます〜』(朝日新聞出版)を刊行した真船佳奈さんは、制作局に配属されて“テレ東魂”を叩きこまれたと振り返る。
「『自分で面白そうなところを見つけてこい』と野放しにされて、配属後1か月は番組で使えそうなネタを探すためずっと亀戸にいました。私がADの時は、情報を集めるリサーチャーはほとんど使わず、とにかく自分の足で調べました。情報を買うのではなく、自分の足で稼ぐのがテレ東の伝統です」
真船さんはカネがないゆえの対処法も学んだという。
「私たちは“制作費がなくても方法はある”と考えます。昔担当した音楽番組ではセットで使うお神輿が借りられなかったので、ホームセンターで木材を買って作りました。制作費は他局の30分の1くらいでした(笑い)」(真船さん)
低予算のため、他局のように「タレント重視」にならないこともテレ東の特徴だ。『家、ついて行ってイイですか?』のプロデューサー・高橋弘樹さんはこう言う。
「入社当初、大きな夢を描いて大物タレントに出演依頼したけど相手にされなかった。今でも企画会議では、広瀬すずさんの名前などが出ることは出る(笑い)。でも、実際に出演にこぎつけるのは難しい。だからぼくはタレントがメインでない番組作りをするしかないんです」
◆“悪魔の姉妹”の思い出
そんな高橋さんが思い返すのは、素人が参加して一芸を競う人気シリーズ『TVチャンピオン』の「つめ放題選手権」を担当したときのこと。
「そもそもそんな大会はこの世に存在しないから、選手もいない(笑い)。初回は出場者を見つけるため、東京や千葉でつめ放題をやっているスーパーがあると聞いて、そこに張り込み、気合の入った主婦を片っ端からスカウトしました。
店員から“悪魔の姉妹”と呼ばれる達人がいて、その姉妹にも出場してもらいました。にんじんつめ放題の決勝戦は大接戦でしたが、悪魔の姉妹の対戦相手の袋が破れ、その人は号泣した。それを見たら、ぼくも感動しちゃった。少しだけ特別なスキルを持つ一般人が涙を流すほど強い思いを込めてつめ放題する姿を見て、“タレントじゃなくても、こんなに面白くて心が動く番組を作れるんだ”って感動したんです」(高橋さん)
「素人番組」はテレ東に息づくDNAだ。3代目『ASAYAN』プロデューサーで現在は制作局専任局長の桜井卓也さんが言う。
「素人さんを使うコツは、“こうすればこうなる”と計算しすぎないこと。以前、普段あまり家族旅行をしていない大家族に番組から露天風呂旅行をプレゼントした時、制作側は子供たちがバシャバシャ泳ぐと想定していたら、だだっ広い風呂の端っこで家族が固まっていました。自宅の風呂と同じような入り方しかできなかったわけです。その絵が面白くて、“ああ、こういうことか”と考えさせられました」
前出の伊藤さんは企画を考える際、まず新聞のラジオテレビ欄を参照するという。
「あれは“今のテレビ”を映し出す鏡。あそこにない番組を作れば、結果として独自性が出る。ただ、他局にないものを探すのはテレ東社員として当たり前で、ぼくはテレ東にない番組を探し続けています。かつてテレ東には、お笑い番組がなかったので作っちゃった。それが今の『やりすぎ都市伝説』や『モヤさま』です。『池の水ぜんぶ抜く』も、上層部から『水を抜くだけなんてふざけている』と猛反対されたけど、全力で議論して企画を通した。大コケする可能性もあったけど、その時は全力で土下座しようと思いました(笑い)」(伊藤さん)
伊藤さんの読みは的中し、前述の通り、『池の水ぜんぶ抜く』はテレ東の新たなキラー・コンテンツとなった。演出家でタレントのテリー伊藤さんもこう絶賛する。
「池の水を抜くって、子供からおじいさんまで、誰でもわかる。ワンコンセプトだから“感性”がいらない。だから、みんなで楽しく見られる。こういう番組を次から次に考え出すのはすごいよね」
今回、取材した中堅・ベテラン社員は、自局の躍進について「失敗が許される社風が大きい」と口々に言う。
「ぼくは『歌って覚えまショー』というゴールデン番組の視聴率が3%になるなど、ひどい失敗を何度もしています。他局なら異動ものだけど、ウチは『お前、本当にわかってねえな』と怒られるだけで、それ以上のおとがめはない。面白そうならまずやってみて、失敗したらまたやり直せばいいという、“ベンチャー企業”に近い社風があります」(高橋さん)
入社6年目と、まだ若手の部類に入る真船さんも風通しのよさを感じている。
「音楽番組のディレクターになりたての頃、『全裸のバイきんぐの小峠さんが股間をギターで隠して歌う演出がしたい』と提案した時はさすがに怒鳴られると思ったけど、先輩は真剣に聞いてくれてオンエアされました。普通の会社なら『バカじゃないの』で終わるかもしれないアイディアでも、この会社はやらせてもらえるんです」(真船さん)
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