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フジテレビ「視聴率低迷」に株主の不満が炸裂 浮上のきっかけを掴むことはできるのか
田邉 佳介 : 東洋経済 記者
http://toyokeizai.net/articles/-/124918
議長や答弁する取締役に対して、最後まで怒号とやじが飛び続ける。株主の質問にも罵声が飛ぶ。何とも殺伐とした3時間35分だった。
6月28日、フジ・メディア・ホールディングスはホテル グランパシフィックLE DAIBA(東京・お台場)で第75回株主総会を開催した。最終的に、会社側が提案した議案である「剰余金の処分の件」「取締役17名選任の件」は承認され、株主側の提案はすべて否決された。3時間以上に渡って議論が続き、お世辞にも和やかとは言えない総会となった。
■「ドラマにときめきがない」?
株主提案の議案は「総会で社員やOBの株主が質問する際に、その旨を明かすこと」「独立性のある取締役が存在しないため、山口三尊氏(3万株を保有する個人投資家)を取締役候補に加えること」「ROE(株主資本利益率)が5%未満の場合、25年以上在任する役員について、選任の理由を説明すること」の3つだった。
質疑応答では、視聴率の苦戦が続くフジテレビジョン(フジテレビ)について、多くの意見や質問が寄せられた。
「テロップが多すぎる、若い人にはいいのかもしれないが、笑い声がうるさい」「ドラマに往年のようなときめきがない」「嫌いなテレビ局1位に選ばれた。2011年に起こった、韓流偏向の抗議デモに対しても『嫌なら見るな』と放置した」「バブルを経験した世代ばかりで、若い人に権限を委譲できていないのが視聴率低迷の要因だ」などと辛辣なものばかりだった。
これに対し、フジテレビの亀山千広社長は、現状を「忸怩たる思い」とした上で、「まずはドラマで話題を呼び、バラエティで視聴習慣を根付かせ、最後は報道番組で信頼を得る。そのためには何としてでもヒットドラマを生まなくてはならない。7月にスタートするドラマは30代のプロデューサーを中心に制作している」などと説明していた。
ちなみに、「嫌なら見るな」とされる方針に関して、稲木甲二取締役は「フジテレビからそのように打ち出したことは一度もない」と明確に否定している。
また、フジテレビのトップに就任して28年になる日枝久会長に対する質問も多く寄せられた。「名誉会長としてグループを見守ったほうがいい」「業績や株価が低迷しているのに、なぜいつまでもトップを務めているのか」「日枝会長が怖くて、ほかの役員は何も言えないのではないか」といったものだ。
■「会長は口出ししていない」
こうした問いに対し、豊田皓(とよだ・こう)副会長は日枝会長のこれまでの実績を強調した。
「ライブドアショックやリーマンショックがあったが、日枝会長の判断で乗り越えてきた。ビーエスフジやサンケイビルを子会社化し、昨年にはグランビスタホテル&リゾートを買収するなどで、バランスのとれたポートフォリオを構築できた。業績もリーマンショック時から大幅に回復している。日枝会長のリーダシップのもとでやってきた」と絶賛。また、フジテレビに関して「亀山社長が陣頭指揮を執っている。現場に任せているので、会長は口出しはしていない」と語った。
日枝会長は例年、議長として議事進行に務めており、関係する質問の答弁もすべて嘉納修治社長以下の担当取締役がこなしたが、「われわれ株主はどうしても日枝会長の生の声を聞きたいんです。お願いします」といった株主の声にうなずく場面もみられた。
そのほか、株主優待についても、再三、改善を求める意見が上がっていた。現在、100株以上(同社の売買単位も100株)を保有する株主にオリジナル手帳を送付しているが、「手帳は好みがある」「毎年捨てている」などと評判はいまいち。代わりにディノスの通販の割引や新番組の説明会や試写会、番組観覧などを提案する声もあった。
議事進行中、株主から修正動議は計4回ほど提案された。「配当を1株20円ではなく30円にする」「取締役17名を全員名簿から削除する」「取締役候補に元フジテレビアナウンサーの平井理央、ベッキー、ゲスの極み乙女のボーカルである川谷絵音を加え、炎上商法をとるべき」「議長の不信任動議」といったものだが、いずれも否決されている。
一部の株主から過激な発言が繰り返され、長時間に渡った総会だが、それを差し引いて考慮しても不満を持つ株主は多いように感じられた。
■フジテレビの改善しか、道はない
フジメディアHD全体で見ると、2015年度の業績は売上高が前期比0.4%減の6405億円、営業利益は同4.8%減の243億円とわずかな減益にとどまっている。ただ、株主は中核のフジテレビが営業益でほぼ半減の55億円に沈んだ事実、そして、視聴率に底入れの兆しが見えないことに苛立ちを募らせているようだ。
実際、フジメディアHDの株価は2013年に2度、2300円台の高値をつけたが、それ以降は長期下落トレンドとなり、足元は1100円前後の推移となっている。中核であるフジテレビの視聴率が改善しないため、今後の広告収入も減少する、とみられていることが大きいだろう。
今年こそはと、毎年テコ入れに向けた決意を語ってきたフジテレビ。それでも、まだ結果は出ていない。ドラマのヒット作を生み出し、浮上のきっかけを見いだせなければ、来年の株主総会も荒れ模様が続きそうだ。
[東洋経済 2016/6/29]
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