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朝日新聞デジタル 2019年6月13日16時45分
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地下鉄ホームでPM2・5の濃度を調べる奥田知明准教授の研究チーム=2018年7月、横浜市、奥田さん提供
日本のある地下鉄構内のPM2・5(微小粒子状物質)濃度は、地上の5倍――。慶応大の研究チームがこんな研究結果をまとめた。地下空間のPM2・5濃度の規制はなく、実態の把握も十分とはいえない。5月にあった会合で、研究チームは、地下鉄駅の空気環境を改善するため、関係機関が連携して対応することが必要だと訴えた。
慶応大理工学部の奥田知明准教授のチームは昨年7月、横浜市営地下鉄の駅ホームに午前5時から午後8時までPM2・5の測定器を設置し、空気中の濃度を調べた。
その結果、午前9〜10時の1立方メートルあたりの平均濃度は約120マイクログラム。地上の同じ時刻の約5倍とピークに達した。また、全時間を通じての平均濃度も約70マイクログラムで、地上の4倍ほどになった。
なぜ、地下鉄でPM2・5がこんなに多いのか。
奥田さんらが粒子の成分を調べると、地上で観測されるPM2・5と比べて鉄や銅、ステンレスに含まれるクロムなど金属系の数値が非常に高かった。また、列車の発着前後も濃度が上がり続ける傾向があった。粒子の動きをみると、走行中の列車の後方で激しく乱れた気流に巻き上げられていた。
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奥田さんは「ブレーキ時の車輪とレールとの摩擦で鉄分が削られるなどして、空気中に巻き上げられるのでないか」と指摘。ラッシュ時は運行本数が多いうえ、人がたくさん乗り、強くブレーキをかけるため、濃度も高くなり、その後、しばらく漂っているのではないかと推察する。
■「健康に影響を及ぼすレベルではない」ものの……
規制はどうなっているのか。
環境省は大気中の濃度の1日平均値について「1立方メートルあたり35マイクログラム」とする基準値を設定している。ただ、屋内である地下鉄の駅は対象外だ。厚生労働省も建物の衛生管理基準で空気中の浮遊粉じんの量を「150マイクログラム以下」と規定しているが、鉄道施設には適用されない。
事業者による実態把握は進んでいない。横浜市交通局は「濃度測定はしていないが、常時換気を行ったり定期的に清掃したりして、空間の清浄化に取り組んでいる」。大阪メトロ広報課も「国の基準がないので、測定していない」と言う。
一方、東京メトロは昨年12月に初めて一部の駅で予備調査を実施し、どんな測定方法や機器が有効かを調べた。「結果を精査し、今後の態勢を検討している」(広報部)という。
奥田さんによると、十数年前から海外でも地下鉄のPM2・5濃度が高いことが知られており、対策が取られている。2015年に発表された論文によると、ロンドンの地下鉄駅では過去に1立方メートルあたり最大480マイクログラム、スペインのバルセロナで同186マイクログラムが計測された。EUは14〜18年、バルセロナで約1億円をかけて汚染の原因を調査し、試行的に換気方法を変えるといった措置をとった。
奥田さんは、日本では地下鉄構内でのPM2・5について、責任を持つ行政機関が定まっていないことが問題だと指摘する。「国内の地下鉄での濃度は、ただちに健康に影響を及ぼすレベルではないが、日本の対応は遅れている。国として対応機関を決めて、早急に原因調査と対策に取り組むべきだ」と訴える。(桑原紀彦)
https://digital.asahi.com/articles/ASM5Y6JRGM5YULBJ016.html?rm=333
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