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驚きの結論!普通の人は安心して白い炭水化物を食べていい 普通の人は無理に白米よりも玄米を選ぶ必要はなかった
近藤 慎太郎
医師兼マンガ家
2019年1月23日
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前回(「『白より茶色の食べ物を選べ』は本当か?」)に続いて、炭水化物の「色」について解説していきます。
果たして、本当に白い炭水化物よりも、茶色い炭水化物を食べた方が健康にいいのでしょうか。いくつか臨床研究の結果をご紹介します。
まず、最もストレートなメッセージを持った報告として、「茶色い炭水化物(全粒穀物)を摂っているグループの方が、それを摂っていないグループよりも全死亡率が17%低かった」というものがあります。
そして死因の中でも、心血管疾患の死亡率は25%も低く、がんの死亡率も6%低かったと報告されています(1)。
この報告は過去に発表された20編の臨床研究を「メタアナリシス」という特殊な統計学的手法を用いて統合した研究です。
20編を合わせたものになるので、この研究の観察対象となった人は約228万人と膨大なものでした。
一般的にメタアナリシスは対象人数が多く、エビデンスとしてレベルは高くなります。ともすれば、「メタアナリシスでこれだけはっきりした死亡率減少効果が出ていれば間違いないな」と思ってしまいますよね。
けれど、ここにはいくつかの大事な注意点があります。
まず「全粒穀物」の定義が各研究によってまちまちなのです。どんな穀物を摂っているのか、三食すべて茶色なのか、たまには白色の炭水化物も食べているのか……。そもそも対象の人が申告した内容を額面通り受け取っていいのかも微妙です。
定義があいまいで、それぞれの研究で統一されていないものごとを、メタアナリシスを使って力づくでまとめ上げた、という印象なのです。
例えば、ある抗がん剤の効果が知りたくて、薬を〇r使用したら、生存期間が△日伸びて、副作用で白血球が□%減った、などといった客観的な指標がきちんとある研究であれば、メタアナリシスで複数を統合することで、エビデンスレベルは上がるでしょう。
しかし食事のような「自由度と日々のバラツキ」が多い事柄をメタアナリシスで正確に扱うことができるのかは、はなはだ疑問です。
さらに一番問題なのは、そもそも「茶色い炭水化物を摂っている人」は、「普通の人に比べて健康に対する意識が高い人に違いない」ということです。
つまり「茶色い炭水化物」だけでなく、野菜も魚も普通の人より多く食べていて、ジャンクフードは極力避け、適度な運動も欠かさない。そんな人である可能性が高いのです。
であれば、平均に比べて死亡率が低かったとしても、それを「茶色い炭水化物だけの手柄」にすることはできないはずです。
では、「炭水化物の色」「その他の食事」「運動」などといった様々な要素が健康に貢献している「度合い」にも目を配った臨床研究はないでしょうか。
実は一つ、興味深いものがありました。ご紹介しましょう。
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え?茶色でも白でも、あまり違いはないの?
それは、約12万人のアメリカ人を12〜20年といった長期にわたって経過観察し、それぞれの生活習慣が体重の変化にどう影響を与えかを検討しています(2)。
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その結果、体重が増えた人の生活習慣で多いのが、フライドポテト(1.52s)、ポテトチップス(0.77s)、ジャガイモ(0.58s)、果糖入り飲料水(0.45s)でした。
一方、体重が減った人の生活習慣で多いのが、運動(マイナス0.80s)、ヨーグルト(マイナス0.37s)、ナッツ(マイナス0.26s)でした。
なかなか興味深い結果です。
ジャガイモのインパクトの大きさは薄々分かってはいましたが、1位から3位を独占してています。果糖入り飲料水もなかなかのものですね。
一方、ヨーグルトがしっかりマイナスに働くことや、野菜がほとんどマイナスに影響していないこと(マイナス0.10kg)は多少意外に感じられます。
では炭水化物の「色」に関してはどうでしょうか。
精製されていない穀物は0.17kgのマイナス、精製された穀物は0.18kgのプラスをもたらしただけです。合わせて0.35kgの差です。
一応、はっきりした結果は出ているものの、この差がそんなに許されないものだとは、私には思えません。なぜなら、これよりもっと大きな差をもたらす因子が、ほかにたくさんあるからです。
この論文が報告しているのは、「白い炭水化物が体に悪い」ということではなく、むしろ「炭水化物の色よりも、もっと影響力の強い因子がありますよ」ということ、もっと言えば「ジャガイモを控えてしっかり運動しなさい」ということでしょう。
炭水化物の「色」についてもし本気で結論を出したかったら、やはりランダム化比較試験をするしかありません。つまり数千人、数万人単位で、「白い炭水化物だけを食べるグループ」と「茶色い炭水化物を多く食べるグループ」にランダムに分けて、10年以上かけて経過観察する必要があるでしょう。
もちろん、この臨床研究を高い精度で実行できるとは全く思えませんが……。
過去の記事「『健診には意味がない』のは果たして本当か」でも解説しましたが、確かにエビデンスは重要だけれど、それを確立するのに「向いている事柄」と「向いていない事柄」があります。
そして食事というのは、自由度の高さと日々のバラツキから、残念ながら「あまり向いていない事柄」なのです。
食事に関するエビデンスについては、最低限の目配りはしていきながらも、同時にその限界についても認識する必要があるのです。
では臨床研究は一旦置いておいて、現実の疫学的なデータはどうなっているのでしょうか。
コメの消費量が多い地域や、うどんで有名な香川県は、実際に糖尿病患者が多いのでしょうか?こちらも、一応調べてみました。
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無理に玄米を選ばなくても大丈夫
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理屈から考えれば、確かに白い炭水化物よりも茶色の炭水化物の方が健康にはいいのでしょうが、その差はわずか。そのほかの食材から食物繊維を摂れば、十分カバーできるでしょう。
そして炭水化物の摂取量と糖尿病の死亡率に、そこまで明瞭な因果関係はなさそうです。
以上から、血糖値のコントロールに難渋している人は別として、一般の人に対して「白い炭水化物をとってはいけない」とは言えないでしょう。
白い炭水化物が大好きなみなさんは、ほっと安心したのではないでしょうか。
■参考文献
• (1)Benisi-Kohansal S et al. Whole-Grain Intake and Mortality from All Causes, Cardiovascular Disease, and Cancer: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies. Adv Nutr. 2016 15;7:1052-1065.
• (2)Mozaffarian D et al. Changes in diet and lifestyle and long-term weight gain in women and men. N Engl J Med. 2011;364:2392.
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00126/00002
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