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2019年1月20日 渡辺尚彦 :医師
冬に突然死を招く4つの「危険な生活習慣」
冬の突然死を招く習慣
冬の突然死は、普段の何気ない行動が原因になりかねません(写真はイメージです) Photo:PIXTA
いよいよ冬本番。1日の寒暖差が大きくなる季節は、何気ない普段の生活の中に、血圧の乱高下から突然死を招く危険因子が潜んでいるため、要注意だ。では、具体的には冬場のどのような行動に気をつければいいのだろうか。30年以上前から携帯型血圧計を装着し、24時間血圧自己測定の世界記録保持者でもある、聖光ヶ丘病院顧問の渡辺尚彦医師が解説する。
「死のスイッチ」を入れる行動は
普段の生活に潜んでいる
渡辺尚彦医師
渡辺尚彦(わたなべ・よしひこ)
聖光ヶ丘病院顧問、医学博士。
1952年千葉県生まれ。1987年8月から連続携帯型血圧計を装着し、365日24時間血圧を測定している。高血圧改善のためのポイントを「渡辺式血圧を低下10カ条」にまとめ、「渡辺式血圧を低下音頭」を作詞作曲。「ミスター血圧」とも呼ばれ、雑誌、テレビなどで活躍。『血圧を下げる最強の方法』など、著書多数。
冬になり寒くなると、血管が収縮して血圧が上がりやすくなります。何気ない生活の中でも、例えば朝ぽかぽかの布団から出て寒いトイレに入る時や、帰宅直後の寒い部屋でコートを脱いだり、寒い部屋のまま着替えたりする時など、寒暖差を急に感じる行為には注意が必要です。
高血圧は突然死を招く危険な因子です。減塩など食生活の改善も大切ですが、「死のスイッチ」を入れるのは、実は、普段の行動の中にあります。
私は、30年以上24時間365日血圧計を装着し、自分の血圧を計測し続け、自身と患者のデータから、血圧の変動と日常生活の行動との関連について分析してきました。24時間の血圧推移と、起床から睡眠時まで全ての行動、つまり、仕事、電車や車での移動、睡眠、散歩、運動、トイレ、食事、入浴等との関連が特定しています。
これらの調査の中で、死を招く、特に危険な血圧の乱高下を招いた生活習慣は、4つあります。
危険な生活習慣(1)
熱い風呂に入る
実は、年間約1万5000人以上が風呂で亡くなっています。風呂は癒やしの場であると同時にリスクの高い場所です。その要因が「高温」「長湯」「温度差」という3つのリスクです。
熱い風呂は、血圧を急激に上げ、脳や心臓の障害を起こしやすくします。熱い風呂の長湯は、血流を増加させて、のぼせやすくなります。のぼせると、めまいや失神に至り、溺れれたり、転んだりする事故につながり大変危険です。
温度差は「ヒートショック」ともいわれますが、寒い脱衣所から熱い浴槽につかる時、または、その逆の時の大きな温度差が身体を襲います。急激な温度の変化は交感神経を強く刺激するので、血圧が一気に上がり、脳や心臓の障害を招きやすくなります。
おすすめは39〜40℃くらいのぬるめの入浴。長湯をするなら、あまり体に水圧のかからない「半身浴」がいいでしょう。
寒い時期には特に室内と浴室と脱衣所の温度差がヒートショックを招き危険です。脱衣所にヒーターを置いて部屋を暖めたり、浴室は少し前からシャワーを出して室内を暖めておいたりするのがいいでしょう。
また、浴槽に入る前にはかけ湯を欠かさないでください。ポイントは、いきなり肩からかけるのではなく、足元から少しずつ、だんだん体の上の方にかけていくこと。浴槽に入る際も、いきなりザブンとではなく、ゆっくり足元から入ることが大切です。こうすることで、血圧の急激な上昇を和らげることができます。
浴槽から出る時も、急に立ち上がらず、ゆっくりと体を起こしましょう。そして、風呂から上がったら、体を冷やさないようすぐに服を身に着けるように。そうすることにとって血圧の急激な変動を回避できます。
また、入浴に伴う脳梗塞を防ぐためには、「入浴の前後に必ずコップ1杯の水を飲む」ことがおすすめ。これで、血管のつまりによる心臓や脳疾患の発症を防ぐことができます。
危険な生活習慣(2)
サウナに入る
サウナは入り方を間違えると自殺行為になります。
サウナはたいてい水風呂と一緒になっていますが、サウナから出て水風呂に直行、ザブンと水風呂に入り、またサウナに入る――を繰り返していませんか?これはヒートショック状態を自ら作り出しているのと同じで、非常に危険です。
以前、私が真冬のアメリカのリゾートホテルに行った時、別棟にあるサウナに徒歩で行き、20〜30分と長めに入ったところ、血圧が150mmHgを優に超えていたことがありました。心拍数も150をオーバーしており、汗をかいて激しい運動をしている時と同じ数値になり、非常に驚きました。つまり、サウナは激しいスポーツと同程度の負担を体に強いるものなので要注意です。
サウナと血圧の変動との関係を調査し続けた結論として、私がおすすめするサウナの入り方は、60℃のサウナに最大15分を限度とし、水風呂は厳禁。入る前後にコップ1杯以上の水を飲むことです。
血管がもろくなっている中高年や、糖尿病、高血圧など持病を持つ方にとっては、サウナと水風呂は死に直結する行為なので、特に注意が必要です。
危険な生活習慣(3)
尿意、便意を我慢する
排便と血圧の変化も密接に関わっていることが、私自身の血圧データと患者さんのデータから明らかになっています。
排便の際は、いきむので血圧が上昇します。つまり、便秘気味の人は血圧が上がりがちになるのです。下痢の場合も、おなかに痛みが生じることにより、体に負担がかかり、血圧が上がるので、こちらも好ましくはありません。便通はスムーズであることが一番です。
また、排尿を我慢しても血圧が上がります。
これも私自身の経験ですが、ビールを飲んで帰宅する際、電車の中で尿意を我慢していました。駅のトイレで、排尿前後の血圧を調べたところ、排尿前175mmHg、排尿後12mmHg5となり、尿意を我慢しただけで、血圧が50mmHgも上がっていました。
実は、排尿により急激に血圧が下がると、時に意識がなくなることがあり、これを医学用語で「排尿失神」と呼びます。倒れてケガをすることもあるので要注意です。排便を我慢しても排尿同様血圧が上がるので、こちらも気をつけましょう。
ちなみに、「立ち小便」も血圧を上げる要因になります。立位が交感神経を緊張させ、さらに排尿の際に腹圧がかかるので、血圧が急上昇します。洋式トイレで座って排尿すると、立ってする時に比べて、血圧の上昇が幾分和らぐので、自宅では座ってすることがおすすめです。その際は、便座は暖かくしておくこと。冬場は冷えた便座におしりが触れるだけでも血圧が上がります。自宅のトイレが暖房便座であれば、常にスイッチを入れておきましょう。暖房タイプでなければ、便座カバーをつけるだけでも、血圧の上昇をかなり軽減できます。
危険な生活習慣(4)
イライラする
血圧を下げる最強の方法
渡辺医師の著書『血圧を下げる最強の方法』
年末はいろいろと忙しい季節。また年始では、スポーツ観戦で熱くなることもあるでしょう。ストレスも高血圧の要因のひとつです。
これも私自身の体験ですが、以前、患者さんのカルテに張り付けてあったデータが別人のものだった、という大きなミスが見つかり、生まれて初めて、「どうしてこんないい加減なことをするんだ!」と周囲に怒りをぶちまけてしまいました。すると、その時の血圧は、200mmHg以上に跳ね上がっていたのです。
もちろん、時々起きる程度であれば問題はないのですが、それが頻繁に起きたり、血圧が高いまま下がらなくなったりすると、さまざまなリスクも高くなります。
スポーツ観戦も同様です。たまに楽しむ程度なら問題はありませんが、熱中すると血圧が上がってしまいます。ひいきのチームがある人は、応援が過度にならないようにセルフコントロールをしてください。あまりに熱中すると、血圧が上がって脳卒中を起こしかねないので注意が必要です。
高血圧が気になるが、食事の減塩は難しいというのであれば、まずこういった生活習慣に気をつけることから始めてみてはいかがでしょうか。
(医師 渡辺尚彦)
https://diamond.jp/articles/-/191332
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