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【第4回】 2018年10月10日 西沢邦浩 :健康医療ジャーナリスト
コーヒーは1日何杯飲むのが死亡リスク低下に効果的か
Photo:PIXTA
『日本人のための科学的に正しい食事術』を上梓した、健康医療ジャーナリストの西沢邦浩氏が、最新エビデンスに基づき、日本人のあるべき食事を紹介する。今回のテーマは「コーヒー」。数多くの研究結果によって、毎日適量を飲むことで、がんや糖尿病をはじめとした各種の疾患リスクが低下するというコーヒーの素晴らしい効果が明らかになっている。
コーヒーは日本人にとって
最大のポリフェノール摂取源!?
コーヒーは、日本語では「珈琲」という漢字が当てられ、明治・大正期から親しまれてきた飲料だが、私たち日本人にとって、野菜や果物、緑茶などを上回ってトップに位置する、抗酸化物質のポリフェノール源だというデータがある。
21〜56歳までの日本人109人の1週間分の食事内容を分析した研究によると、ポリフェノールの約半分がコーヒー由来で47%、2位の緑茶が16.4%、野菜とジャガイモを合わせて4%、果物は1.4%の寄与率にとどまっていた(*1)。
*1 J Nutr Sci. 2014 Oct 22;3:e48.
一方、レギュラーからインスタント、缶も含めると、日本人は週に1人当たり平均11杯強もコーヒーを飲んでいるという(*2)。もしかしたら、先進国の中では野菜や果物の摂取量が多いとはいえない日本人ならではの現象ではないかと疑ったのだが、必ずしもそういうわけでもなさそうなのだ。
*2 「コーヒーの需要動向に関する基本調査」(全日本コーヒー協会)2016年
4,942人のフランス人(45〜60歳)の食事記録を分析したところ、総ポリフェノール摂取量中、やはり寄与率1位は日本と同様コーヒーで44%、2位の紅茶が9%という結果になった(*3)。
*3 Am J Clin Nutr. 2011 Jun;93(6):1220-8.
洋の東西を問わず、毎日何杯も愛飲する人が多いコーヒーを筆頭とする飲料はポリフェノールの摂取源としてかなり大きな比重を占めるようだ。
1日4杯前後のコーヒーで
各種の疾患リスクが低下
本コラム著者・西沢邦浩氏の最新刊
コーヒーは世界中で飲まれているだけに、健康や病気予防との関係を調べた数え切れないほどの研究がある。
そのなかから、アンブレラレビューという、“いくつもの研究を統合分析した論文(総合解折研究)”ばかりを集めてさらに真実度を突き詰めた“論文の親方”のような研究を見てみよう。
一つめは、59の統合解析研究を集約したアンブレラレビュー。
コーヒーを飲むことで、乳がん、子宮内膜がん、大腸がん、前立腺がんといったがん、糖尿病、心血管疾患、パーキンソン病などのリスクが低下し、各種死因を総合した死亡リスクも減るとしている。1日4〜5杯のコーヒーを飲んだときに、これら疾患のリスクが最も低くなる傾向が強かった。
もう一つは、218もの統合解析研究のアンブレラレビュー。
こちらの研究では1日3〜4杯で各種疾患のリスクが最も低下し、全体の死亡リスクは17%減り、がんの発症リスクは18%減るとしている。心血管疾患、前立腺がん、肝臓がん、子宮内膜がん、皮膚がんなどのがん、メタボリックシンドローム、糖尿病、肝硬変、うつ、アルツハイマーなど、前のアンブレラレビュー同様、リスクを下げる可能性がある疾患がいくつも挙げられている。
ただし、コーヒーを飲むことによるリスクとして、同レビューは早産・流産および女性の骨折リスクを挙げている。しかし、リスク要因になるのはカフェインで(つまりデカフェなら問題なさそう)、妊娠中は体からカフェインが排泄されるのにかかる時間が約2倍になるので気を付けること、骨に関しては1日4杯(カフェイン量で400mg)程度までは問題ないだろう、としている(*4)。
*4 Annu Rev Nutr. 2017 Aug 21;37:131-156. BMJ 2017 Nov 22;359:j5024.
カフェイン摂取については、大人で1日400mg以内、妊婦では1日300mg以内、子供では体重1kg当たり1日2.5mg/kg以内に抑えれば害はなさそうとする別の統合解析もある(*5)。
*5 Food Chem Toxicol. 2017 Nov;109(Pt 1):585-648.
これらから、健康な大人なら1日4〜5杯まではカフェインの害が出る可能性は低く、健康に役立ってくれるといえそうだ。ただし、睡眠の妨げになる場合もあるのでさすがに就寝前に飲むのはやめておいたほうがいいだろう。
日本人のデータでも
1日3〜4杯で死亡リスクが下がる
ここで日本人のケースも見ておこう。
日本人とコーヒーに関しても研究は多い。
なかでも、9万人を平均18.7年間追跡してコーヒー摂取と死亡リスクの関係を調べた研究では、コーヒーを1日3〜4杯飲む人の死亡リスクは、全く飲まない人に比べ24%低かった。1日1〜2杯、5杯以上ではいずれも15%減少していたので、やはり日本人にもコーヒーがよいのは間違いなさそうだ。
主要な疾患別のリスクは下図の通り。がんでは明らかな減少が認められなかったが、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクは1日3〜4杯をピークに有意に下がった。
がんに関しても、別の解析では1日3杯以上飲むと脳腫瘍リスクや女性の結腸がんリスクが下がるといった結果が出ている(*6)。
*6 Am J Clin Nutr. 2015 May;101(5):1029-37. Int J Cancer. 2016 Dec 15;139(12):2714-2721. Int J Cancer. 2018 Jul 15;143(2):307-316.
まとめると、「1日約3〜5杯コーヒーを飲むことで、いろいろな病気のリスクが下がる。このくらいの量まではカフェインもあまり問題がない。でも、気になる人は、ほぼ同じような効果が得られるのでデカフェコーヒーを」といったところだろうか。
最後に、最近発表された米オハイオ州立大などによる、ユニークな研究を紹介しておこう。
共同作業前にコーヒーを飲むことで、個々の仕事への貢献度が高まり、チームのパフォーマンスが高まったという内容だ。ただし、デカフェよりカフェイン入りで効果が高かったということなので、多分にカフェインの影響ということらしいが(*7)。
とまれ、やはりいい人間関係づくりも、まずは1杯のコーヒーと歓談から。
世界で愛される理由も、わかろうというものだ。
*7 J Psychopharmacol. 2018 Mar 1:269881118760665.
https://diamond.jp/articles/-/181414
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