http://www.asyura2.com/16/health18/msg/481.html
Tweet |
“命のロウソク”DNAのテロメアを伸ばすには?
おとなのカラダゼミナール
テロメアが短いと動脈硬化、がんになりやすいことが判明!
2017年4月5日(水)
伊藤和弘
聞きたかったけど、聞けなかった…。知ってるようで、知らなかった…。日常的な生活シーンにある「カラダの反応・仕組み」に関する謎について、真面目にかつ楽しく解説する連載コラム。酒席のうんちくネタに使うもよし、子どもからの素朴な質問に備えるもよし。人生の極上の“からだ知恵録”をお届けしよう。
最近耳にする機会が多い気がする「テロメア」という言葉。これは細胞の染色体の末端にある特殊な構造物で、その長さを見ると人の寿命が分かるといわれているが、本当だろうか?
テロメアの本来の役割は、染色体を保護し、染色体同士がくっついたりするのを防ぐこと。細胞が分裂するたびにテロメアは短くなっていき、ある程度まで短くなると細胞はもう分裂できなくなる。そのため、「老化の回数券」と呼ばれることもある。実際、赤ん坊のテロメアは長く、老人のテロメアは短いという。
細胞の染色体の末端部分にある、遺伝情報が入っていない特殊な構造物がテロメアだ。(近藤准教授の話を基に編集部で作成)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/091500068/040300013/1s.jpg
ではテロメアというのは、落語の「死神」に出てくる「命のロウソク」みたいなものなのだろうか? 老化のメカニズムに詳しく、日本基礎老化学会理事も務める京都大学医学部附属病院(京都市左京区)地域ネットワーク医療部准教授の近藤祥司さんに聞いた。
テロメアが短くなると細胞は分裂しなくなる
「そもそも染色体とは、ゲノムDNAにヒストンなどのたんぱく質がくっついて小さく折りたたまれたもの。DNAには4種類の塩基に遺伝情報が書き込まれています」と近藤さんは話し始めた。
4種類の塩基とは、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)だ。DNAの上にはこの4種類の塩基があり、その並び方によって、すべての遺伝情報が伝えられる。
哺乳類の場合、DNAの末端部分は「TTAGGG」という6個の塩基のセットがいくつも続く形になっている。この6塩基のリピート部分がテロメアだ。「ここには遺伝情報が入っていない。つまり、なくなっても大丈夫なようにできているんです」と近藤さんは説明する。
細胞が分裂するときDNAがコピーされるが、完全にコピーすることはできず、末端の部分だけ欠けてしまうという。この欠ける部分がテロメアだ。染色体として見ると、細胞分裂する度に末端部分のテロメアが欠けて、短くなっていくことになる。
「テロメアが一定以上に短くなると、染色体同士がくっついたり、染色体がちぎれたりすることで、異常な染色体ができてしまう。そのため、あるレベルまでテロメアが短くなると細胞は分裂しなくなります」(近藤さん)
テロメアが短いと動脈硬化が進んでいる
テロメアの長さは血液中の白血球やリンパ球で調べることができる。先に触れたように、一般に赤ん坊より老人のほうがテロメアは短い。ある程度は年齢に比例するが、個人差が大きく、年齢が同じでもテロメアの長さが同じとは限らないという。
では、テロメアを見ると、その人があと何年生きるか分かるのだろうか?
「血管年齢のように、テロメア年齢という表現はできるかもしれません。ただし、細胞の老化はテロメアの長さだけでは決まらない。活性酸素による酸化ストレスなど、他の要因もありますから」と近藤さんは苦笑する。
つまり、テロメアの長さは「細胞の老化度」を見るひとつの尺度にはなるが、それだけで「あと何年生きられます」などと単純に寿命を判断することはできないわけだ。
とはいえ、テロメアが短いということは、それだけ細胞が老化しているとはいえるだろう。実際、「テロメアが短い人は動脈硬化が進んでいることが多い、といった報告はいくつもあります」と近藤さん。テロメアが短い人はがんになりやすい(*1)、テロメアが短いと心疾患と脳血管疾患のリスクが高くなる(*2)といったことも確認されている。
単純に数値化はできないとしても、細胞の老化度を示すテロメアの長さは、その人の寿命とも無関係ではなさそうだ。
その気になればテロメアは“若返る”?
テロメアはすり減っていく一方ではない。「最近の研究から、運動などの生活習慣によってテロメアが伸びることが分かってきました」と近藤さんは続ける。
「テロメラーゼというテロメアを伸ばす酵素があります。これがあれば細胞が分裂してもテロメアは欠けない。生活習慣を改善することでテロメラーゼが活性化され、テロメア寿命を延ばすことができるんです」(近藤さん)
ちなみに精子や卵子を作る生殖細胞やiPS細胞(人工多能性幹細胞)はテロメラーゼが活性化しているため、何回分裂してもテロメアが短くならない“不死の細胞”だ。
同じ平均年齢51歳の集団で、若い頃から運動習慣のある人たちとない人たちの白血球を調べた研究がある。運動している人たちのほうがテロメラーゼ活性が高く、テロメアも長かった(*3)。
カリフォルニア大学予防医学研究所のディーン・オーニッシュ所長は、35人の男性のうち10人にライフスタイルの改善を指導した。低脂肪で野菜や果物の多い食事、週5回以上の有酸素運動、ストレス管理など、トータルで「健康的な生活」をしてもらった。5年後に採血してテロメアの長さを測ると、何もしなかった人たちが3%短くなっていたのに対し、指導を受けたグループは逆に10%長くなっていたという(*4)。テロメアの長さだけを見れば“若返った”わけだ!
つまり、「努力でテロメアを伸ばすことができるんです」と近藤さんは指摘する。
*1 PLoS One. 2011;6(6):e20466
*2 BMJ. 2014 Jul 8;349:g4227
*3 Circulation. 2009 Dec 15;120(24):2438-47
*4 Lancet Oncol. 2013 Oct;14(11):1112-20
座っている時間が長いとテロメアは短くなる
テロメアを伸ばすのは、それほどハードな運動ではない可能性も高い。
最近は「セデンタリー」(=Sedentary、じっと座っていること)が健康に悪いことが注目されており、WHO(世界保健機関)は「セデンタリーはがん、糖尿病、心臓病のリスクを高める」と警告している。
大阪大学が40〜70代の日本人約8万人を19年間追跡した調査もある。1日のテレビ視聴時間が2時間延びるごとに肺塞栓症による死亡率は1.4倍高くなり、1日5時間以上テレビを観る人の死亡率は2時間半未満の人の2.5倍だった(*5)。
このセデンタリーは、どうやらテロメアの長さにも影響するらしい。
スウェーデンで平均68歳の49人を運動するグループとしないグループに分けて、運動とテロメアの関係を調べた。6カ月間運動を続けた人たちは体重や体脂肪率が減少したが、意外なことにテロメアの長さは運動量とは関係しなかった。ところが運動と別に「1日に座っている時間」を調べてみると、座っている時間が短い人ほどテロメアが長いことが分かったのだ(*6)。
テロメラーゼ活性を高めてテロメアを伸ばすには、まず健康的な食生活や運動を心がけること。それ以上に「まめに席を立ち、長時間座りっぱなしでいないこと」が大切なのかもしれない。
*5 Circulation. 2016 Jul 26;134(4):355-7
*6 Br J Sports Med. 2014 Oct;48(19):1407-9
近藤祥司(こんどう ひろし)さん
京都大学医学部附属病院 地域ネットワーク医療部 准教授
近藤祥司(こんどう ひろし)さん 1967年生まれ。京都大学医学部卒業。ロンドン大学と英国がん研究所で細胞老化と解糖系代謝の研究をし、2006年に京都大学医学部附属病院にアンチエイジング外来を開設。2017年より現職。著書に『老化はなぜ進むのか―遺伝子レベルで解明された巧妙なメカニズム』(講談社ブルーバックス)、『老化という生存戦略―進化におけるトレードオフ』(日本評論社)など。
このコラムについて
おとなのカラダゼミナール
聞きたかったけど、聞けなかった…。知ってるようで、知らなかった…。日常的な生活シーンにある「カラダの反応・仕組み」に関する謎について、真面目にかつ楽しく解説する連載。酒席のうんちくネタに使うもよし、子どもからの素朴な質問に備えるもよし。極上の“からだ知恵録”をお届けしよう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/091500068/040300013
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 不安と不健康18掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。