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歯科医の弘岡秀明氏が指摘
80歳までに半分の歯失う日本人 大半が歯磨き粉について誤解
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170403-00000016-pseven-life
週刊ポスト2017年4月14日号
コンビニやドラッグストアで何気なく手にし、毎日使っている歯磨き粉や歯ブラシ。その選び方、使い方の“常識”は、実は間違いだらけだった──。自分の歯を守るために、何が必要なのか。昨年、「やってはいけない歯科治療」シリーズで業界のタブーを暴き、大反響を呼んだジャーナリスト・岩澤倫彦氏がレポートする。
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日本人は80歳までに28本ある歯のうち半分を失い、入れ歯になる人が多い。一方で、同年齢のスウェーデン人は平均20本の歯が残るという。
この差の理由は、日本人の歯についての知識が根本から間違っていたからだと、歯科医の弘岡秀明氏(前東北大学臨床教授・スウェーデンデンタルセンター)は指摘する。
「中高年は、歯周病か虫歯によって歯を失いますが、両方とも口の中にある“バイオフィルム”が原因です。これを理解せず間違った歯磨きや治療を受けて、結局歯を失う人が多いのです」
朝起きて歯を触り、ネバネバした膜が覆っていたら、それがバイオフィルムだ。以前はプラーク(歯垢)と呼ばれていたものと同じと考えていい。その中には歯周病や虫歯などの原因菌が、1g中に約1000億も存在している。
歯周病は、歯と歯茎の隙間にある歯周ポケットに、バイオフィルムが繁殖。歯周病原菌が感染して組織を破壊、重症化すると歯が抜ける。
また、中高年に特徴的なのが「大人虫歯」。加齢で歯茎が下がり露出した歯の弱い根元部分(象牙質)や、昔に治療した銀歯やブリッジの隙間に、バイオフィルムが張り付いて虫歯を作るパターンだ。
そこで歯周病や大人虫歯に悩む世代をターゲットに、ハミガキ剤が続々と発売されている。国内の出荷数は、年間5億個、総額1300億円を超える(平成28年度、日本歯磨工業会調べ)。
これほど種類が多ければ選択に悩むのは当然だが、専門家によると、大半の人が歯磨き粉について誤解しているという。
◆薬用ハミガキで歯周病を治せる?
歯肉の腫れ、出血、むず痒さを感じたら、歯周病の初期症状だ。この時、歯周病予防を謳った薬用ハミガキを買い求め、自己流で治そうとしていないか。
「歯周ポケット内のバイオフィルムは、強力に付着している場合が多く、歯科衛生士が専用器具を使わなければ除去できません。薬用ハミガキで一時的に症状が緩和しても、それは歯周病が治ったわけではないのです。それを誤解して、手遅れになるまで歯周病を進行させる人が多い」(弘岡氏)
薬用ハミガキは「医薬部外品」。医薬品と異なり、厳密な臨床試験による効果の立証は義務付けられていない。入浴剤や栄養ドリンクと同レベルの効果であることを冷静に理解すべきだろう。
厚労省の調査では60代の9割が歯周病だ(平成23年歯科疾患実態調査)。軽い腫れや出血など早期段階の「歯肉炎」と、膿が出たり歯がぐらつくなど重症化した「歯周炎」の二つの段階がある。弘岡氏によると、歯肉炎の段階で適切な治療を受ければ、完治も容易だ。
◆高価な医薬品であれば効果がある?
種々雑多なハミガキ剤が並ぶ中で、数は限られているが、歯周病用の「医薬品」もある。価格も1000円超。シニア世代にアピールするパッケージには、「歯茎の腫れ・うみ・痛み・口臭」などの効能が記されている。
医薬品だから一定の効果は立証されているが、あくまで症状の緩和であり、根本的な解決はできない。さらに、意外な落とし穴もあると歯科医・米畑有理氏(歯の花クリニック・大阪)は注意を促す。
「歯周病用ハミガキ剤の多くには、フッ素が含まれていません。大人虫歯の予防にフッ素は不可欠です。歯周病用でもフッ素配合のものを選ぶか、フッ素配合のハミガキ剤を併用するのがよいでしょう」
何より、歯周病を治すには、歯科クリニックに行くべきだろう。日本歯周病学会の認定医、または専門医であれば、一定の治療水準を満たしているはずだ。また、歯周病を予防するには、後述する正しいセルフケアと同時に、歯科衛生士の半年に1回程度のメンテナンスを受けるのが効果的だ。
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