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(回答先: <アスリートの救済A腰痛> 投稿者 SHO 日時 2017 年 3 月 31 日 18:37:12)
■腸腰筋の異常が大腿筋群に異常をもたらす
既に述べたように、腸腰筋に慢性疲労から生じる弛緩不全を抱えている場合、股関節の伸展位を十分にとることができなくなってしまうため、立位では股関節、及び膝関節で、わずかな屈曲位をとらざるを得なくなる。この結果、ハムストリングスや大腿四頭筋に継続的な負担が強いられることで、それらにも腸腰筋同様の弛緩不全が生じやすくなる。ここに膝屈伸運動に伴う負荷が加わることで大腿筋群の弛緩不全が重度となり、種々の膝痛をもたらす原因になると考えられるのだ。
■膝痛を来すメカニズム
大腿にある筋肉のうち、大腿四頭筋は膝関節伸展作用を有する筋肉で、膝蓋骨、膝蓋腱を介して下腿脛骨粗面に停止するが、膝蓋骨と脛骨には、この筋肉からの牽引力による力学的な負担が加わるため、各々に炎症を来たすことが多い。少年期に特有のオスグッド病は、この原理によって脛骨粗面に生じた骨軟骨炎であるし、ジャンパー膝は同種の原理によって膝蓋骨側に生じた炎症である。一方、この筋肉の弛緩不全は、膝蓋大腿関節と膝関節の双方に過剰な軸圧負荷をかけるので、それぞれ、たな障害、半月板損傷の誘因ともなり得る。さらに言えば、腸腰筋や、大腿にある筋肉群に弛緩不全を有する状況下では、靭帯損傷を引き起こすような危険動作に対する円滑な回避運動が妨げられ、前十字靭帯断裂など、重大な障害を負ってしまいやすいと考えられるのだ。勿論、ハムストリングスの牽引負荷や軸圧負荷で生じる膝周辺の痛みもある。
■反復刺激ではなく、持続的な刺激が原因となる
仮に、腸腰筋の弛緩不全がそれほどでもなかったにせよ、股関節や膝関節の屈曲、伸展を繰り返すスポーツ活動において、ハムストリングスや大腿四頭筋に弛緩不全を生じるのは、よくあることだ。少年期の場合、骨格が未熟であると同時に、こうした筋肉の収縮と弛緩とをコントロールする神経伝達機能が未発達であるため、弛緩不全を来たしやすいのである。結果、膝関節のみならず、身体の多くの部位で、骨端症を患うことにもなる。それらは単に反復刺激が原因というのではなく、弛緩不全に伴う持続的な牽引、ないし軸圧負荷が引き起こす症状であると考えられるのだ。
■大腿筋群にMedical Dynamic Stretchingを
ゆえに、腰痛の場合と同様、膝関節の痛みにおいても、大腿四頭筋やハムストリングスなどのストレッチをすれば良い。ここでも、ストレッチの方法として、Medical Dynamic Stretching(MDS)が推奨される。時折、足の届かない椅子に腰掛けた子供たちが、ぶらぶらと落ち着きなく足を動かしている様を見かけることがあるが、あれこそが膝関節におけるMDSとなる。下腿の下垂位を中心として、膝関節を振幅30〜40度程度で振り子のように動かすわけだ。100回程度で効果が現れはじめるので、アスリートなら、500回程度を朝夕行う習慣をつけると良いだろう。弛緩不全に陥った筋肉には著明な圧痛があるが、その解消に伴い圧痛も軽減するので、ストレッチの前後で内側広筋を押さえて比較してみると、効果の実感が得られやすい。
■大怪我には筋肉の弛緩不全が先行する
このほかの膝痛としては、大腿筋膜張筋の弛緩不全で生じる腸脛靭帯炎や、鷲足成分の弛緩不全に由来する鷲足炎などがある。前者は腸腰筋に対するのと同様の方法で弛緩不全を軽減でき、後者は、それに加えて膝関節で行うMDSを行うと効果的だ。これらMDSは、できるだけスポーツ活動の直前、直後に行い、普段から継続しておくと、ある程度怪我を防止できるはずだ。
前十字靭帯断裂など、選手生命にかかわる大怪我には、必ず、股関節や膝関節をとりまく筋肉の異常が先行しているのである。ところが、多くの整形外科医は、膝関節における怪我の予防手段として、大腿四頭筋強化を指導する。だが、疲労が蓄積することで生じるアスリートの膝痛に対し、この訓練が奏功するかどうかは大いに疑問だ。かの訓練は、外科手術後、一時的に生じた同筋の脱力状態からのリハビリとしては有効かも知れないが、それがアスリートの怪我を防止するという道理については、愚鈍な町医者の理解を超えた話なのである。
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