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タフに生きる! スタミナ向上には青学式食事法
[中野ジェームス修一]遠回りしない体メンテ術
アクティブに動いても疲れない体を作るには糖質を賢く補給
2017年3月16日(木)
松尾直俊=フィットネスライター
箱根駅伝3年連続優勝、加えて出雲、全日本と学生駅伝大会三冠を成し遂げた青山学院大学陸上部のトレーナーとしても活躍する中野ジェームズ修一氏に、青学の選手たちが取り組んだスタミナ向上のためのトレーニングを参考に、一般人がやるべき運動後の栄養補給について語ってもらった。
運動と休息、そして栄養補給には密接な関連がある。そのどれか一つでも不十分だと、健康的な体づくりは効率よく進まない。『運動』→『食事』→『休息』。健康的な体を作り上げていくためには、このサイクルがうまく循環しなければいけない。タフなビジネスパーソンになるにはランニングなどの運動後、どんな点に着目して栄養補給を行えばいいのだろうか。
「昨年の箱根駅伝終了後の青学陸上部は、疲労回復のリカバリーに重点を置いてきました。その観点からお話ししておきましょう。これは運動生理学の常識でもあるのですが、今回に限らず、私たちスポーツモチベーションが青学陸上部を担当させてもらうようになってから徹底してきたのが、“高強度で長時間の練習後には高糖質の食事を取る”ということです」(中野さん)
運動前の糖質の摂取が不足していると、グリコーゲンが足りなくなってスタミナ切れを起こす。(©lzflzf-123RF)
糖質制限はスタミナ不足を招きやすい
昨今はダイエットのための糖質制限が流行している。確かに炭水化物をはじめとした糖質を制限すれば、体脂肪が消費されて体重は減る。しかし、考えてほしい。糖質というのは人が生きていく上で運動のエネルギーとしてなくてはならない栄養素。悪者のように言われるが、必要不可欠な物質なのである。
「高強度で長時間の運動をすると、筋肉の中に溜め込まれたグリコーゲン(糖)が減っていきます。個人差はあるのですが、人間は運動前に食事をしておくと、筋肉と肝臓にある一定量のグリコーゲンが蓄えられています。ハーフマラソン程度であれば、この糖をほぼ使って走りきれるわけです。しかし、運動前の糖質の摂取が不足している方や、青学の選手をはじめトップアスリートになると限界まで追い込むため、グリコーゲンが足りなくなります。レースに出場したりして緊張やストレスが高まると、それによっても糖質の消費が多くなってしまうのです」
このように、ランニングなどのスポーツを行う人にとっては、よほどの肥満でない限り、糖質を制限した食事がエネルギーの不足をもたらしてしまうことが多いようだ。それでは逆にどのようにすれば、スタミナのある体に変えられるのだろうか。
ハードな運動後に糖質を取るとスタミナ向上
人間の体には、ある栄養素が枯渇すると、次にそれが供給された時に溜め込むように働く特性がある。例えば、脂質の摂取を完全に遮断してしまうと、次に入ってきた時に体脂肪として蓄積されやすくなるのだ。「高強度で長時間の運動によって、筋肉中のグリコーゲンが完全に枯渇しても運動を続けていると、体は“ここまで消費してもまだ運動を続ける必要があるのだ”という反応を示します。そして、グリコーゲンを溜め込むタンクのサイズを大きくするように働きます」と中野さんが説明してくれた。
この現象は一気に起こるものではなく、練習を繰り返すうちに得られる。こうした体の仕組みを活用して、一昔前のランナーやトライアスリートの間では、レース前に完全に糖質を抜いてしまう“オールアウト”という状態を作り出し、数日前から一気に補給する“カーボローディング”という方法が流行した。しかし、この方法は今ではほとんど行われなくなっている。
長距離を走るトップランナーたちは、トレーニング後のエネルギーが枯渇した時点で高糖質の食事を取り続けることによって持久力を高める。(©PaylessImages-123RF)
「それはリスクが高いからです。糖質を完全に抜いてしまってから急激に補給すると、体重の増加を招きます。標準的な体質の方でも1〜2kg増えるのは珍しくありません。すると、特に長距離選手のように体脂肪が少ない人にとっては、足首から膝、腰への負担が多くなり、スピードが損なわれることはもちろん、ケガのリスクも高くなります」(中野さん)
問題は糖質の取り方にある。箱根駅伝三連覇を達成した青山学院大学の陸上部をはじめとして、最近のトップランナーたちはレース当日に体重を増やすことなく、持久力を向上させられる調整法を取り入れているのだ。
「現在の調整法では、レース本番に合わせて徐々に炭水化物の量を増やしていきます。選手によって個人差はありますが、だいたい1〜2週間かけて行います。すると、少しずつ体重は増えて行きますが、人間の体には恒常性という、元に戻ろうという反応があります。その性質を利用して、レースの日にちょうど体重が戻るように、炭水化物を多めに摂取する期間を調整します」(中野さん)
この調整法では、トレーニング後のエネルギーが枯渇した時点で高糖質の食事を取り続けることによって、筋肉中により多くのグリコーゲンを溜め込むことができるようになるので、レース当日の持久力の向上につながるのだ。青学陸上部は、この理論を基にコンディショニング作りをしながら、選手の競技能力を向上させていたのだ。
「一般ランナーの方も、レースに向けて高強度の練習をした時には、できるだけ早く、できれば30分以内に高糖質の食事をしたほうがいいでしょう。2時間後に摂取するよりもグリコーゲン貯蔵レベルが高くなることがよく知られていますから。食事が難しいようであれば、糖質が多めに入っているゼリー状のサプリメントなどを利用しても構いません。練習後には水分や電解質も失われているので、そういった栄養素の補給も大切です」(中野さん)
こうした運動と食事を習慣づけてスタミナを高めておけば、日々の仕事やスポーツをタフな体で楽しめるようになるだろう。
運動の疲れを持ち越さないことも大切
高強度の運動をした後は、多かれ少なかれ、筋線維も小さな損傷を受ける。この細胞の破壊を最小限に食い止め、ケガに発展しないようにするための方法が、前回の記事で紹介したアイシングだ。また、損傷した筋肉を早期に修復するには、たんぱく質をしっかり摂取することも大切だ。こうした体のリカバリーを行うことで、疲れを翌日に持ち越さず、スタミナを高めるための日々のトレーニングを継続できるようになる。
「青学の長距離選手たちの場合、1日に体重1kgに対して最大で1.8g程度のたんぱく質を取るように言ってきています。体重50kgの選手であれば、90gですね。男性アスリートの場合、持久系トレーニングの後にたんぱく質を多く摂取すると、リカバリー促進に役立つというデータがあります。一般の人であれば体重1kgに対して1gでいいと思います。理想的には、練習後2時間以内に高たんぱく質・低脂質の食事を取るようにすると、リカバリーがスムーズに行われます」(中野さん)。
たんぱく質を取る時に気をつけなければいけないのが、脂質の取り過ぎだ。「たんぱく質だから」と肉ばかりに頼り過ぎると、調理法にもよるが、どうしても同時に脂質を取ってしまう。肉類だけでなく、魚や豆類、それに卵や乳製品など、動物性と植物性のたんぱく質のバランスを考えて食べるようにすれば、脂質の取り過ぎを防げるという。
「例えば、日本人の一般的な朝食、焼き魚にご飯と味噌汁、それに納豆や卵など、そして定食屋で食べる昼食などを合わせると、1食でだいたい20gのたんぱく質が含まれていると言われています。ですから、体重60kgの人であれば、サプリなどで補給する必要はありません。ただ、一食がラーメンやパスタなどの麺類になってしまった場合は、夕食で焼き魚にプラスして、肉などを取る必要が出てきます」(中野さん)
不足するたんぱく質をいかにして補うか。アスリートであれば、管理栄養士などが厳密な栄養素とカロリー計算で導き出す。しかし、我々一般人にとってはなかなか難しい。そこで中野さんは「一般的に、肉にしても魚の切り身にしても、おおよそ手のひらサイズがたんぱく質20gだと言われていますから、それを目安にすればいいでしょう」と言う。
「ただ、炭水化物だけ、たんぱく質だけを取っていればいいということではないので、なるべく多くの食材からたくさんの栄養素を複合的に摂取するのが、アスリートや一般のスポーツ愛好家にとって大切です」(中野さん)
三大栄養素はもちろん、ビタミンやミネラル類は、そのどれもが単独で役割を果たすのではなく、互いに影響し、補完し合いながら働くもの。偏った栄養摂取では、健全な体づくりはできない。食べ方の工夫もまた、体づくりのトレーニングになるのだ。
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん 1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」(徳間書店)、「世界一やせる走り方」(サンマーク出版)など多数。
このコラムについて
[中野ジェームス修一]遠回りしない体メンテ術
ビジネスで多忙を極める日本の30〜40代は体力の低下が著しく、5人中4人が将来寝たきりになる「ロコモティブシンドローム」の予備軍とされている。パワフルに働き、50代以上になっても健康的な生活を維持するには、正しい運動、食事、休養を行うことが大切だが、誤った健康術にまどわされ、成果が出ずにいやになってしまうケースも少なくない。一流アスリートから一般人まで、フィジカルトレーニングをサポートしている著名トレーナーの中野ジェームス氏が誤った健康常識を一刀両断。効率的で結果の出る、遠回りしないための健康術を紹介する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/110700081/031500008
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