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医師は科学的な証明がなければ否定しない(C)日刊ゲンダイ
機能低下につながることも 避けるべき「肝臓に良い」食べ物
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/197760
2017年1月19日 日刊ゲンダイ
世間一般で長らく信じられている「健康知識」の中には、意外に間違った情報が少なくない。そのひとつが、「肝臓に良い食べ物」。「レバー」「シジミ」「ウコン」をいまだに「肝臓の機能アップにつながる」と考えて積極的に取っている人もいるが、人によっては肝機能の低下を招きかねない。
肝臓は現在わかっているだけで体の中で500種類以上の役割を担い、基礎代謝の3割近くを占める重要臓器だ。その機能低下は、体の不調にとどまらず、動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる重大病を引き起こす。だからこそ、昔から肝臓の機能アップの食べ物がもてはやされてきたわけだが、どうやら世間で肝臓に良いとされる食べ物は、人によっては悪い、ということがわかってきた。
「食品で肝臓に良いといわれるものがありますが、その多くは俗説です。医学的根拠はありません」
こう言うのは日本肝臓学会専門医で、「吉田内科クリニック」(横浜市青葉区)の吉田秀樹院長だ。
「レバー」「シジミ」「ウコン」は肝臓の機能が落ちている人は避けた方がいいという。「これは、肝臓の専門医なら誰でも知っていること」というから驚いた人もいるのではないか。
実際、肝炎、肝がん治療の第一人者である関西労災病院院長で、大阪大学名誉教授でもある林紀夫院長も「月刊文芸春秋2月号」で「肝臓に良いと信じられているレバー、シジミは肝臓の弱い人は取らない方がいい」「ウコンに至っては、これが原因で薬物性肝障害を引き起こしたという報告さえあるほど」と述べている。
「レバーやシジミには大量の鉄分が含まれています。これが問題です。鉄分は酸素を運んだり、エネルギーをつくるのに必要な重要なミネラルですが、過剰になると、肝臓の細胞が破壊されやすくなるのです。鉄分の過剰蓄積の有害性については以前から議論されてきましたが、現在は過剰な蓄積は有害と決着しています」(吉田院長)
■鉄分が多いデメリットがメリットを上回る…
そのキッカケとなったのはC型肝炎やB型肝炎の研究。これらの病気でダメージを受けた肝臓の細胞を採取したところ、多くの鉄分が見つかった。
「過剰な鉄分は細胞内の余分な酸素と結びつき、OH−ハイドロキシルラジカルという猛烈な毒性を持つ物質に変わります。この物質は細胞膜やタンパク質、DNAを傷つけるだけでなく、細胞のアポトーシス(自壊作用)に関与していると考えられています」(吉田院長)
つまり、過剰な鉄分は血管の細胞を傷つけて動脈硬化を進めるほか、DNAを損なうことで突然変異を起こし、細胞をがん化させる。さらには肝臓の細胞のアポトーシスに関与することで、肝臓そのものを悪くする可能性があるのだ。
一般的にシジミに含まれるアミノ酸にはアルコールを代謝する酵素の活性を高める働きがあり、タウリンは胆汁の排出を促して肝臓の解毒作用を活発にしてくれるといわれている。ところが、少なくとも肝機能が低下している人にとっては、鉄分が多いというデメリットがこれらのメリットを上回るのだ。
「肝機能が低下した患者さんがこれらの食品を取ることは良くないと証明されたから、医師は指導できます。しかし、他にも医学的に根拠のない食品や運動法を患者さんが『体に良い』と信じて行うケースはいくらでもあります。それを医師が『やめた方がいい』と思いながらもハッキリと言わないのは、科学的に体に『悪いこと』を証明するのは難しいし、そのための研究にお金をかける機関が少ないからです」(吉田院長)
とはいえ、科学的に根拠のある「体に良い」食品や運動法についての研究は進みつつある。いいかげんな情報に振り回されないために、普段から健康・医療情報に敏感になっておくことだ。
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