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2016年12月1日 井手ゆきえ [医学ライター]
毎年12月1日は「世界エイズデー」だ。東京都ではRED RIBBON LIVE 2016(11月29日、東京・港区)を皮切りに、12月4日からは街頭キャンペーンや無料検査(予約制)が実施される。各地の保健所でも連携企画が用意されている。日本は、主要先進国で珍しく、HIV/エイズが増加している国であり、特に中高年では、エイズを発症してからHIV感染が判明した「いきなりエイズ」が増えている。(医学ライター 井手ゆきえ)
増えている40歳以上の「いきなりエイズ」率
発端は知人(50代、♂、既婚)の「えぇ!? HIV検査なんか受けないよ。だって奥さんに“やましいこと、してるの?”って疑われちゃうじゃん」の一言だった。
「そうかなぁ、結婚25周年記念にHIV検査、ついでにHBVとHCV検査(どちらも性感染症)を受けてお互いにオープンにすれば良いじゃない?そのほうが、お互いを大切に思う気持ちが通じるのに」と思った筆者(年齢非公開、♀、未婚)は、結婚生活に夢を持ちすぎなのか?──ということで、HIV/エイズについて調べてみた次第である。
日本は主要先進国で珍しく、HIV/エイズ(後天性免疫不全症候群)が増加している国だということをご存じだろうか。関連機関はことあるごとに「HIV検査」を受けるよう情報を発信し、特にこの数年中高年層で顕著な、エイズを発症してからHIV感染が見つかる「いきなりエイズ」を食い止めようとしている。
2015年のエイズ発生動向(厚生労働省エイズ動向委員会)によると、2015年の新規HIV感染報告例は1434件。このうち、エイズを発症してからHIV感染が判明した「いきなりエイズ」患者の割合は約30%、428人(男性409人、女性11人)だった。
2015年の1年間に、毎日1人以上の人が「なんだか熱が続くし、下痢が長引いてしんどいなぁ」くらいの気持ちで受診した病院で、「あなたはHIVに感染していて、エイズを発症している可能性がある」と告知されていたことになる。
中高年層にフォーカスしてみると、40歳未満の「いきなりエイズ」率は19%と平均を下回ったが、40歳以上の「いきなりエイズ」率は一気に43%に上昇。50歳以上では50.6%と、実に2人に1人はHIV感染が発覚した時点で、すでにエイズを発症していた計算だ。
80年代の魔女狩り報道が原因か
中高年層にHIV検査への忌避感
日本人の初HIV感染例が見つかったのは、30年前の1985年。米国在中でMSM(Men who have sex with men)の日本人男性がエイズ患者と認定されたのに続いて、日本国内の血友病患者3例のエイズ発症とMSM2例がエイズ症例と認定されている。
続く86年11月に長野県・松本市の外国籍の女性が、その2ヵ月後の1987年1 月17日、兵庫県・神戸市で日本人の女性でエイズ発症例が報告される。国内で初めて異性間の性行為による感染が確認されたのだ。
神戸の件では、患者の女性がCommercial Sex Workerとして不特定多数と交渉があったという「うその証言」もあり、2次感染を防止するとの口実で実名、写真付きの「魔女狩り」報道が繰り返された。同市はパニックに陥り、風俗街の客足は激減。1月18日に神戸市の各保健所に設置された相談窓口には3日間で3000人以上の相談者が殺到する騒ぎになった。
今の中高年層はちょうど性に目覚める年頃に、一連のヒステリックで扇情的な報道に接した年代だ。そのため「エイズは特殊な状況下での特殊な病気」という誤解(無知に発する偏見ともいう)と、社会的なバッシングや実名が晒されるのではという恐怖心が根強い。HIV検査への忌避感は、この辺に由来している。
いきなりエイズの2割は
異性間の行為
性行動が多様化している今、異性・同性間を問わず病原体をやりとりしやすい性行為を好む人は少なくない。
どちらかが無自覚なHIV陽性者だった場合、コンドームを装着しない肛門性交のHIV感染率(推計値)は0.067%(挿入側)〜0.5%(受け側)/回。同じく、膣性交のHIV感染率は0.05%(男性側)〜0.1%(女性側)/回だ。粘膜と精液、血液の接触が多い肛門性交の感染率は膣性交より高く、長い間、同じ行為を繰り返せば感染リスクは確実に上昇する。
前出の報告では、HIV感染陽性(未発症)例のうちMSM(男性間性交渉者)──例えば、結婚をしていても同性と性行為をするバイセクシュアルの男性を含め、同性間の性行為による感染は全体の69%、691人、異性間の性行為による感染は19.5%、196人だった。
一方、いきなりエイズ例の感染経路では、MSMが250人、58.4%、そして異性間の性交渉による発症例は95人、22.2%と、異性間の性行為を感染経路とするケースの割合が増える。
HIV/エイズの啓発活動を行っている男性は「同性愛・異性愛を問わず、その場の雰囲気に流されずにコンドームをつけてほしいということ、そしてセーファーセックスのために“定期的に”HIV検査を受けたほうがいいと思います」という。
ウイルス量を検出不能まで減らし感染防止
1日1回1錠の配合錠で早期治療を
もう一つ、中高年層がHIV検査をためらうのは、HIV/エイズ=悲惨な死というイメージがあるからだ。
1980年代、確かにHIV/エイズは発症後1〜2年で命を落とす不治の病だった。しかし、21世紀に入り新薬が次々に開発され、HIV/エイズ患者の寿命は一気に伸びた。25歳の患者を例にすると、2000年以降の新しい治療を受けている場合、余命は40年近く伸びることがわかっている。
2013年には複数の有効成分を1錠にまとめた1日1回1錠の「STR」が登場。飲みやすくなったことで、さらなる延命が期待できる。今、専門医の間では80年代には「想像すらしていなかった」HIV/エイズ患者の高齢化、という問題が浮上しているほどだ。
HIV/エイズ治療の肝は、HIVウイルス量を検出不能なまでに減らすことで、陽性者でもほぼ100%、パートナーへの感染を防止できる点だ(もちろん、コンドームを装着すれば、感染率は限りなくゼロに近づく)。
まさに「治療は予防なり」で、すべてのHIV感染者が治療を受ければ、理論上、エイズは撲滅される。実際、途上国では HIV検査と治療の普及で新規HIV/エイズ患者が激減している。ところが、日本では2010年以降、毎年1500人前後の新規HIV/エイズ報告数があり、一向に減る気配がない。裏を返せば、いかにHIV検査を受けない人が多いか、ということだ。
HIV検査は陰性でラッキー
陽性でもラッキーと考えるべき
HIV感染を未発症の陽性段階で知るか「いきなりエイズ」発症で知るかの差は、誇張でなく天国と地獄の差だ。エイズ発症後に生還しても、寝たきりになるケースは少なくない。
一方、HIV陽性段階で治療を始めることができれば、普通の生活を送り、平均寿命近辺まで人生を全うすることができる。まして、発症までの期間、誰かに感染させている可能性を考えたら……。
HIV/エイズは性感染症という面を持つ。人間が人間であるかぎり、避けようとしても避けきれないリスクの一つなのだ。自分とパートナー、家族の安心、安全のために一度はHIV検査を受けてみよう。陰性ならラッキー、陽性であればなおさらラッキーである。
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