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「ウコン、むしろ肝臓に悪い」は本当か
キーパーソンに聞く
左巻 健男・法政大学教職課程センター教授に聞く
2016年10月6日(木)
鈴木 信行
人口減少が加速し様々な産業で市場が縮小する中、活気に沸いているのがサプリメントを始めとする健康食品産業だ。市場規模は2兆円に迫り「国民の約4分の1(あるいは50代以上の約3割)が毎日、何らかの健康食品を利用している」との統計もある。
そんな中、「多くのサプリは無駄どころか、むしろ体に悪い」と主張する専門家がいる。話を聞いてきた。
(聞き手は鈴木信行)
左巻 健男(さまき・たけお)
栃木県小山市出身。千葉大学教育学部卒業。東京学芸大学大学院修士課程修了(物理化学・科学教育)。埼玉県大宮市(現さいたま市見沼区)立春里中学校や東京大学教育学部附属高等学校の教諭を務めた後、京都工芸繊維大学アドミッションセンター教授を経て2004年から同志社女子大学。2008年より、法政大学生命科学部環境応用化学科にて教授職。2014年4月より法政大学教職課程センター。
2014年に書籍『病気になるサプリ』(幻冬舎新書)を上梓するなど様々な場でサプリの危険性、問題点を訴えておられます。とりわけ『病気になるサプリ』では、ダイエット系からアンチエイジングもの、抗がんジャンルまであらゆる健康食品を批評しています。さすがここまで思い切ったことを書くと、ヘビーなクレームが各方面から入りそうですが。
左巻:それがそうでもないんですよ。僕はあくまで科学的エビデンスを元に批評をしているので、内容に対し反論があるならいくらでも議論、説明する用意がある。でも向こうは別に、内容に関する議論や説明を求めているわけではない。
サプリが科学的に効くのか、効かないのか、白黒はっきりつけたくはない、と。
左巻:だから僕の所に直接クレームが来ることはめったにない。掲載したメディアの方には、「こんな記事を載せたからにはバーターで宣伝記事を書け」みたいな圧力が来ることもあるみたいですが。彼らにしてみれば、批評にいちいち反論しなくても、儲かっているという事情もあるのでしょう。
逆に「肝機能障害の原因」との報告あり
『病気になるサプリ』には、サプリ愛好家には衝撃的な話が次々に出てきますが、まず多くの会社員にインパクトがあるのが「じつはウコンは肝臓に悪い」の項です。
左巻:ウコンはショウガ科の植物で、その成分はデンプン、カリウム、ビタミンC、カロテンなどと、クルクミンなどクルクミノイド類です。このうち「肝臓によい」と言われるのはクルクミノイド類ですが、その肝障害抑制効果は、試験管レベルや動物実験の結果でしかなく、人の臨床試験での科学的根拠はありません。
一方で、ウコンが肝機能障害の原因になるという部分についてはエビデンスがあります。健康食品・サプリで最も多く報告される健康被害は肝機能障害なのですが、原因物質として、単一の成分としての報告は、ウコンが一番多いのです。
本当ですか。
左巻:1994〜2003年に日本で発生した、痩せ薬以外の健康食品・民間薬による薬剤性肝機能障害の原因の4分の1はウコンです。その他にも、ウコンはアレルギー症状を起こす場合があります。
とはいえ、ウコンサプリは今や多くの会社員の必須アイテムになりつつあります。旧態依然とした日本企業の多くではいまだ、飲み会への頻繁な参加は出世及び「会社の中の居場所作り」の必要条件の1つですし、ウコン系サプリメントを命綱に日々飲み会に参加している人も沢山いるはずです。そして、実際にウコンのおかげで二日酔いにならずに済むと言う人もいます。あれらが全部プラセボ効果とは思えないんですが。
左巻:もしかしたら効くのかもしれません。僕が言っているのは「ウコンの肝機能障害抑制効果に十分なエビデンスがないこと」と、「ウコンによる健康障害が存在する」という事実だけです。ただ、効いているとすれば、人体に何らかの生理活性作用を起こしているわけですから、それはそれで体内のバランスを崩し健康被害を及ぼす可能性が出てきます。ウコンによって、かえって肝機能障害が起きるのも、このためかもしれません。
どんな方法にしろ、人間の体内でバランスがとれていることをむやみにいじるのは危険なことなんです。ウコンに限らず、ベータカロテンやビタミン・ミネラルについても言えるのですが、野菜などを通じ普通の食事として体内に取り込む分には無害あるいは何らかの健康増進効果が見込めるものでも、サプリという形で単一成分だけ取り出して過剰摂取するのは危険である、というのが僕の基本的な考えです。
ベータカロテンがかえってがんリスクを高める!?
同じ成分でも、食事経由はよくても、サプリ経由は危ない、と。
左巻:実際、1994年にフィンランドと米国の研究所が実施した共同調査では、「ベータカロテンをサプリで摂取すれば、野菜や果物をたくさん食べるのと同じようにがんが予防できる」という仮説とは全く逆、つまり「高用量のベータカロテンのサプリとしての服用が、喫煙者の肺がんリスクを高める」という結果が出ています。一方で、2003年の藤田保健衛生大学などの、3万9000人を対象にしたベータカロテンと肺がんリスクに関する研究では、「食事から採ったベータカロテンの血中濃度が高いグループは、低いグループより死亡率が低い」という結果が出ています。
なるほど。こうした傾向は他のサプリにも言えることなんですか。例えば最近流行のグルコサミンなどはどうなんでしょう。
左巻:グルコサミンは関節の痛みを改善するといわれる物質で、多くの健康食品に配合されています。グリコサミノグリカンの構成成分となるのですが、このグリコサミノグリカン自体は関節や関節軟骨、関節液などにあって、組織を柔軟にしたり、水分を保持して潤わせる作用があります。ただしそれは老化により自然と減少してしまう。
なら、どんどんグルコサミンを摂取して膝にそのグリコなんとかを注入すればいいのでは。ウコンやベータカロテンと違って、年を取って減ってきた分を補おうって話ですから、過剰摂取にはなりませんよね。
左巻:ところが、問題が2点あります。1つは、グルコサミンは体内に入ると糖やアミノ酸に分解されますが、それが再びグルコサミンに合成されるかについては強い疑問があります。そしてもう1つ、たとえ再合成されても,ひざなどの軟骨部にはあまり血管がなく、成分がひざに到達してない可能性もあります。
肝心の部分に届いてない? 仮にそうならグルコサミンを飲んでひざがよくなったと感じるのは、全部プラセボ効果ってことになりますよね。
左巻:間違いなく言えるのは、医薬品と違い、しっかりした調査研究を経て科学的に効果が証明されているサプリはごく少数だということです。僕自身は、プラセボを超える効果を求めるという前提に立つならば、大半のサプリには利用価値がないと考えています。
最強は「毒にも薬にもならないサプリ」
でも先生、たとえプラセボでも飲んで本人が「効いてる!」と実感できるなら、それはそれでいいんじゃないかとも思うんですが。
左巻:そういう考え方もあるとは思います。サプリを利用して本人が前向きな気持ちになれたり、癒しを感じられたりするのであれば、全く無意味とまでは言えないでしょう。もちろん、たとえ癒しを得るためでも副作用があっては元も子もありませんから、どうしてもサプリを取りたいなら、「絶対に安全なサプリ」、言い換えれば「毒にも薬にもならないサプリ」を摂取するといいでしょう。
決して安いとは言えないサプリ代は、「プラセボ効果を引き起こすためのコスト」と割り切ればいい、と。仮にそうだとすると、サプリというのは何とも不思議な商品ですね。
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