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子育ていろいろ 本いろいろ
16万人の脳画像が教える、真に「賢い子」の育て方とは?
2016/09/23
小川たまか
毎月のように、新しい子育て本、教育本が書店に並ぶ。教育熱心な親、子育てに悩む親がそれだけ多いということなのだろう。教育に関してはさまざまな考え方があり、どのような考え方を選ぶかは各家庭の裁量だ。ただ、一つの考え方に固執するよりも、他種多様な手段・方法・考え方を知って選択肢を持っておきたい。正解はないが、結果はあるのが子育て。あなたは親としてどう子どもと向き合いたいだろうか。この連載では、教育関連本を出版した著者の方たちにインタビューしていく。
今回インタビューした瀧靖之先生によれば、子どもの成長に伴って撮影された脳画像は、これまでデータ量がそれほど多くはなかったのだという。成長に従って脳のどの部分が発達するかを調べた上で、その発達に即した教育を行うのが『「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)で推奨されている子育てだ。といっても、そんなに小難しいものではない。明日からでも実践できる内容であることが、インタビューからおわかりいただけるはずだ。
瀧靖之(たき・やすゆき)
1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。
東北大学病院加齢核医学科長として画像診断に取り組むかたわら、東北大学加齢医学研究所及び東北メディカル・メガバンク機構で脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍。読影や解析をした脳MRIは、これまで16万人に上る。
「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。脳を健康に、若々しく保つ生活習慣などのノウハウについてまとめた『生涯健康脳』(ソレイユ出版)は、10万部を突破するベストセラーとなっている。
加齢と発達は表裏一体
――今回の本を書こうと思われたきっかけを教えてください。
『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える 「賢い子」に育てる究極のコツ』(瀧 靖之 著、文響社)
瀧:私はもともと放射線の画像診断医です。研究では、脳の画像を何千人分も集めて、いわゆるビッグデータをつくって解析するということをやっていました。最初はどうすれば高齢者の方の認知症リスクを下げるかという研究をしていて、この本の前には『生涯健康脳』という本を出しています。本来、そちらが本職でした。
ただ、研究するうちに脳の加齢は発達と表裏一体ということが気になり始めたのです。成長の過程で最初に発達した脳の領域は、最後まで保たれる。逆に最後に発達したところは最初に枯れていく。脳の加齢について研究するなら、子どもの発達のほうも考えたほうがいいのかなとシフトしていったんですね。世の中では、認知症の研究者は子どもの発達のことはあまりやっていない。子どもの研究者の場合、高齢者を見ていない。どちらもやっている人は少ないので、そこをつなげてみようと8年ほど前に考えました。
――教育については以前から興味があったのでしょうか。
瀧:小学校の頃に同じように優秀な成績でも、社会に出た後、最終的に伸びる子と、そうではない子がいる。その違いは何なのかなという興味はありました。
5〜18歳まで300人の脳を解析
――伸びる子どもについて、どんな研究から傾向をつかんだのでしょうか。
瀧:2つあります。1つは極めてアカデミックなもの。5歳から18歳まで約300人の脳のデータを集めて解析したのです。脳の発達って面白くて、「道をつくる」「使う道は高速道路にする」「使わない道は壊す」を繰り返すのです。それを画像で捉えることができる。道をたくさん使うと、その道は太くなって体積も血流も増える。逆に使わない道はなくなります。
さらに、年齢によって発達しやすい脳の部位がある程度決まっています。最初は後頭部のほうから、成長するにしたがって前に移動していき、最後は前頭葉です。たとえば運動野は3〜5歳で発達のピークが来ます。発達のピークとはどういうことかというと、ネットワークが最も張っている時期。この時期に何か運動を始めると、運動能力が伸びやすいと言われています。オリンピック選手たちに聞くと、だいたいこの時期にスポーツを始めていますよね。こういった脳の画像解析を、ひとつ論文にしました。
――これまでも、「子どもの頃から始めるといい」ということは経験則的に語られていましたがエビデンスは少なかった?
瀧:日本ではこういうデータがなかなかないんです。子どもたちの脳のデータを集めるのは、実はすごく大変で手間もかかる作業なのです。高齢者と違って子どもたちは病院に来ないですから、脳の画像を撮れない。また、子どもたちにとっては暗い部屋の中で画像を撮られるのって、場合によってはストレスのある怖い体験になってしまいます。ですから、ただ画像を撮るだけではなく、最初に30分ぐらい一緒に遊んで仲良くなって、最後は「君たちのおかげで脳の研究が進化します。ありがとう」という感謝状を贈って。そういう綿密な準備も行いました。
――医学の分野では生死に関わるものがやはり優先なので、そのほかのものはどうしても予算が付きづらいと聞いたことがあります。
瀧:その通りです。私の認知症研究のコアのところは一次予防です。一次予防とは発症予防。二次予防は早期発見、早期治療。すでに発症したものを、これ以上悪くならないようにするのが三次予防です。一番予算がつくのは三次予防、次が二次予防なのですが、本質的に必要なのは一次予防だと思っています。けれど、(一次予防を行うことで)国民医療費がこれだけ下がりますということまで言わないと、なかなか響かないですね。
好奇心を伸ばして主観的幸福度を上げる
――先ほどおっしゃった「2つ」のうちの、もう1つを教えてください。
瀧:以前、ある学習塾の教育研究会の寄附研究部門にいたことがありました。名物先生たちに、「伸びる子とそうではない子は何が違うのか」と聞いたら、皆さん面白いように同じことを言うのです。たとえば子どもが図鑑を見て新幹線に興味を持ったとき、親がそれで終わりにしない。すぐにターミナル駅や車両基地を見せに行ってあげる。図鑑で見た仮想の世界と現実のものをできるだけ早く結びつける。そういうことをやると伸びる、と。
――子どもを次のステップに導いてあげるということでしょうか?
瀧:つまり、好奇心を大事にしているんですね。子どもの好奇心に気付いたら、それを伸ばすサポートをしてあげる。好奇心があるからこそ、勉強の意欲が出ます。勉強を勉強と思わずに、面白いから興味を持つ。好奇心を伸ばしてあげると、そういうサイクルに入ります。
子どもがやりたいことをやらせてあげるのはすごく大事ですね。要は自己実現や主観的幸福度を上げることが、成長にとっても、将来のうつ病や認知症リスクを下げるであろうためにも必要なのです。やりたいことをやる。だから好奇心が大事。この本で伝えたいのは、好奇心を伸ばして自己実現をすることが、親にも子どもにとっても幸せということです。
子どもに楽しんでいる姿を見せよう
――ご著書では図鑑が推奨されています。
瀧:最初は絵本でも充分なのですが、図鑑の何が良いかといえば、ある程度世の中のことが網羅されていることです。
――子どもの興味がどこにあるかわかりやすい。
瀧:そうですね。あと大切なのは読み聞かせや、大人が読書を楽しむことです。子どもはただ本があるだけだと読みません。発達はすべて模倣から始まります。勉強でもそうですが、子どもに「勉強しろ」と言っても、親自身がスマホをいじってバラエティー番組を見ているだけなら子どもは勉強しません。大人が図鑑をめくってみたり、楽しそうに何かに打ち込んでいると、子どもも興味を持つのです。親がひたすら楽しむことが大事。
私もピアノが趣味で、先日は息子と一緒に発表会に出たんですよ(笑)。今の親御さんは忙しいと思いますが、子どもに楽しんでいる姿を見せること、子どもと一緒に楽しんで何かすることをぜひ忘れないでほしいですね。
――本には「脳の成長年齢マップ」があり、楽器、運動など子どもが取り組むと一番「伸びやすい」時期を示しています。一方で、プロになる子以外は習いごとをいつかやめます。そのときに挫折を感じてしまう子もいると思うのですが、そういった場合のケアの方法はありますか。
瀧:「将来またやりたくなったらやればいいよ」って言えばいいんです。たとえやめたとしても、やること自体に意味があるので。これは認知症の話と関連するのですが、認知症リスクを下げるためには3つのポイントがあります。「運動」「社会との関わり」「趣味や好奇心」です。子どもの頃に少しでもやっていた習いごとは、大人になってから趣味として復活しやすい。始めるための障壁は確実に下がります。
直接的なコミュニケーションで、
相手を理解する練習を
――子育てに悩む親御さんから質問が来ることはありますか?
瀧:たくさん来ますよ。「うちの子は20歳過ぎたけれど、今からでも英語の勉強は遅くないですか」とか。結論からいうと大丈夫なんです。加齢によって可塑性が落ちるので、たとえば80歳から何かを始めるのはかなり努力が必要ですが、それでもできなくはない。「この時期を逃したら終わり」ということはありません。
――ご著書には、コミュニケーションをつかさどる前頭葉の発達は一番後で、小学校高学年から中学生のころだとありました。この時期にコミュニケーション能力を伸ばすために必要なことは何でしょう。
瀧:部活などでダイレクトなコミュニケーションを取ることだと思います。どんなかたちでもいいけれど、ネット上ではないコミュニケーション。
――最近はメールやSNSなどで文字のやり取りをします。あれはあれで間合いを読むというか、高度なコミュニケーション能力が必要なのかなと感じますが……。
瀧:ゲームやSNSをしないと仲間の輪に入れないということもありますし、それらを否定するわけではありません。ただ、コミュニケーションは文字情報だけで行うものではありません。たとえば声の抑揚や表情、仕草などを読み取ることで共感性が身につきます。共感性ってつまり、相手が苦しんでいるときに、相手の気持ちになって理解すること。直接的なコミュニケーションで、相手を理解する練習が大事ですね。
人を傷つけるのってすごく簡単ですが、傷つけられた人の気持ちを理解するためには共感性が必要です。だからこそ練習するべきです。
――最後に、今回のテーマと少しズレるのですが、虐待を受けた子どもの脳は萎縮する……という話がありますね。
瀧:そうですね。精神的にも傷つきますが、脳の萎縮も実際に起こります。脳については、「人間は脳の1割しか使っていない」とか「頭を叩くと1000個の細胞が死ぬ」とか「右脳を使っている人と左脳を使っている人がいる」とか、いろいろウソや迷信があるのですが、虐待での脳の萎縮は実際にあります。ストレスによって、記憶をつかさどる海馬に傷がついてしまう。
虐待の中でも、最近の研究だと特にネグレクト(育児放棄)が良くないと言われています。めちゃくちゃ怒るのももちろんよくないですが、怒るのはまだコミュニケーションがある。放置するというのが子どもにとっては一番つらい。親が子どもに関心を持つことが一番大事なんですね。
今回のポイント
・脳の発達に応じた伸ばし方を
・親が自分の人生を楽しむ姿を子どもに見せる
・成長にも老化防止にも、大切にしたい「自己実現」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7782
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