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中国 エコカー生産に壁 メーカー絞る「18年問題」
基準不透明 日本企業に波及も
世界最大の自動車市場である中国で「2018年問題」が浮上してきた。政府が電気自動車(EV)などエコカーを生産できるメーカーを18年から絞り込む政策を近く発表し、同年に先進国並みの環境規制を導入することも決まったためだ。小型車減税は今年で終了し、エコカー補助金も今後大きく削減される。拡大の続いた市場は18年から激変する可能性が高まってきた。
「もう、ぐちゃぐちゃだ。本気で中国ビジネスを考え直さなければならない」。日系メーカー幹部らは今、こう言って、いら立ちを隠せない。
17年に3千万台の大台をうかがう中国の自動車市場が水面下で揺れている。事の発端は昨夏。政府がメーカー側に示した1通の文書にあった。
「今後、エコカーを生産できるメーカー数を制限する。18年以降に生産したければ、政府が許可する新しい生産ライセンスを取得せよ」。おおむね、そんな内容だ。
先進国並み導入
中国では「ライセンス許可が必要なところ、腐敗あり」と言われるほど許認可は厄介だが、各社が慌てたのにはほかにも理由があった。中国政府が先進国並みの環境規制「NEV規制」の導入も検討していたからだ。
同規制は、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)など環境負荷が小さい車を相当な量を売らなければ通常のガソリン車の販売は認めない厳しい内容だ。
つまり、エコカーのメーカー数を大きく制限する一方、エコカー販売は厳しく義務付ける。中国でエコカーはEVやPHVで、通常のハイブリッド車は含まない。計画では現在約120社に達するエコカーメーカーを、18年以降は20社程度まで絞る案で検討が進む。
全く逆にも見える2つの政策の狙いはなにか。
中国で昨年、エコカー補助金の不正受給が横行したことが、まずは背景にある。グループ内の企業間でEVを販売したように見せかけるのは序の口。その売ったと見せかけた車から電池だけ抜き取り、別の車に載せ、新たにEVを売ったように見せる不正受給も相次いだ。こうした悪質な企業の排除が政府の狙いだ。
一方、中国では大気汚染が深刻で環境対策は待ったなし。先進国並みの厳しいNEV規制の導入が必要と判断したのだ。
ただ、2つの政策が始まる18年まで1年を切り、エコカー投入を準備するには時間が限られる。そもそも日産自動車やホンダ、トヨタ自動車の現地合弁など大半のメーカーは新ライセンスの取得すらできていない。
だが、そんなメーカーをさらに混乱させる事が相次いで起こっている。
まずは独フォルクスワーゲン(VW)だ。昨年9月、中堅の安徽江淮汽車(JAC)とともにエコカーの合弁会社をつくると発表。VWにとっては中国企業との間で結ぶ3社目の提携で「2社まで」と定める外資規制への違反は明らかだ。
だが、この案件は、JACが本社を置く安徽省の出身の李克強首相が、地元企業のJACを後押しした大型のEVプロジェクトだ。表だって問題視されず、他のメーカーは「(中国政府と元々近い関係にある)VWや中国企業が特別扱いされるのはおかしい」と憤る。
2つ目はすでに中国企業8社が18年以降のエコカー製造の新ライセンスを得たこと。メーカーを絞り込む政策そのものがまだ発表されていないなかでの不可解な動きだ。
補助金も削減
当然、取得基準も明確になっていない。ライセンスを得た企業には北京汽車系、奇瑞汽車系の実績のあるメーカーもあるが、技術やノウハウのない新規参入組が目立つ。そこには「中国市場で今後、エコカーが急増する」(外資系メーカー)のをにらみ、中国企業を競争優位に立たせたい露骨な思惑が見て取れる。
一方、これまで中国市場の拡大をけん引してきた外資系大手の間では「限られた新ライセンスを本当に取得できるのか」という不安が渦巻く。
中国政府は景気対策で導入した小型車減税を17年末に打ち切り、18年は反動減の恐れが強い。エコカー販売台数を16年に40万台超まで増やした補助金の削減も加速する。
健全な市場が今後、中国に根付くには公平性をいかに確保するかがまずは不可欠。今回の政策転換には再考の余地が十分にあるといえそうだ。
広州=中村裕
[日経新聞1月12日朝刊P.11]
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