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菊池英博<特別寄稿3> 経済政策は覇権衰退国の理に適っている 日本はトランプ政策をわかっていない
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/197461/1
2017年1月14日 日刊ゲンダイ
中国と手を結ぶ(トランプ次期米大統領と中国アリババの馬雲会長)/(C)AP
米国には大統領のために国際情勢の現状分析と長期的な展望を分析する「国家情報会議」という諮問会議がある。この会議は大統領が政策を実行するための資料として、4年に1度の頻度で、「グローバル・トレンド」という報告書を作成して公表している。その最新版は、2012年12月に発表された「グローバル・トレンド2030」。米国が国際情勢の現状と未来をどのように認識しているかを知る上で、大変参考になる有益な資料だ。この文書の要約は次の通りだ。
1991年のソ連邦崩壊で米国は世界の一極覇権国家となったが、2001年からのアフガニスタンなどへの武力介入で米国は6兆ドルを喪失し、2008年にはリーマン・ショックで米国は経済面での国際信用を失ってしまった。冷戦終了後の米国は中国を支援していくことが世界経済にとっても有益であると判断。2000年には中国のWTOへの参加を承認し、最恵国待遇で加盟させ、その結果、中国は世界における生産拠点として投資が集まり、経済成長を加速させることになった。中国は経済大国として大きく成長してくると、軍事力を強化する政策をとって太平洋の覇権を要求するようになってきた。
面白いのはここから先で、報告書では、「2030年までに米国は覇権国家としての地位を失うであろう」と正式に認めているのだ。経済面では、2020年代に中国が世界最大の経済大国になり、2030年の米国は「同レベルのなかでのトップ」(The first among equals)の地位にいるであろうと予測している。米国にとって今後の「最善のシナリオ」は「米国と中国が協力していくこと」との認識も公表している。オバマ政権のケリー国務長官は上院において、「中国はアメリカと敵対関係にあるのではなく、両国はパートナーとして、共存共栄関係になるべきである」と演説し、米中のパートナーシップを提唱した。ヘンリー・キッシンジャーは、「覇権国家の衰退と新興国家による台頭によるパワーの不均衡が戦争を引き起こす。米国の衰退と中国の台頭が、このような事態を引き起こすのを回避すべく、米中は協力関係の構築に向けて努力すべきである」と述べている。
■ニクソン・ショック再来の可能性も
さて、衰退していく覇権国には共通点がある。
第1に、国際システムの構造を維持し権威を保持するために、自国の国力を増強すること、第2に、同じ目的で覇権国家としての経費を削減することである。今の米国に当てはめてみると、国際システムの構造を維持することは、「通貨ドルの権威(決済)」を維持することだ。トランプ新大統領が「アメリカは核武装を強化する、日本やNATOなどの同盟国は軍隊の維持費を払え」と言うのは、覇権衰退国の理にかなった発言である。
中国は米国債を1.2兆ドルも保有しているので、米国は中国に「首根っこ」を握られており、動きが取れない状態にある。この原因は中国の対米貿易が輸出超過で年2000億ドルの黒字になることだ。そこでトランプは、「貿易不均衡の是正」を求めている。
思い切ったことをするトランプは、日本に課したニクソン・ショック(1971年、日本輸入に一律15%の関税を課す)のように、短期間に効果が出る政策を打ち出すかもしれない。大騒ぎになるだろうが、これも覇権衰退国の巻き返しであり、新たな米中関係の始まりと見るべきなのである。
(おわり)
菊池英博
1936年生まれ。東京大学教養(国際関係論)卒、旧東京銀行を経て文京女子大学(現文京学院大学)経営学部・同大学院教授。2007年日本金融財政研究所所長。近著「新自由主義の自滅」(文春新書)。
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