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2015年に、中国フォースン・グループ傘下の上海豫園旅游商城に買収された「星野リゾート・トマム」(北海道)
「人民元保有は危ない」海外ホテル投資に走る中国人富裕層
http://diamond.jp/articles/-/114032
2017年1月13日 姫田小夏 [ジャーナリスト] ダイヤモンド・オンライン
近年、中国資本による海外のホテル投資が活況を呈している。記憶に新しいのは2014年、安邦保険集団(アンバン・インシュランス・グループ)によるアメリカの名門ホテル「ウォルドルフ・アストリア」の買収だ。2015年には上海錦江国際酒店が欧州第2位のホテルグループ「仏ルーブル・ホテルズ・グループ」を、復星国際(フォースン・グループ)が「クラブメッド」をそれぞれ買収し、世間を騒がせた。
背景にあるのは、中国人の海外旅行ブームである。香港上海銀行は「2024年には中国の年間の海外渡航者は、現在の1億人から2億人を上回る」と予測し、香港のシンクタンクであるフォン・ビジネス・インテリジェンスは「2020年に中国人の観光消費は4220億ドルになる」と予測。海外旅行する中国人の数と消費額が新たな市場を創設するだろうと見込まれている。
また、中国の経済誌「中国不動産金融」は「2016年1−5月の中国の投資家による海外不動産投資額は170億ドル、中でもホテルへの投資は71億元と42%を占めた」と報じる。ホテル投資は不動産の中でもダントツの投資額となった。
この勢いは日本にも上陸した。2015年はフォースン・グループ傘下の上海豫園旅游商城による星野リゾート・トマムの買収や、春秋航空によるホテルチェーンの参入(チェーン名:スプリング・サニー)が象徴的だったが、2016年も日本のホテル市場には中国の投資家たちの熱い視線が注がれた。ホテルのみならず、保養所や旅館の購入、民泊のための住居の購入など、宿泊施設への参入が一段と加速した。
■日本でホテルを持つことは
中国人富裕層のステイタス
唐輝氏(仮名)は、インバウンド業界におけるホテル経営のパイオニアといわれる人物だが、「日本にホテルを持つことは、いまや中国人富裕層のステイタスになっている」と話す。
海外の市場で有名ホテルが次々と中国資本に買収されている状況の中、隣国の日本では、2020年の東京五輪の開催とそれに伴う客室需要増が見込まれている。こうしたことから、日本のホテルをはじめとする宿泊施設は“中国人富裕層必見の投資先”となっているというのだ。
「例えば、富士山の山麓には利用されなくなった保養所や古びたホテルなどがたくさんありますが、こうした人里離れた山道に、たびたび中国人を載せた車が行き交うのも、投資先を探す中国人が増えているためです」と唐輝氏は語る。
中国資本によるホテル経営の増加とその賛否については、以前から日本でも話題となるところだが、今回取り上げるのはもうひとつの新たな傾向だ。ここにきて、中国資本によるホテル投資の動機は「インバウンド狙いではなくなった」というのだ。
■1億円の物件を10億で…
盛られた価格に手を出す理由
「一人5000万円、投資家を5人集めて出資させれば、2億5000万円のホテルが購入できる」と唐輝氏は前置きし、会社の株主がそれぞれ出資するプロジェクトとしての投資が増えていることを示唆する。取引事例の中には転売も見られ、金額は高額化する傾向もある。
「1億円で売り出された富士山麓の物件を中国資本が3億円で購入し、さらにそれを10億円で転売する。今はそれでも買い手がつく状況なのです」(同)
言い値で購入というのは尋常ではない。中国人の不動産投資といえば「言い値で買わない」どころか、「半値以下にまで買い叩く」などのハードネゴに徹するケースが多いからだ。
「10億円」だと吹っ掛けられても、それでも中国の主要都市に比べて安いためでもあるだろう。あるいは、それが2つとない希少物件なのかもしれない。「10億円でも構わない」と思わせるほど、中国人の間でホテル投資は最高潮に達していると解釈することもできる。
だが、「彼らの購入動機はもはや『儲け狙い』ではない」と唐輝氏が示唆するように、投資家の心理にあるのは「とにかく人民元を海外に移転させたい」という一念だ。
今、中国人投資家の頭には、手持ちの人民元を海外に移すことしかない。彼らもまた日本の観光資源に魅了された人たちでもあるが、それ以上に切実なのは「人民元の価値の目減り」だ。ホテル投資の中には、資金の海外移転のためにわざわざ仕立て上げたプロジェクトもある。
「人民元を持っていると危ない」――上海から聞こえてくる富裕層たちのささやき声だ。「最悪とはいえないこの時期だからこそ、一気に海外移転を成功させたい」(上海在住の富裕層)、そんな思いが強まっている。
■ホテル投資は早くも幕引きか?
中国当局が外貨持ち出し規制を強化
その一方で、中国資本によるホテル投資もそろそろ幕引きか、という憶測が飛ぶ。
中国外貨管理局がさらなる外貨持ち出しの規制強化に乗り出したからだ。中国からの資金流出は一向に歯止めがかからず、2014年に4兆ドルに迫った外貨準備高は、2016年末には3兆ドルを割りこむ寸前にまで陥った。
中国では「年間一人当たり5万ドル」までできた個人の人民元の外貨両替も困難になっている。当局は今年1月から、銀行での申請書に送金金額の用途や利用の期限までをも記入させるようになったのだ。
また、銀聯カードでの海外ATMを利用した外貨引き出しも不便さを増している。2016年初から引き出し額に年間10万元(約190万円)の上限が設けられた上、従来は一度に1万元を限度に引き出せた外貨も、最近はそれができなくなった。「偽造された銀聯カードによる不正引き出しがあったため」(銀聯国際)というが、これもまた「外貨持ち出し」を規制したい中国政府の思惑と無関係ではないだろう。
注目したいのが、2016年12月6日に行われた、発展改革委員会、商務部、人民銀行、外貨管理局の4部門合同の記者会見だ。ここで焦点となったのは「対外投資に対する当局の管理強化」だ。
この会見で当局は「不動産、ホテル、映画、娯楽、スポーツクラブなどの領域において非理性的な対外投資の傾向がある」と指摘。中国の専門家の間では「この5業種の投資プロジェクトの海外投資については、今後厳しい審査が設けられる可能性がある」とする懸念が高まっている。
奇しくもこの日、北京では日本貿易振興機構(ジェトロ)による「訪日ビジネスフォーラム」が開催され、中国の投資家に向けて日本のホテル投資の魅力が呼び掛けられていた。
経済産業省所管の独立行政法人であるジェトロが先頭に立って中国資本を誘致する背景には、赤字経営の宿泊施設の救済、ひいては日本の地方経済の救済があるだろうが、今後はこうした活動にも影響が出る可能性がある。
一方、当の中国にとっても大きなジレンマとなる。中国政府が2000年代から奨励してきた「走出去」(中国企業の対外投資)だが、資金流出の増加の懸念からブレーキを踏まざるを得ないからだ。中国人が大好きな“モノポリーゲーム”もここで「一回休み」となりそうな気配だ。
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