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新入社員の文化適性を見極める方法
メールの言語スタイルが同僚と似ていれば職場で活躍する可能性が
ザッポス・ドット・コムではベテラン社員に対し、採用候補者が組織に合わない可能性があると判断した場合、拒否できる権利を与えている。写真は同社の社員研修の様子
By JOANN S. LUBLIN
2017 年 1 月 12 日 11:59 JST
企業は新たな人材を採用する際、自社の文化に適合するかどうかの評価に力を入れているが、それでも新規採用者が必ずしも会社にフィットするとは限らない。
そこで役立ちそうなのが、新規採用者の電子メールの分析だ。
カリフォルニアの研究者チームは、人材採用で文化的な適性(カルチャーフィット)を重視している中規模のテクノロジー企業を対象に、この奇抜な方法を用いて新規採用者が会社に順応できるか、やめるかを予測した。1020万通に及ぶ社内のメッセージを調べた結果、会社にとどまり、活躍した人たちは同僚と似た言語スタイルを使用していたことが明らかになった。
同調査によると、文化適性が高い新入社員は管理職に昇進する確率が高かった。退職した人たちは、在職期間の中ほどから終わりにかけて文化適性が低下していた。また、文化適性が低い人たちは3年目以降に解雇される確率が4倍高かった。
調査では、ののしりの言葉や前向きな感情表現、具体的な比喩の使用など言語スタイルに関する64のカテゴリーを分析した。
例えば、営業担当者は頻繁にののしりの言葉を口にしていた。調査を率いたカリフォルニア大学バークレー校経営大学院のサマー・スリバスタバ助教は、適合したいという意欲が強い新入社員は「メールで同僚と同じくらい悪態をつく必要があった」と指摘する。
それとは対照的に、解雇された人たちは「組織に入った瞬間から言語的に同僚に合わせることができていなかった」という。
企業によると、職場で活躍できるかどうかは文化適性によって決まる場合が多い。例えば、ネット通販サイト、ザッポス・ドット・コムではベテラン社員に対し、採用候補者が組織に合わない可能性があると判断した場合、拒否できる権利を与えている。たとえその人が職務に適した能力を持っているとしてもだ。
スリバスタバ氏は、企業は「採用基準を適合性から適応性に変える」べきだと指摘。適応性の高い社員の方がいずれ優れた業績を上げるからだと説明した。
調査はスリバスタバ氏とスタンフォード大学経営大学院のアミール・ゴールドバーグ准教授(組織行動学)が主導し、対象企業の正社員601人が2009〜14年にやり取りしたメールを分析した。調査論文は近くマネジメント・サイエンス誌に掲載される予定。
スリバスタバ氏によると、電子メールの内容を基に文化適性を測定した例はほとんどない。これまでは通常、主観的なリポートを頼りにしていた。
論文によると、文化適性の測定にメールを使用したのは、言語は「組織的統合の根底にある複雑なプロセスの行動パターン」を表しているためだ。
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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiHnqPEo7zRAhVBoZQKHaDjDEgQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12198237174475043532204582552450243293054&usg=AFQjCNFUIcAhsQbsX2dskcyYcIc6EZrMnQ
人手不足の本番はこれからだ やりがいを感じられる職場作りが急務
記者の眼
2017年1月12日(木)
水野 孝彦
大手ファミリーレストランが24時間営業を見直して営業時間を短縮するなど、人手不足の影響が広がっている。
アルバイト求人情報サービス「an」を運営するインテリジェンスによると2016年11月のアルバイト時給(173職種)の全国平均は1007円。前年同月比で21カ月連続の時給上昇で1000円越えは3カ月連続。同調査での外食(フード系)の平均時給は968円と全業種の平均に比べて賃金は低いものの人手不足はより深刻だ。2016年11月の外食(飲食物調理の職業)の有効求人倍率(実数)は3.13倍。全職業平均の1.31倍と比べてもかなり高い。
an編集長の上土達哉氏によると外食業界では昨年の秋以降、「既存店の人手不足が深刻で、新規出店ができない企業も出てきている。これまでは週3日の出勤が採用の条件だったが、それを週1日でも容認するといった勤務条件の緩和も増えている」という。
人手不足が深刻になる中で、外国人労働力の重要性も高まっている。サービス産業向けに動画を活用した人材教育システムを提供しているジェネックスソリューションズ(東京都港区、高橋勇人社長)は2016年12月より、5つの言語(英語、中国語、ベトナム語、ミャンマー語、日本語)で外国人従業員が接客マナーや作業ノウハウを学べる動画提供サービスを開始した。既に吉野家と養老乃瀧が導入している。飲食店やサービス業の店で働く外国人留学生に日本と母国との文化や接客マナーの違いなどを動画で教えることで、現場での教育の負担を減らすことが狙いだ。
ジェネックスソリューションズが提供する動画の例。左は外国人が疑問に思っていることを説明する動画の1シーン。右は日本人は「検討」という言葉に様々なニュアンスを込めていることを説明する動画の1シーン。
記者の感覚からすると、現在の外食産業の深刻な求人難は2006年頃から2008年のリーマン・ショック直前までの状態とよく似ていると感じる。当時の外食産業ではパート・アルバイトを正社員にすることなどで、人材を囲い込む動きが広がりつつあった。しかし、その後のリーマン・ショックで消費は冷え込んでしまって、そうした動きは立ち消えになっていった。しかし、今回は違った展開になるだろう。現在の人手不足はまだ序盤戦で、これからが本番だと考えるからだ。
失業率はまだまだ下がる
その根拠は、日本銀行がデフレ脱却に向けた金融緩和を推進中であること。日銀は「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」という方針を明示している。目標とされている消費者物価指数(除く生鮮食品)は2016年11月で-0.4%。2%を超えた状態で安定するまでの道のりはまだ遠い。
物価が安定して上昇するには経済が活性化して失業率が改善し、賃金が力強く上昇する必要がある。2016年11月の完全失業率(季節調整値)は3.1%で、これは歴史的な低水準とされている。だからこそ人手不足も深刻だと感じるわけだが、消費者物価指数(除く生鮮食品)が目標の2%からはほど遠い以上、さらに完全失業率を引き下げる余地がある。政府や日銀はそれを望むはずで、外食を含む様々な業種でさらに人手不足が進むということでもある。
人手不足の時代は客単価アップの好機でもある
もっともそうした状態は、悪いことではなくてむしろ企業にとっても望ましい状態だ。以前より、多くの人が職に就き、時給が上昇して前よりも収入が増えているということは、それだけ消費にも積極的になるためだ。実際、an編集長の上土氏によると高単価商品を投入し、客単価アップを図る動きが活発化しているという。狙い通りに客単価アップを果たせば、人件費の増加も吸収できる。
従来より高価な商品を売るには、お客から信頼される優秀な人材が欠かせない。外食専門のコンサルタント、アップ・トレンド・クリエイツの代表の白岩大樹氏は「スタッフとのコミュニケーションが、今まで以上に重要になる」と話す。
人手不足による採用条件の緩和で、店側から要請してもシフトに週1、2回しか入ってくれないスタッフが増えている。そうした条件で集めた以上は致し方ないことだが、だからこそスタッフが足りないときにシフトに入ってくれるモチベーションの高いスタッフを見出すことが今まで以上に大切になる。同時に、そうしたスタッフは仕事への取り組みも熱心なので必然的に接客スキルも高くなり、高単価商品を売っていくうえでも欠かせない戦力になるはずだ。
努力をほめることが大切
問題は、店側に協力して積極的にシフトに入ってくれるスタッフをどうやって見出すかだが、それは店長や社員がスタッフの働きぶりを日頃からよく見て、「何か新しい仕事を覚えたり、良いサービスでお客に喜ばれていたら、それをほめることが大切」と白岩氏は指摘する。外食で働く人は基本的に人とコミュニケーションを取るのが好きか、あるいはそうしたスキルを高めたいと思っている。その努力をほめることで、初めて店への帰属意識や参加意識が芽生える。店で働くことに満足しているスタッフは友人・知人を新たなパート・アルバイトとして紹介してくれる可能性も高い。それは、求人費用の節約にもなる。
今後、さらに人手不足が進むことで外食企業はお客からだけではなく、従業員からも「選別」されていることを一層意識せざる得なくなる。そうした傾向は外食にとどまらず、他産業にも広がっていくはずで、やりがいを感じられる職場作りがあらゆる職場で今まで以上に求められるだろう。
このコラムについて
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/011100386/?
リスク満載、それでも倒れないユーロ圏
ユーロ圏は今年、政治リスクが満載だが引き続き危機を克服しそうだ
By SIMON NIXON
2017 年 1 月 12 日 17:26 JST
最近、欧州経済に関する良いニュースには誰もあまり興味がなさそうだ。
投資家や政策当局者の間では、政治リスクとそれがユーロ圏債務危機を再び引き起こす可能性についての話で持ちきりだ。英国の政界では、国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まってからユーロ圏の政治リスクを巡る議論が熱を帯びている。EU離脱派の間では、ユーロ圏諸国は域内の情勢が悪化すればするほど、英国とのEU離脱交渉で妥協に傾くとの見方が大勢だ。
この論理には同意しかねる。確かに欧州が直面している政治リスクは現実のもので、これまでに何度も取り上げられてきた。オランダやフランス、ドイツ(おそらくイタリアも)など今年選挙が予定されている国のいずれかで反EUを掲げるポピュリスト政党が勝った場合、欧州の政治は間違いなく混乱に陥るだろう。
昨年は政治面で衝撃的な出来事が相次いだが、現時点でそれらがテールリスクになる確率は低そうだ。実際、5月のフランス大統領選で極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン氏が当選するという、市場にとって最大の政治リスクが現実とする可能性は低下しつつあるようだ。最新の世論調査によると、無所属中道派のエマニュエル・マクロン氏が勢いを増しており、ルペン氏は決選投票に進むために三つどもえの戦いを強いられている。マクロン氏はサプライサイド(供給側)の改革という市場寄りの政治綱領を掲げている。
さらに、2016年の状況から、欧州経済には政治的ショックに対する耐性があることが証明された。ユーロ圏経済は3年にわたり緩やかながらも着実に回復しているが、最近の経済指標は、公共・民間投資の増加や世界経済見通しの改善、超低金利、ユーロ安を追い風に、景気回復に弾みがつく可能性を示唆している。
16年12月のユーロ圏製造業景況指数(PMI)は11年5月以来の高水準となったほか、欧州委員会が発表した12月の消費者信頼感指数は11年3月以来の高水準に達した。
また、ユーロ圏全体で失業率が低下している。ドイツは4.1%と、再統一以降で最も低い水準となっている。スペインでは13年以降、雇用が160万件増えた。フランスの昨年10-12月期の鉱工業生産は予想をはるかに上回った。イタリアでは、可処分所得の増加率が01年以来の高水準に達した。当然のことながら、多くのエコノミストがユーロ圏の17年の経済成長率とインフレ率の見通しを引き上げる準備を進めている。景気が回復すれば、財政状況が改善し、負債比率も低下して政府に対する政治的圧力が緩和されるだろう。
もちろん、歴史的な水準から見れば、足元の景気回復は弱い。多くのエコノミストは、今年のユーロ圏の経済成長率は1.5%前後になると予想している。もっと心配なのは、ユーロ圏の長期的な潜在成長率予想の大半がこの数字さえも下回っていることだ。
その背景には人口動態の悪化と生産性の伸びの低さがある。教育・司法制度と労働・製品市場のサプライサイド改革によって生産性を高める断固たる措置が取られなければ、一部の南欧諸国の負債比率の低下ペースが鈍るだろう。つまり、ユーロ圏はショックに対して脆弱(ぜいじゃく)なままとなる。
差し迫る潜在的なショックは枚挙にいとまがない。イタリアの銀行システムの問題やギリシャ救済の行き詰まり、ポルトガルの金融安定に対する懸念の高まり、英国のEU離脱などで、行く手は険しそうだ。
景気回復が資産バブルを生み出したり、インフレ率を押し上げたりすることも経済面のリスクだ。今のところ、こうした状況が起こる兆しはほとんどない。アムステルダムや、ドイツの一部、ダブリンなどユーロ圏の一部では住宅価格が急上昇しているが、中央銀行が警戒するほどではない。
また、昨年12月のユーロ圏の総合インフレ率は市場予想の1.5%を大きく上回ったが、これはエネルギー価格の上昇が主因で、食品やエネルギーを除いたコアインフレ率は0.1ポイント上昇の1.0%にとどまった。とはいえ、インフレ率が2%弱という欧州中央銀行(ECB)の目標に再び到達する兆しが現れれば、欧州北部でECBの債券購入プログラムに対する政治的反発が強まるのは必至だ。
ECBは昨年12月、今年は債券の買い入れ額を月額600億ユーロに減らすと決めたばかりだが、市場ではさらに買い入れ規模を縮小する可能性がうわさされている。ECBが量的緩和策を縮小する準備を進めている兆しを見せれば、ECBの施策によって借り入れコストを抑えている一部の南欧諸国にとって問題が生じる恐れがある。これらの国々は、借り入れコストの低下で財政政策の緩和が可能になっているからだ。
そのため、ECBが今年、政策変更を求める圧力に屈する公算は小さい。同行が量的緩和策の期限を、選挙日程の先の17年末に延長し、政治リスクを和らげることを決めた理由の1つはこれらの懸念だった。
ユーロ圏はこれまで、7年に及ぶ危機を何とか乗り切ってきたが、今年もそうした展開が続く可能性が高い。
閣僚人事で占うトランプ・ラリーの持続性 根拠なき楽観は捨てよ
政治と市場の“正しい”見方
2017年1月12日(木)
門司 総一郎
労働長官に指名されたアンドルー・パズダー氏(右)は、果たして最低賃金を引き上げるか(写真:AP/アフロ)
米国の大統領選におけるドナルド・トランプ氏の勝利をきっかけに日米の株式市場は上昇。為替市場では円安(ドル高)が進みました。いわゆる「トランプ・ラリー」です。
このトランプ・ラリーには賛否両論があります。1つは「大規模な減税やインフラ投資で米国をはじめとする世界の経済成長が加速。株価も上昇する」といった楽観的な見方です。
もう1つは、「トランプ氏は公約通りに保護貿易策や移民に対する規制強化を実施する。そうなれば内向き志向が世界的に強まり、経済も株式市場も停滞する」との慎重な見方です。
トランプ政権の閣僚・閣僚級高官(以下、単に閣僚)人事がほぼ出そろいました。今回はこの閣僚人事を手掛かりにトランプ・ラリーの持続性について考えてみます。
曲者ぞろいのトランプ政権
トランプ氏の閣僚人事の特色は、一癖も二癖もありそうな人物が多いことです。バランス感覚や協調性に富んだ人物よりも、強い信念を持ち、それに向かって突き進むタイプが多いように見えます。
例えば、司法長官に指名されたジェフ・セッションズ上院議員。共和党内でも屈指の保守強硬派といわれ、白人優越主義者の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)を肯定的に語ったこともある人物です(後で否定しました)。不法移民に対する厳しい態度でも知られています。このセッションズ氏が司法長官として移民問題に携わる可能性が高い。そうなれば、トランプ政権の移民対策は当然かなり厳しいものになると予想されます。
労働長官に指名されたアンドルー・パズダー氏は大手ファストフード・チェーン、CKEレストランツの最高経営責任者(CEO)です。バラク・オバマ大統領が進めた最低賃金の引き上げや労働規制への反対派として知られています。
大統領選において、トランプ氏は当初、最低賃金の引き上げに慎重でした。それが、ライバルのヒラリー・クリントン氏が引き上げを主張したことから、途中で引き上げ支持に転じたのです。しかし、この人事を見ると最低賃金引き上げは口先だけで、本気で実行する気はないように思えます。
厚生長官に指名されたトム・プライス下院予算委員長は整形外科医でもあります。オバマ氏の医療制度改革(オバマケア)に強く反対してきた人物で、トランプ氏はプライス氏の起用について、オバマケアを廃止する(または新たな制度との置き換え)ためのものであると明言しています。
エネルギー長官に指名されたリック・ペリー前テキサス州知事は地球温暖化に懐疑的で、オバマ政権のシェールガス・オイル採掘規制に反対しています。
また環境保護局(EPA)長官に指名されたスコット・プルイット・オクラホマ州司法長官は地球温暖化に関する規制に反対で、オバマ政権が導入した火力発電所の排出規制の無効を求めて訴訟を起こした人物です。この訴訟は最終的に全米の半数以上の州が加わる集団訴訟になり、オバマ氏在任中の規制導入を阻むこととなりました。そのため、プルイット氏は規制反対派から功労者として評価されています。
トランプ氏は大統領選でパリ条約からの離脱や石油採掘規制の撤廃などを公約として掲げました。ペリー氏とプルイット氏の起用はこの公約を実行する強い意志を示すものと思われます。オバマ政権は地球温暖化防止や環境保護に重点を置いた環境政策、エネルギー政策を進めてきましたが、トランプ政権による方向転換は必至でしょう。
タカ派色が強い軍出身者
軍幹部出身者が3人と多いのもトランプ政権の特徴です。こちらも個性的な人物が並びます。国家安全保障担当補佐官に指名されたマイケル・フリン氏は元陸軍中将で、オバマ政権で国防情報局長を務めた人物です。しかし、中東政策で意見が折り合わなかったため解任。その後はオバマ批判に転じ、大統領選ではトランプ氏の外交政策アドバイザーを務めました。
イスラム教徒に対する厳しい発言で知られており、対テロではロシアとの協調を唱えています。このフリン氏の見方が、トランプ氏のロシア観に影響しているとの指摘があります。
国防長官に指名されたジェームズ・マティス元中央軍司令官は「敵を撃つのは楽しくて仕方ない」(日本経済新聞、2016年12月3日)などの発言で物議を醸した人物で、「狂犬」の異名があります。また対イラン強硬派としても知られています。
マティス氏は上院での承認が不安視されている閣僚候補の1人でもあります。米国では、大統領が指名した人物が閣僚に就任するためには上院の承認を得る必要があります。過激な発言が物議を呼んでいるのが理由の一つ。また軍人は退役後7年を経過しないと国防長官に就任できないとの規則があり、2013年に退役したばかりのマティス氏が就任するには特別な手続きが必要であることも理由に挙げられています。
この2人に比べて比較的癖がない印象があるのが、国土安全保障長官に指名されたジョン・ケリー氏です。南方軍司令官としてメキシコなど中南米を担当した経歴の持ち主で「メキシコとの国境の不十分な警備が(麻薬やテロリストの流入を通じた)国家安全保障上の脅威だ」(ロイター、2016年12月7日)と発言したことがあります。
トランプ氏はケリー氏を指名するに当たって「急務である不法移民の流入阻止や、国境警備の陣頭指揮にふさわしい人物だ」(時事通信、2016年12月12日)とコメントしており、壁の建設を含むメキシコとの国境管理やテロ対策などを担当すると見られています。
通商政策担当は対中強硬論者
通商政策を担当するのは新設の国家通商会議(NTC)。そのトップを務めるのが担当の大統領補佐官に指名されたカリフォルニア大アーバイン校のピーター・ナバロ教授です。
ナバロ氏は筋金入りの対中強硬派として知られています。『米中もし戦わば』との著作があるほか、中国からの輸出の増加が米国の製造業に与えた打撃を取り上げた映画「Death of China」を監督したりしています。大統領選でも対中政策についてトランプ氏にアドバイス。トランプ氏が主張した為替操作国としての指定や中国製品に対する45%の関税などは「いずれもナバロが知恵をつけた」(日経、2016年12月23日)と報じられています。
NTCの下で通商交渉の実働部隊としての役割を担うのが米通商代表部(USTR)です。そのトップ(米通商代表部代表)に指名されたのが、やはり対中強硬派として名を馳せるロバート・ライトハイザー氏です。
ライトハイザー氏はレーガン政権下でUSTRの次席代表を務め、日米鉄鋼交渉で日本に鉄鋼の輸出自主規制をのませた実績があります。またその後もUSスチールの顧問弁護士として中国鉄鋼メーカーの輸出をダンピングと非難、米政府にアンチ・ダンピング関税の適用を再三求めてきました。まさにタフ・ネゴシエーターといった印象のある人物です。
この人選を見るとトランプ政権の通商政策における当面のテーマは対中貿易赤字の是正となりそうです。その後は他の国と交渉を行うことになるでしょう。ナバロ氏、ライトハイザー氏のいずれも多国間の自由貿易よりも二国間の交渉を重視する立場であるため、環太平洋経済連携協定(TPP)が発足する見通しは立ちにくく、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しも否定できない状況が続くと思われます。
閣僚人事から見える3つのこと
以上、トランプ政権の閣僚候補を紹介してきました。この顔ぶれから見えてくることは3つあります。以下に紹介します。
1.トランプ氏はやる時はやる
冒頭に述べたように、トランプ・ラリーの持続性を楽観視する人々は、慎重派が懸念する保護貿易や移民への規制強化について「トランプも大統領になれば、無茶はしない」と高を括っているようです。しかし、この人事を見る限りトランプ氏に手加減するつもりはなさそうです。移民に対する規制強化にしても通商政策にしても、選挙戦中のトランプ氏の公約を実行するにふさわしい面々が担当者に指名されています。
市場参加者は安易な楽観論に与するのでなく、トランプ氏は自分たちに都合の悪いことでも実行する時はするというリスクを肝に銘じておくべきでしょう。
2.トランプ氏はやらない時はやらない
既に述べたように、最低賃金引き上げは元々トランプ氏の公約に入っていませんでした。クリントン氏への対抗上、トランプ氏も賃上げ支持に転じたわけです。パズダー氏の起用を見ると、本気でやる気はないようです。この最低賃金引き上げと似ているのが、インフラ投資です。
10年間で1兆ドルのインフラ投資は大規模減税と並ぶ楽観派の拠り所です。ですが、トランプ氏の公約に元々あったのは「インフラ投資」のみで、金額は入っていませんでした。日経テレコンで検索すると、「1兆ドル」と金額が載った記事が出てくるのは11月に入ってからです。
クリントン氏はインフラ投資を景気対策の柱に据えていました。その額は5年で2750億ドルです。定かではありませんが、トランプ氏はクリントン氏に対抗して、「5年で5500億ドル、10年で1兆ドル」ということで1兆ドルになったとの報道を見た記憶があります。
最低賃金の引き上げが選挙向けのリップ・サービスに終わるのであれば、インフラ投資がそうなってもおかしくありません。ゼロ回答はないにしても、話半分以下に聞いておく方が無難と思われます。
3.最優先課題はオバマ政権の否定
ここまでの閣僚人事を見ると、トランプ氏にとっての優先課題はオバマ政権の実績を否定することにあるように見えます――オバマケアの廃止、移民の規制強化、中東政策の見直しなど。一方、経済政策についてはあまり見えてきません。
景気が悪ければ、経済対策に力を入れるでしょうが、足元の米国経済は好調です。またオバマケアの廃止や移民政策の見直しなども公約として掲げたものであり、経済政策よりこちらを優先しても公約違反ではありません。
市場参加者は往々にして「経済最優先」の発想に陥りがちです。トランプ・ラリーに楽観的な市場参加者も、トランプ政権が経済を優先すると考えていると思います。ですが、トランプ政権は例外と考えるべきでしょう。
市場でもトランプ氏のツイッター口撃がトヨタ自動車に及んだのを見て、楽観論が萎み始めたようです。閣僚人事の観点からもトランプ・ラリーは根拠なき楽観に支えられたものであり、今後はその反動を警戒する必要があると考えています。
このコラムについて
政治と市場の“正しい”見方
今、日本は新政権の誕生で「政治」と「金融市場」の関係がこれまで以上に強まり、複雑化しています。さらに欧州の債務危機や米国の財政の崖、中国の新執行部選出など、政治と市場を巡る動きは、海外でも大きな焦点となっています。
しかし、市場関係者がこの両者の関係を論じる場合、「アベノミクスで日本は変わる」など物事を極めて単純化した主張になりがちで、十分な分析がなされているとは言えません。そこで、このコラムでは政治と市場の関係について深く考察し、読者の皆様に分かりやすく解説していきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/243048/011100013/
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