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トランプ相場がしぼむ可能性も 「1月11日」は大統領就任日より重要(写真=lev radin/Shutterstock.com)
トランプ相場がしぼむ可能性も 「1月11日」は大統領就任日より重要
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170111-00000020-zuuonline-bus_all
ZUU online 1/11(水) 19:09配信
慣例を破り、164日もの間、延期に延期を重ねてきたドナルド・トランプ次期米大統領の記者会見が、現地時間の1月11日にニューヨークで開かれる。トランプ氏は、意地悪な質問攻めにあうことが予想されているが、以前出演していたリアリティーショーのように、常識やルールをひっくり返し、攻撃的かつ一方的に自説を垂れる見世物になる可能性が強いとの予想もある。
しかし、トランプ氏が真摯に質問に答えようとも、会見を一方的な「施政演説」に変えてしまったとしても、そこには市場が反応する材料が必ず含まれる。投資家が会見の内容を、「経済施策に具体性がない」「中国などとの地政学的緊張を高める恐れがある」と判断すれば、トランプ次期大統領への期待から象徴的な20000ドル超え目前まで来た米ダウ平均が、失望売りで数百ドル下げるシナリオも考えられる。日本の株価も、当然つられて下げよう。
一方、特に経済施策について、建設的かつ実務的でそつのない答えが連発できれば、市場は「頼れるトランプ」を好感し、一気にダウ平均が20000ドルを超える局面になる可能性がある。また、対中関係や米国の中東政策について、安定性や予測性をもたらすような発言も、「買い」の材料だ。国内「トランプ相場」の上昇も、あと数週間は続くかもしれない。
いずれにせよ、市場にとっての重要イベントは、1月20日の就任式での格式ばった演説ではなく、トランプ次期大統領の「素」の考え方が、お得意の短文ツイートよりも具体的に表明される、1月11日の記者会見である。
頭がカミソリのように切れる側近であるキャリーアン・コンウェイ氏をはじめ、多くの顧問・側近が事前にトランプ氏に知恵をつけていることは想像に難くないが、そこは「すぐ感情的になる」「常識にとらわれない」「予測不能男」のトランプ氏、台本を無視して勝手にしゃべりたいことをしゃべり出す可能性も大だ。市場や投資家にとっても、ハラハラする展開が期待できる。
■市場が反応しそうな質問
米国において大統領に当選した者は、就任以前に何回か会見を開いて質問を受け、米国民や世界に、就任後の政策展開の方向性や展望を明確に語るのが「つとめ」であった。だが、トランプ氏は国民代表である記者との質疑の代わりに、一方的なツイートで「コミュニケーション」をとるスタイルを確立してしまい、米メディアの恨みを買っている。
すでにメディアでは、切れ味を研ぎ澄まされた質問の「刃物」が多数用意されている。「いかに自分が世界中で経営している不動産業やホテルなどのビジネスと、米国大統領としての利益相反を解消するのか」「自己が当選した米大統領選に、ロシアが影響力を行使したことを認めるか」など、容赦ない質問が飛び交うことが予想される。
ここでは特に、トランプ氏の発言に市場が敏感に反応しそうな問いを集めてみよう。まずは、「どのようにして、公約した1兆ドルものインフラ修復の財源を確保するのか」である。財政出動を示唆すれば、ただでさえ膨れ上がっている米財政赤字を悪化させるため、債券市場にとって大きな意味を持つ。また、「インフラ修復を行う官民パートナーシップへの税控除で対応する」と答えれば、公約した規模に本当に届くのか、実効性はあるのかなどの声が上がり、トランプ氏の経済政策全体に疑いが浮上して、「トランプ相場」がしぼむ可能性もある。
市場の大きな関心は、税制改革にも向けられている。大幅減税を約束するトランプ氏だが、「どのようにして財政赤字を増大させずに減税するのか」という質問にどう答えるのか、市場は注視している。また、トランプ氏がメキシコ国境に建設すると公言する「壁」についても、回答によっては、自由貿易の衰退と関連付けられ、製造業や流通はもちろんのこと、建設や運輸、果ては金融などの分野の株価に影響するかもしれない。
さらに、「財界やウォール街にやさしくするのか」という疑問も、市場の関心事だ。記者たちは、多分、このように問うだろう。「大統領選の期間、あなたはウォール街を攻撃して、支持を得た。なのに、あなたの『内閣』はウォール街出身者や富豪で固められている。有権者が納得すると思うか」。トランプ氏が自身の人事を弁護すれば、市場はそこにビジネス上の安定性と安心を見出し、相場は上げ続けることになろう。
■変質する大統領の記者会見
そもそも今回の記者会見は、メディア側がトランプ氏の利益相反について、説明を求め、12月中旬に予定されていたものだ。それが延期され続けただけではなく、トランプ氏側は、今回の会見を「記者会見」と呼ばず、「総合的なニュース会見」と位置付けている。その狙いは明らかだ。
まず、質問を利益相反に集中させないため、「総合的にあらゆる質問を受ける」としたことだ。次に、「権力者が責任追及を受ける」「メディアが権力を監視する」という、従来の記者会見のあり方をひっくり返し、「権力者がニュース作りを提供する」「メディアが権力側のニュースに合わせて踊る」場に換骨奪胎することである。
すでに全米ラジオ網NPRなどリベラル系のメディアは、こうした意図を見抜き、批判を加えている。しかし、トランプ氏が製造業の企業をツイートで締め上げ、攻撃を受けた多くの企業トップが音を上げて「降伏」「恭順の意の表明」をするなか、メディア企業の抵抗がいつまで続けられるのか、注目される。
政府を監視するメディアといえども、その多くは利潤を上げねばならない民間企業だ。トランプ氏は選挙中に米アマゾンを攻撃したが、再び攻撃すれば、アマゾンが所有する高級紙『ワシントン・ポスト』は独立を貫けるだろうか。
今回のトランプ氏の「総合的なニュース会見」に反応するのは、製造業などだけではなく、メディア企業やその持ち株会社の株価なのかもしれない。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)
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