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1970年代にいち早く先進国の仲間入りをし、「アジアの優等生」「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称えられ、新興アジアの成長をけん引した日本。今人口減少と潜在的な低成長にあえでいる。かつての栄光を取り戻す日は来るだろうか。写真は日銀。
<躍動!アジアの世紀(5)>“先導役”日本は復活できるか=異次元アベノミクスへの期待と不安?
http://www.recordchina.co.jp/a134138.html
2017年1月5日(木) 10時10分
1970年代にいち早く先進国の仲間入りをし、「アジアの優等生」「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称えられ、新興アジアの成長をけん引した日本。今人口減少と潜在的な低成長にあえでいる。かつての栄光を取り戻す日は来るだろうか。
第2次安倍政権は、4年前に誕生して以来、経済政策・アベノミクスを掲げ、デフレ脱却に向けた大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間需要を喚起する成長戦略の「3本の矢」で経済の好循環の実現を目指した。第2の矢(財政政策)を第1の矢(金融緩和)で支え、日銀に財政資金を用立てさせる「財政ファイナンス」の構図である。
◆「トリクルダウン」起きず
アベノミクスが志向した「富める者が富めば貧困層にも恩恵が及ぶ」という「トリクルダウン」は起きなかった。非正規や中小企業の労働者の賃金が思うように上がらず、貧富の格差は広がるばかり。しかも実質GDP(国内総生産)は、14年度0.9%減、15年度0.8%増と政府目標の実質2%成長に達していない。
経済協力開発機構(OECD)の経済見通しによると、日本の2016年の実質成長率は0.7%増と、前回の昨年11月の見通しから0・3ポイント引き下げられた。17年の成長率見通しは0・4%増と、同0・1ポイントの下方修正。世界経済全体の16年の見通しが3・0%増、17年は3・3%増と堅調だけに日本の低迷ぶりが際立つ。
財政制度審議会(財務相の諮問機関)の吉川洋会長(東大名誉教授)は、アベノミクスは失敗したと断じた上で、「日本には非正規雇用の増加や所得格差の拡大、将来の社会保障への不安といったさまざまな課題があり、これらを解決せずに経済の好転はない」と強調した。黒田春彦日銀総裁は異次元金融緩和により、2年以内に消費者物価指数で2%のインフレにすると約束したが、4年以上経っても、この目標達成は何度も先送りされ遠のくばかり。消費者物価は昨年12月まで9カ月連続のマイナスに沈んでいる。このままではデフレ脱却は到底困難だ。
日本政府の債務残高は1200兆円を超え、名目GDP比の2.5倍に迫り増加の一途。安倍政権の目標「2020年プライマリー・バランス黒字化」実現は絶望視されている。異次元緩和と事実上の“財政ファイナンス”に突っ込む。「財政ファイナンス」とは「中央銀行による国債引き受け」のこと。放漫財政と財政破綻や高インフレを招来し、国民に甚大な負担を負わせる結末を引き起こすため、現在ではほとんどの国が禁じている。
山口泰・元日本銀行副総裁は、アベノミクスの中核となっている日銀金融政策について、「2%のインフレ目標達成は困難であり、異次元金融緩和、マイナス金利などの副作用が非常に大きい」と指摘。黒田東彦日銀総裁が推進している(1)国債発行額の全量80兆円の引き受け(2)ETF(株式投資信託)を通じた株式6兆円購入―など中央銀行としては前例のない政策により、市場機能が働いていないと批判。基本的には成長戦略により生産性を上げなければならないがそうなっていないという。
◆多くの企業で日銀が筆頭株主に
ETF(株式投資信託)により巨大な投資家となった日銀は、多くの企業で筆頭株主になっている。中央銀行の株式購入は異例であり、中国人民銀行幹部から「日銀の資金コントロールは社会主義的統制の思想が入り込んで問題ではないか」と揶揄されるほど。日銀に加え年金基金も株式を大量に購入し、市場が管理相場になっているのは異常な事態といえる。。
須田美也子元日銀審議委員は、異次元緩和が行き詰まったのは「想定通り」と分析する。数年前から、日本の金融政策はすでに十分緩和状態にあり、どれほど大規模な追加策を投じても限界は見えていたという。実際、「黒田異次元緩和」の期間の年平均伸び率はGDPが0.62%、消費はマイナス0.28%、民間設備投資も1.72%と低迷。消費者物価はゼロ近辺を浮動している。
須田氏によると、企業業績が一時的に改善したのは金利効果ではなく、「近隣窮乏策」とも言える「円安」効果によるもの。国内投資や賃金上昇にはつながりにくく、外需・投資効果も顕在化しなかった。マイナス金利導入で金融緩和の副作用が顕在化し、保険・年金の運用利回りの低下などがマインド面を通じて経済活動に悪影響を与えた、と見る。
膨大な累積債務を解消する手段と、景気振興策の一石二鳥を狙った奇策まで浮上している。空中のヘリコプターから地上にばらまくように国民に直接資金を配る「ヘリコプターマネー」論だ。このアイデアは、減税や特別購入券などで国民に直接マネーをばら撒き、財政の赤字は中央銀行が負担することで、究極的に国の借金までも帳消しに出来る、という構想。しかし巨額軍事支出に伴う財政赤字を戦時国債など大量の貨幣発行で埋め合わせたドイツや日本では世界大戦後、異常なハイパーインフレに陥り、貨幣は紙切れ同然となった。こうした経験からヘリコプタ―マネー論は「天下の奇策」と言われタブー視されてきた。
◆2020年に深刻状態も
大型財政出動があれば、「政策当局がヘリコプターマネー政策と謳わなくても、市場は同政策に近い」と受け止め、市場を囃す材料とする可能性がある。しかし経済専門家の多くは「ヘリコプターマネー政策は副作用が大きく麻薬のようなもの。成長戦略推進により実体経済を強化し潜在成長力を高める真っ当な政策を地道に進めるべきだ」(シンクタンク首脳)などと指摘。「安易に導入すれば取り返しのつかないリスクに陥る」と警告している。
深刻な事態に直面しそうなのは2020年度以降。予定されている19年10月の消費税引き上げと、20年8月の東京五輪が日本経済に大きな影響を与える。消費増税前の「駆け込み」と「五輪景気」の2つの特需の反動減に直面してしまう。25年度にはいわゆる「団塊の世代」が75歳以上となり医療や介護の支出が膨らむ。政府与党が志向する「成長と分配の好循環」が「停滞と負担の悪循環」に陥らないよう、今から備える必要がある。(八牧浩行)
<完>
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