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ひきこもり新聞 創刊
12月31日 11時00分
「親が亡くなれば私もどうしようもなく死ぬでしょう」
「働くことは“不可能なこと”としてある」
ひきこもりの人や、ひきこもり経験のある人たちが、11月、新聞を創刊しました。長らく社会との関わりを断ってきた人たちが、なぜ外に向けて発信を始めたのか?
今、ひきこもりの人たちをめぐる課題に向き合おうとする当事者たちの姿を取材しました。(ネット報道部・蔵重龍)
ひきこもり新聞 なぜ発刊
「年末年始は、エネミー(敵)がやってくる」
「甥っ子、姪っ子にお年玉を上げるのを、うまく逃れる方法はないか」
先月創刊した、ひきこもり新聞の編集会議での話し合いの様子です。
なんだか軽い話をしているようですが、編集に関わる人たち全員が、ひきこもりの当事者か経験者です。
編集長の自宅を兼ねたアパートの一室が新聞の編集部。この日開かれた会議には16人が集まっていました。年齢は20代から50代まで、女性も数人いました。関東一円から、さらには仙台から来た人もいました。
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編集長の木村直弘さん(32)もひきこもりの経験があります。
大学受験に失敗して自宅で浪人していたころ、最初のひきこもりが始まりました。大学では、ゼミの同級生などと普通につきあえる状態でしたが、卒業後、弁護士を目指し司法試験の勉強するうちに、再びひきこもりがちになったといます。思うように勉強の成果が出ず、もんもんとする日々の中、両親からは、毎日のように「お前には弁護士なんて無理だ。早く就職しろ」と言われ続けました。
その後も、ひきこもりの状態が続いていましたが、両親との関係はどんどん険悪になり、両親のほうが自宅を出て別居することになりました。
そして去年5月、突然、両親が警察官を連れて木村さんのもとにやってきて、無理やり自宅から引き出されそうになったと言います。
そのとき木村さんは「怒りと恥ずかしさ」、そして「犯罪者扱いされたことに対する悔しさ」を感じたと言います。
その後、精神科の専門医の診療を受け、今はおおむねひきこもりの状態から回復しています。
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そんな木村さんが、新聞の発行を思い立ったのはことしの夏です。
ひきこもり支援の名の下に、強制的にひきこもりから脱せさせようとする一部の支援施設のことを知り、当事者の声を聞かず、生き方を否定するような対応を、自分が両親や社会から受けてきた対応と重ね合わせたと言います。
そして、社会が抱いているひきこもりのイメージを覆したいと、当事者の自助グループで知り合った人たちと「全国ひきこもり当事者連合会」を結成し、新聞の発行を決めました。
「マスメディアでは、ひきこもりは、無能で無気力で、努力をしない人間として取り上げられることが多く、実像を伝えていない。当事者の生の声を聞いて、思いを受け取ってほしい。本当のひきこもりは自分のことを語れないとも言われていますが、そうした人の声こそ、なんらかの方法で届けていきたい」(木村さん)
創刊号 悲痛な叫びが紙面に
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当事者たちの生の声を伝えようと創刊された「ひきこもり新聞」。
先月発行された創刊号に寄せられた当事者の男性の手記には、次のような言葉がありました。
「今も自らをコントロールできる自信がありません」
「働くことや集団にコミットすることは“不可能なこと”としてある」
「親が亡くなれば私もどうしようもなく死ぬでしょう」
10年以上ひきこもりを続けている埼玉県の男性が、メールで編集部に寄せたものです。
創刊号には、このほか▽長年ひきこもりの研究を続けている精神科医のインタビュー記事▽ひきこもりの恋愛についての話題▽家族や当事者どうしがつながりあうイベントなどの情報も掲載されています。
創刊号は、2000部が印刷され、一部500円で販売しています(ひきこもりの当事者は100円)。これまでに、全国に50団体以上あるひきこもりの子どもを持つ親の会のメンバーや関係者を中心に、600部ほどが売れたといいます。今後は、隔月で発行する予定です。
ひきこもりの高齢化 熱い議論
取材をした、この日の編集会議では、来年3月に発行する3月号の特集について、取材方針や編集内容の議論が行われました。
特集のテーマは「ひきこもりの高齢化」です。
ひきこもりの当事者が50代に、親が80代になっているケースもあり「80・50問題」などとも呼ばれています。
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この日の編集会議の参加者の中にも、その当事者がいました。
「このまま一人で死んで、誰にも気付かれず部屋で死体が腐っていくことを毎日のように考えてしまう」
こう話す54歳の男性は、足かけ30年ほどひきこもりの状態で、今でも当事者どうしの集まりに出る以外は、ほとんど部屋に閉じこもっていると言います。
また、若いころには中学校で教べんをとった経験もあり、常に社会復帰を望んできたと言う50歳の男性は「私は諦めていない。いつでも働きたいという意欲はある。だから苦しい。たとえ中高年でも、やる気のある人は新人として受け入れられる社会になってほしい」と訴えました。
40歳の女性は「ひきこもりの人はみな、お金に苦しんでいて、バイトの面接で出した履歴書を返して欲しいと言う人も多くいる。公的な就職支援の対象年齢は、39歳までのところが多く、40歳になって強い焦りを感じている」と話し、ひきこもりの人が置かれている社会的な構造から解きほぐした記事を書くべきだと訴えました。
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当事者たちが話し合うだけに議論は白熱し、それぞれが知り合いをたどって、少しでも多く生の声を伝えていく方針を確認しました。
自分が死んだあとは 高齢の親が直面するお金の悩み
編集長の木村さんは、実際に取材にも足を運びます。
この日は、「ひきこもりの高齢化」をめぐって、NPOが主催した都内でのイベントを取材しました。
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ファイナンシャルプランナーらが、中高年のひきこもりの子どもを抱える高齢の親たちの生活設計について、相談を受け付ける座談会です。
42歳の次男がひきこもっている埼玉の女性は「就労は何度もチェレンジしているが、40歳をすぎると非常にむつかしい。自分が死んだあとに、子どもに何を残せるのか、切実なことです」と話していました。
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また、まもなく40歳になる息子を持つ千葉の60代の男性は「これまで具体的に考えることを逃げてきたかもしれないと気付かされた。親としての覚悟がいるのだと思った」と話していました。
取材を終えた木村さんは「親の声を直接聞けたのは大変よかった。お金の話がとても大切なのだと改めて感じた。記事作りにもいかしていきたい」と話していました。
ひきこもりが発信 その意味は
新聞の編集部には、さまざまな経歴を持った人が集まっています。
大学時代に社会人サークルの文芸雑誌の編集に携わった経験があり、IT技術にも詳しい30代の副編集長。アニメ制作の専門学校で学んだ経験があり、絵が得意な20代の女性。そのほか、漫画や音楽が得意な人など、それぞれの経験や得意分野を生かして、新聞作りを目指しています。
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取材した編集会議の話し合いは、懇親会も含めて9時間にもおよびました。
参加者たちの熱意と真剣さに圧倒されました。
ちょうど、「まとめ記事サイト」の問題が、メディアで話題になっていたため、自分たちの新聞が、事実を正確に伝えられるのか?ゆがんだ主張にならないか?どういった視点から取材すべきか?どうすればアピールできるか?などについて、取材をしていた私が、何度もたずねられました。
ひきこもり新聞では、『当事者としてのエピソード、メッセージ性を盛り込む』『私たちでなく、私は、で語る』など、編集のガイドラインについても、みんなで議論して決めています。
新聞を発行するということは、当事者どうしが互いに支えあうだけでなく、社会的な責任を連帯して負うことで、ひきこもりから脱却し、積極的に社会に関わっていくためのトライアル、積極的なリハビリのような役割も果たしていると感じました。
内閣府がことし発表した去年12月の時点での推計では、ひきこもりの人の数は全国でおよそ54万人。前回6年前の調査より長期化・高齢化の傾向がありました。ただ調査の対象は若者の支援が目的だったため、これは15歳から39歳までの人数です。40歳以上のひきこもりの実態はよくわかっておらず、一説では、中高年も含めると100万人はいるのではないかとも言われ、日本の将来を考えるうえで向き合うべき大きな社会問題となっています。
ひきこもりの当事者や経験をした人たちの生の声に耳を傾けることは、今こそ、日本社会に求められていることだと思います。
「ここにいる当事者や経験者たちは、ほかのひきこもりの人たちの体験を聞いてみな救われています。今はそれぞれが胸のうちに納めているひきこもりの体験・経験には、必ず意味があると思います。痛みや苦しみの経験は誰かを癒やすかもしれません。当事者が沈黙する時代を終わらせたい」(木村さん)
ネット報道部
蔵重龍 記者
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2016_1231.html
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