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円安ドル高が修正されれば、日本株は大幅な調整を狭まれる。「2017年も再度、円高局面がやって来る可能性がある」と筆者は予想する(写真:AP/アフロ)
2017年は再度大幅な円高になる危険性がある トランプ相場はいったん終了の可能性も
http://toyokeizai.net/articles/-/152129
2016年12月31日 江守 哲 :エモリキャピタルマネジメント代表取締役 東洋経済
2016年の日経平均株価は1万9114円で終了した。前年末と比較すると91円高であり、5年連続の「年足陽線引け」となった。これは市場のセンチメントの好転を示しているようにも見える。
■楽観的な2017年の見通しには要警戒
そこで、今回は2017年の市場動向について考えてみたい。正直なところ、不確定要素が多すぎて見通しがきわめて難しいのが本音である。また、すべての不安材料を取り上げて考慮に入れれば、とても投資などできない。不安や不透明感は常に存在する。一定の警戒は必要だが、一方で過剰に反応することもまた良くないことを2016年の市場で確認することとなった。
したがって、材料面にあまりに傾斜しすぎると、無用な心配ばかりすることになり、正しい判断をしづらくするだろう。逆に、楽観的になりすぎるのもよくない。11月8日の米国大統領選挙でのトランプ氏の勝利以降、ドル高・株高が加速し、一部にはかなり威勢の良い2017年の見通しが出始めるようになった。このような、現状追認の声にはむしろ警戒すべきだろう。
2015年と2016年の環境は異なるが、2015年の年末に「2016年はドル円135円、日経平均2万3000円に到達」などの超楽観的な見通しが紙面を踊っていたことを思い出すとよい。市場関係者の多くが出していたこれらの見通しが、ほぼ全滅だったことを考えると、予想や予測がいかに難しいか、である。前週の本欄「2017年に勝率が高くなる『株式投資法』とは?」でも解説したが、さまざまな予測や仮説を立てることは必要だが、それに固執しないことが重要だ。いかに柔軟に市場に対応できるかが今の市場では重要であり、そのような姿勢を忘れないようにしたい。
さて前置きが少し長くなったが、2017年の市場はどのようになるだろうか。筆者は少なくとも、いまの「トランプラリー」は過剰であり、本来は必要のない動きが起きていると考えている。それは、日米の株価水準やドル円の水準をみれば容易に理解できる。
もちろん相場である以上、市場参加者の思惑でとてつもない価格がつくことは少なくない。しかし、それは結果的に長続きしないだろう。現在の株高・ドル高を演出したのが、それまでショートしていたヘッジファンドであるわけだが、彼らの投資行動が変われば相場は簡単に崩れるだろう。そもそも、今の水準は複数の指標面から見て超割高であり、本来であれば手を出すべき水準ではないからである。
したがって、「トランプラリーに乗りそびれた」と考えているのであれば、それは誤りである。乗らないことが正解だからである。もちろんついた価格で取引をするのだから、上昇トレンドに乗って収益を上げることは可能である。しかし、トレンドにだけついていき、その背景がよくわからない場合には、その投資判断に再現性をもとめることはできない。
少なくとも筆者はそのようなスタンスで市場を見るようにしている。そのため、こうした表現になってしまうのだが、もちろん異論もあるはずだ。しかし、それは自身の考えであり、他人に押し付けるものでもなく、他人の考えを批判する必要すらない。今回のトランプラリーが終了し、株価やドルの水準が落ちてくれば、それはそれで当然と考えるのが筆者のスタンスである。そのように考えることができるのは、そこに明確なデータや分析が存在するからである。このようなスタンスでいれば、再現性が担保され、無用な心配をすることなく市場を見ることができる。
■ドル円の理論値は103円、ドル高は今後修正へ
その中でも筆者が注目しているポイントに、ドル円相場の水準がある。これは日本株の方向性を見極めるうえでも非常に重要だ。筆者は本欄で繰り返しドル円の割高感を指摘しているが、その背景には日米の実質金利差の縮小傾向がある。すでに解説しているので今回は省略するが、日米実質金利差から見たドル円の理論値は103円程度である。
ここで非常に興味深いのは、推計値との差の動きだ。筆者が計算している日米実質金利差から見た、ドル円の推計値と実勢値の差は、過去最大で15円程度である。そして、この水準まで拡大したときには、すべてのケースで大幅な円高によって修正が起きている。ここまで解説すれば、筆者が指摘したいことはご理解いただけるだろう。
つまり、理論値である103円から15円上の水準は118円であり、今回のドル円の上昇相場のピークである。したがって、過去の例から見れば、ドル円はすでにピークをつけ、今後は相応の調整を持って割高感が修正されることになる。
今、市場の大勢は「今後は日米金利差が拡大し、ドル円は上昇する」との見方だ。だがそれは「実質金利」の意味を理解していないのではないか。インフレ率は米国が先行して上昇する傾向にある。その結果、日米実質金利差はむしろ縮小し、これがドル円の下落、つまり円高圧力になる。こうなれば、当然、日本株が上昇するというシナリオにはならない。もちろん、相場はついた値段が正しいのだから、日経平均2万円程度までの到達は許容範囲だが、それ以上はドル円が130円を超えない限り、正当化されない。
日本のインフレ率が急上昇するのは早くて2017年後半以降であり、それまでは実質金利の低下がドル円の下押し圧力につながると考えるのが理論的である。最終的には正しい方向に行くのが相場であり、このままいくと、2017年には再び100円ちょうどを試す場面があっても不思議ではなく、むしろそうなる可能性が高いと考えるのが妥当ではないだろうか。これは感覚や期待・希望ではなく、あくまで理論的に計算した結果の見通しである。
■想定外の調整局面があれば「格好の買い場」に
そうなると、日経平均の妥当水準も1万6000円台前半というところに落ち着くことになる。100円を割り込めば、1万5500円から1万5000円割れの可能性も出てくる。ただし「100円割れ」は安倍政権も避けたい水準であろう。菅官房長官が先日の日本経済新聞のインタビューで、「為替の危機管理をやっている」と発言しているのをお読みになった方も少なくないはずだ。
「危機管理」が具体的に何を指すかは明確にされていないが、いろいろな取引があるのが為替である。しかし、それも「米国の承認」があっての話だと考えるのが普通だ。トランプ次期政権は依然としてドルに関する明確な方針を示していない。
しかし、国家経済会議(NEC)の委員長に就任する、ゴールドマン・サックス社長のゲーリー・コーン氏は「ドル高は米国にはよくない」と繰り返し指摘している。経済運営のかじ取りをするコーン氏の発言が、トランプ氏の考えを代弁しているのであれば、すでに答えは出ていると考えることもできる。ドル円は当然のように10円単位での調整を余儀なくされるだろう。
これまでのようなトランプ政権の期待が剥落するのが2017年であるとすれば、それは市場の想定外であり、大きな揺り戻しが起きることになる。しかし、筆者は2017年を2018年以降の強気相場の調整局面になると考えており、むしろこうした押し目は「よい買い場」になると考えている。
では、もしこうした筆者の予想とは裏腹に、相場がこのまま上昇し続けた場合はどうなるか。相場に乗り遅れることになるため、それを回避するためには前週の本欄で解説したように、資産の一部を少しずつ株式に投資しておくことだ。そうすれば乗り遅れをある程度避けられる。そして急落した場合には準備していた現金を利用して押し目を拾う。こうすれば、上昇した場合には保有株の含み益は徐々に増加することになるし、機会を逃すこともない。昨今の高いボラティリティ(変動率)を考慮すれば、投資額を絞りながら対応することは極めて重要なポイントになるだろう。
なお読者の皆さんの多くは株式投資や為替取引を中心に行っているだろうが、筆者が投資対象として最も注目しているのは、原油や金などのコモディティ市場である。需給バランスの改善をベースにした、金融市場の動きとは関係のない価格上昇が起きるだろう。2020年までの投資戦略のコアになるのがコモディティ市場だと筆者は考える。この点を2016年の最後の指摘とさせていただく。
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