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トランプ政権は中国を「為替操作国」に認定!? 中国リスクにご用心 不気味な人民元安の動き
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50621
2016.12.31 安達 誠司 エコノミスト 現代ビジネス
いよいよ2016年も終わりを迎えようとしている。
1月の人民元ショックに始まり、1月末の日銀によるマイナス金利政策採用、6月の「Brexit(イギリスのEU離脱)」、そして、11月には米大統領選でのトランプ勝利、と予想外の出来事が頻発した一年だった。
その影響をうけて世界のマーケットは大きく変動した。
そして、2017年に入ると、1月20日の大統領就任式を経てトランプ新政権が発足する。この新政権の政策スタンスがまた世界のマーケットを揺さぶる展開となるだろう。
新政権の陣容も、徐々に明らかになってきている。中でも懸念されるのは、貿易・通商政策と安全保障・外交政策の組み合わせである。両者を担当する閣僚には対中強硬派が名を連ねそうな状況となっているため、トランプ政権の対中政策が今後のマーケットのリスク要因になる可能性がある。
■今年、人民元安が放置された理由
今年(2016年)1月の大混乱の後、マーケットは中国リスクを意識しなくなっている。だが、このところ、対ドルで見た場合の人民元安が進んでいる点には注意が必要ではないかと考える。
12月28日午前中時点で、人民元レートは1ドル=6.95元近辺で推移している。2015年12月時点の人民元レートは1ドル=約6.45元だったので、この1年でドルに対して8%近い下落を記録していることになる。
問題は、これが、中国政府が意図し、誘導したものではない可能性が高い点だ。最近の人民元レートの下落は、外貨準備高の減少を伴っている。中国の外貨準備高は11月時点で3兆520億ドルであるが、8月以降、加速度的に減少している(図表1)。
さらに気になるのが、外貨準備高以外の資金流出である。特に国際収支統計では、中国の当局が実態を把握していない「誤差脱漏」の赤字(つまり対外流出)が加速度的に増大している。2015年は過去最高の1880億ドルの使途不明の資本流出(誤差脱漏)を記録した中国だが、2016年は6月時点までだが、2015年を上回る額となっている。
このうち外貨準備高の減少は、主に中国当局の「人民元買いドル売り介入」によるものだと推測される。
このほか、人民元安を阻止する中国当局の行動といえば、資本流出を防止するために資本取引規制の厳格化がある。だが、資本流出には歯止めがかかっておらず、この結果、人民元にも下げどまりの兆候がみえない。
この資本流出は少なからず、中国全土の共産党高官らによる不正蓄財の海外逃避の可能性がある。
中国政府(習近平政権)にとっては、これに歯止めをかけないと、やがて社会不安が究極まで高まり、共産党一党独裁体制を維持できなくなるため、当局は資本流出阻止にやっきになっている側面がある。
だが、現実にはなかなか流出がとまらず、その結果として人民元安が進行しているのである。
一方で、人民元安の進行が、中国だけではなく、世界全体の景況観を反転させているのもまた事実である。中国のPMI(企業の景況観を表す指数)は、人民元安の進行とほぼ並行して改善している。
さらに、世界の主要31ヵ国ベースのPMIも、人民元安が本格化した6月以降、改善が始まり、人民元安が加速度的に進行した10、11月に大きく改善した。人民元安によって中国経済が改善し、それにともなって世界貿易も回復しつつある。ちなみに日本の輸出数量もこれにともなって増加に転じている。
そのため、これまで中国当局は、人民元安是正に本腰を入れてこなかったのもまた事実ではないかと思ったりもする。
■米中の短期金利差が縮小しはじめた
だが、11月半ば以降、状況はやや変化してきたのではないか。
このところ、中国の市場金利である「Shibor(上海のインターバック金利)」が上昇し始めている。中国当局がどうしても人民元安の流れを止めたくて、しかも、為替介入が十分に機能していない場合、残る手段は市場金利を引き上げるしかない。
中国の人民元相場は、固定相場ではなく、不十分ながら短期金利差が機能するマーケットとなっている。
人民元の対ドルレートと米中の短期金利差の関係をみると、多少、米中の短期金利差が人民元の対ドルレートに先行して動いているようにみえる(図表2)。すなわち、米中金利差が拡大(米国の市場金利が相対的に上昇)すると、やや遅れてドル高人民元安になるという関係がみてとれる。
ここで、米中それぞれの短期金利の推移を見ると、ここ最近の人民元の下落は主に、米国の短期金利の上昇によってもたらされてきたことがわかる(図表3)。すなわち、FRBによるテーパリングと利上げによる市場金利の上昇がもたらしたものと考えられる。
だが、中国の外貨準備高が減少に転じて以降の両者の関係をもう少し細かくみてみると、別の点に気づく。
それは、Shiborの上昇にともなう米中短期金利差縮小をきっかけにレートが人民元安方向に「ジャンプ」する局面があったという点だ(図表2のA、B)。この局面では、中国当局が人民元安阻止のために市場金利を高め誘導した後、逆に人民元安が加速した局面である。
いったい何が起こったのだろうか。この局面では、人民元のオフショア市場を通じて、海外投資家による人民元の売り浴びせが発生している。
この時、為替介入によってもなかなか沈静化しない人民元安の流れを阻止すべく、中国当局は短期金利の高め誘導を行った。だが、短期金利の高め誘導は、金利の上昇を通じて中国の国内景気にとってネガティブな要因になる。
特に、不動産市況や株価にとって、金利上昇は大きなネガティブ要因になりうることから、金利引き上げは持続不可能でいずれ人民元レートを大きく切り下げることになると予想した海外投資家が、ロンドンや香港のオフショア市場で人民元をショート(売り建て)したために生じた現象であったと推測される。
そして、直近もまた、このA、Bの局面に近く、中国の短期金利上昇によって米中の短期金利差が縮小しはじめたのである。
■マーケットが再び「リスクオフ」に?
この現象をどのように考えればいいのか。中国政府は、人民元安をそろそろ本気で止めようとしているのではなかろうか。
しかも、今回は、米国でのトランプ新政権への政権交代をにらんでの行動かもしれない。トランプ氏は就任早々、中国を「為替操作国」に認定し、米国にとって不当にドル高人民元安である現在の為替レートの是正を求めてくる可能性が高いからだ。
さらに安全保障・外交関連の閣僚に対中強硬派が参画すれば、軍事的な圧力を高めていく可能性も否定できない。
この事態を回避するためには、トランプ新大統領の就任前に人民元安を是正する必要があると認識しているのかもしれない。それゆえ、中国政府は、短期金利の高め誘導に乗り出した可能性がある。
今後も中国で短期金利の高め誘導が続くのであれば、これは中国経済を痛めつけるだろう。そして、金利上昇が株価の調整に波及した場合(現在、中国株はやや調整色が強まっているが暴落はしていない)、海外投資家による人民元売り圧力が高まるかもしれない。
そうすると、中国当局はさらなる金利引き上げを実行せざるを得なくなる。そしてそれがさらに中国の景気を悪化させる……といった具合で今年に続き、2017年1月、世界のマーケットが「リスクオフ」に入る可能性も排除できない。
マーケットでリスクが意識されると、得てしてそのリスクは実現しない傾向がある。多くの投資家が「中国リスク」を意識していればよいのだが、もし、年明け早々、マーケットがこのようなリスクを考慮しない展開となった場合には、注意が必要であろう。
2016年6月23日、誰もがその結果に驚愕した英EU離脱の国民投票。メディアはイギリス経済の崩壊を煽り「第二のリーマン・ショック」が近いとの声も聞こえたが、そうしたシナリオはほんとうに正しいのか?
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