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政府、正社員と非正規社員の差撤廃へ…同じ仕事なら給与やボーナス、福利厚生を同じに
http://biz-journal.jp/2016/12/post_17608.html
2016.12.30 文=溝上憲文/労働ジャーナリスト Business Journal
安倍政権による、正社員と非正規社員の格差を是正するための「同一労働同一賃金」に向けた法令改正の動きが2017 年に本格化する。もし実現すれば、有期契約社員やパート社員のような企業が直接雇用する非正規社員だけではなく、雇用主が異なる派遣社員の待遇も改善する可能性がある。
同一労働同一賃金とは、職務や仕事の内容が同じである労働者に対し、同じ賃金を支払うべきとする考え方だ。ただし、同じ仕事や職務であっても異業種や企業規模によって賃金は異なるが、政府は主に「同一企業内の正社員と非正規社員の賃金の違いの是正」をターゲットにしている。
政府は法律の改正によって、処遇改善に向けて企業の背中を押そうとしている。現在の法律では有期契約社員と正社員である無期契約社員、正社員とパート社員の均等待遇を求める規定はあるが、派遣社員と派遣先の社員の待遇を同じにする規定はない。また、有期、パートの規定にしても条文の内容が明確でないために、待遇改善を求める裁判などでは、非正規社員自身が具体的な証拠を示して、正社員と同一の仕事を行っていることを立証しなければならない。
そこで現時点で浮上している案は、EU(欧州連合)の労働指令にならって、非正規社員に対する「客観的合理的理由のない不利益な取扱いを禁止する」という、差別禁止の条文を現行の法律に盛り込むというものだ。
■余計な解釈を排除
では、それによって現実的にどういう効果があるのか。政府の法令改正を検討する有識者会議の委員は「法律に『客観的合理的理由のない不利益な取扱いを禁止する』という条文を入れると、裁判では会社側が合理的理由を立証する責任を負うことになり、また、法の行為規範として正社員との処遇の違いについての説明責任も発生することになる。現行法の不明確な規定と違い、余計な解釈が入り込む余地がなく、会社側が正社員と非正規社員の賃金格差を正当化する合理的な理由がない限り、認められなくなる」と言っている。
非正規社員にとっては机を並べて同じ仕事をしている正社員より給与やボーナスが低ければ、「なぜ違うのですか」と主張しやすくなる。会社の説明が曖昧であれば裁判に持ち込み、会社側が合理的である根拠を示しても裁判官が合理的だと認めなければ、正社員と同じ賃金を支払わなくてはならなくなる。
もちろん派遣社員も派遣先の社員と同じ仕事をしているのであれば、同じ賃金にするというのが基本原則となる。
■EUの事例
お手本となるEUでは、実際にどうなっているのだろうか。
EUでは労働条件などを統一するためにEU本部が「労働指令」を出し、加盟国が法制化する仕組みになっている。
まず1997年にパート社員との合理的理由のない差別を禁止したパートタイム労働指令が出され、99年に有期労働契約指令、2008年に派遣労働指令が出された。派遣労働指令が出されるのが10年遅れた理由は、使用者が派遣元と派遣先の2つに別れているので議論が長引いたことによるが、結果として同じルールを適用することになった。
派遣労働指令では「派遣労働者の基本的な労働・雇用条件は、派遣先に派遣されている期間中は、少なくとも同じ職務に従事するために派遣先から直接雇用されるとした場合に適用される条件としなければならない」と規定している。つまり、派遣社員の仕事が派遣先の正社員の仕事と同じであれば、給与やボーナスだけではなく福利厚生も含めて同じにしなさいというものだ。
フランスではこれに基づいて派遣先社員と同じ交通手段や食堂などの施設を利用することができるという規定もある。ドイツでは子どもの養育施設の利用も正社員と同じにしなければならない。
■福利厚生施設やボーナス
日本でいえば、高給で知られる総合商社や大手広告代理店に派遣されている社員が派遣先の事務職社員と同じ仕事をしていれば、給与・ボーナスだけではなく交通費の支給はもちろん、各種の研修講座の受講、保養施設などの福利厚生施設も利用できるということだ。
たとえば社内食堂の利用では、正社員に一定額の食券を付与していれば、派遣社員にも同じの額の食券を付与しなければならないという裁判例もヨーロッパにはある。
だが、高給をもらっている派遣先企業の社員と同じ給与を派遣元が支払うのは、難しい場合もある。派遣社員の給与は派遣先から派遣元が受け取る派遣料金から支払われている。だが、ヨーロッパでは派遣元が派遣先の社員と同じ給与を支払えない場合は、派遣先が支払うことを命じる判決も出ている。
給与だけではなくボーナスの支給も同じだ。フランスの裁判例では、「派遣労働者は派遣先における勤続要件を満たす限り、派遣先の労働者に対して支払われる13カ月分の賞与(年末手当)の支払いを受ける権利を有する」という判決もある。
たとえば総合商社の事務職の社員に10カ月のボーナスを支払っていたら、派遣社員にも同じ金額を支払わなければならないということだ。
こうしたヨーロッパのような「同一労働同一賃金原則」が日本でも適用されたら、非正規社員の待遇は大幅に改善することになる。だが、同一労働同一賃金といっても、ヨーロッパでは職務経験、勤続年数、資格などによる賃金格差は合理的理由になるとされている。
では日本に適用した場合、何が合理的理由となり、何が合理的理由とならないのか。
政府は20日、働き方改革実現会議で、同一労働同一賃金の実現に向けたガイドライン案を示した。そのなかで、正社員と非正規社員の基本給について不合理な差を認めないとし、非正規社員にも昇給や賞与の支払いを原則行うこととした。さらに、時間外手当や深夜・休日労働手当、通勤手当、慶弔休暇、病気休職などについても、正社員と非正規社員の間で差を設けることを原則認めないとした。
だが、ガイドライン案は正社員と主に有期契約社員、パートタイム社員の間でどのような格差が問題になるかを具体的な事例を挙げて詳しく書いているが、派遣社員についてはこう書いているだけである。
「派遣元事業社は、派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情が同一である派遣労働者に対し、その派遣先の労働者と同一の賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならない。また、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情に一定の違いがある場合において、その相違に応じた賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならない」
同じ非正規社員でも派遣社員だけはややトーンダウンした印象は拭えない。じつはこのなかの「派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情が同一である派遣労働者」という表現は、現行法の有期契約社員と正社員の無期契約社員の均等待遇を定めた労働契約法20条、正社員とパートについて定めたパートタイム労働法9条と同じ内容になっている。これまで派遣社員と派遣先の社員の待遇を同じにしなさいという規定はなかったが、これを新たに盛り込むだけのことになるのか。
もちろん、それだけでも通勤手当や福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室など)、教育訓練などは派遣先社員と同じにする必要がある。また、職務内容や配置などの事情が同じであれば、派遣先労働者と同じ待遇にするよう求めている。さらに一定の違いがあった場合は、均衡待遇、つまりバランスのとれた処遇にしなさいとしている。
派遣労働者については派遣元の正社員との格差、派遣先の社員との格差の是正という二重の違いがある。契約社員やパートのような直接雇用の非正規の処遇と同じにするのかどうかも含めて、具体的な関連法改正案のとりまとめを通じて非正規社員の待遇がどこまで改善されるのかが試されることになる。
(文=溝上憲文/労働ジャーナリスト)
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