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中国が初の有人宇宙飛行に成功した2003年10月16日、私は講演するため上海交通大学を訪問していた。写真は筆者。
<直言!日本と世界の未来>経済・宇宙大国化へまい進する中国、次の課題は何か?―立石信雄オムロン元会長
http://www.recordchina.co.jp/a158872.html
2016年12月27日(火) 5時10分
中国が初の有人宇宙飛行に成功した2003年10月16日、私は講演するため上海交通大学を訪問していた。
講演の冒頭、有人宇宙飛行成功へのお祝いの言葉を述べると、学生ただちから大きな拍手がわいた。聞いてみると、教授も含めみんな朝5時に起きてテレビに見入っていたとのこと。上海交通大学は江沢民氏の母校でもある有力大学であり、今回の宇宙飛行プロジェクトにも技術的な協力はもちろん、多くの卒業生がかかわっている。新型肺炎(SARS)騒ぎで少し沈滞気味だった雰囲気を一気に振り払い、国民に自信と誇りを与える歴史的な瞬間だったことは、学生たちの自信に満ちた顔を見てもはっきりと感じ取ることができた。
この時の講演会では、世界的に関心が高まりつつあったユニバーサルデザインをメーンテーマとして採り上げた。これまでは日本の経済発展の要因や最近の製造業の動向を紹介してきたが、今回の聴衆が理工系の学生であることも踏まえ、設計・デザインという分野における最新のトピックとして紹介することにしたのである。
ユニバーサルデザインという分野は、当時中国ではまだあまり一般化していない概念で、中国語にもそれに相当する言葉は定まっていないとのことだった。一応「汎用設計」や「通用設計」といった言葉がそれに当たるようである。
講演後、「ユニバーサルデザインは結局は障害者のためではないのか?」「なぜ企業がそのようなことに取り組むのか?」「どのくらいコストがかさむのか?」。など、学生から次から次へと率直な意見や質問が飛んできた。いつものことながら新しいことを貪欲に吸収しようという強い意気込みが感じられた一方、やはりこの分野についての議論は、中国ではまだこれからという感触であった。
その後中国経済はほぼ10%前後の成長を達成、2008年の米リーマンショック時の大規模投資を乗り越えて、世界第2の経済大国に成長した。「新常態」中高速安定成長に減速したものの、日米欧など先進国が低成長にあえぐ中で、6%台の成長を維持、中国の経済発展は著しい。
一方で、沿海部と内陸部の経済格差や都市内部での貧困問題、環境問題など、さまざまな問題を抱えていることも事実である。日本や欧米の先進諸国が段階的に遭遇してきた諸問題に、中国はグローバリゼーションという大きな潮流の中で、高度成長と同時に直面していると言える。単に物質的な豊かさだけでなく、精神的、文化的な豊かさが得られない限り、持続的な発展は望めないことは言うまでもない。
中国は2016年9月15日、宇宙ステーションの試験機「天宮2号」の打ち上げに成功。1か月後の10月17日には宇宙飛行士2人を乗せた有人宇宙船「神舟11号」の打ち上げにも成功。2日後に「神舟11号」は「天宮2号」にドッキングし、2人の宇宙飛行士は「天宮2号」の中に入り、約1カ月間にわたる宇宙滞在を実施。大型宇宙ステーションの建造という新たな段階へ向けて動き始めた。
経済発展が再び軌道に乗り、宇宙分野の発展などで国威も大いに発揚された今、中国はソフト面の充実という新たな発展の段階に差し掛かっている。社会的な諸課題の克服が待ったなしである。
■立石信雄(たていし・のぶお)
1936年大阪府生まれ。1959年同志社大学卒業後、立石電機販売に入社。1962年米国コロンビア大学大学院に留学。1965年立石電機(現オムロン)取締役。1995年代表取締役会長。2003年相談役。日本経団連・国際労働委員会委員長、海外事業活動関連協議会(CBCC)会長など歴任。「マネジメントのノーベル賞」といわれるSAM(Society for Advancement of Management)「The Taylor Key Award」受賞。同志社大学名誉文化博士。中国・南開大学、中山大学、復旦大学、上海交通大学各顧問教授、北京大学日本研究センター、華南大学日本研究所各顧問。中国の20以上の国家重点大学で講演している。
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