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ラオックスの店舗(撮影=編集部)
ラオックス、驚異的好業績からたった1年で驚異的悪化…利益98%減、爆買い消滅が直撃
http://biz-journal.jp/2016/12/post_17556.html
2016.12.24 文=編集部 Business Journal
1年前の2015年12月、「ユーキャン新語・流行語大賞」が発表され、中国人観光客による「爆買い」が大賞を受賞した。爆買いの恩恵をもっとも受けた企業として、免税店大手、ラオックスの羅怡文(ら・いぶん)社長が大賞受賞の栄誉に浴した。15年12月期の売上高は前年比2倍、純利益は7倍という驚異的な数字を記録した。
あれから1年たち、爆買いの風景は一変した。ラオックスの16年1〜9月期決算の売上高は、前年同期比31.9%減の494億円(前期は725億円)、営業利益は98.2%減の1億円(同75億円)、純利益も97.4%減の1億円(同70億円)だった。
■客単価が落ち込み、全店売上高は半分以下
ラオックスは中国の旅行代理店と組みツアー客をしっかり押さえることで、爆買い需要を取り込んだ。1人当たりの平均客単価は、春節の15年2月は前年同月比1.6倍の3万7992円、花見シーズンの同年4月は3万9021円と過去最高を記録した。この頃から、爆買いという言葉が頻繁に使われるようになった。
だが、やがて財布の紐は硬くなる。15年11月に客単価は3万円を割り込んだ。16年2月の春節以降、客単価は月を追って落ちていき、同年9月は1万7461円となり、とうとう2万円を下回った。ピークの15年4月と比べると55%減である。
その結果、売り上げは激減した。店舗数は15年12月末の33店から16年10月末には42店に増えているにもかかわらず、全店の売上高は16年2月以降、前年同月の実績を下回った。減少幅はさらに拡大し、16年9月には実に55%減と惨憺たる結果となった。
売り上げは減っているが、中国人観光客の数が激減したわけではない。中国政府は国内消費喚起策として、海外で使われているカネを国内に戻す施策を打ち出し、今年4月から海外で購入した高額品に高い関税を課した。これで爆買いに急ブレーキがかかった。
中国人観光客の消費は、ブランド物の高級時計や全自動炊飯器などの値が張るものから、化粧品や日用雑貨など価格の安い商品に移った。中国での転売を目的としてまとめ買いする団体客が、関税の強化で姿を消したことが決定打となった。中国で転売しても儲からなくなったからである。
中国人観光客も、他国からの観光客と同じように買い物から観光などに訪日の目的が変わったといえる。つまり、普通の観光のスタイルになっただけのことだ。
■17年12月期の売上目標を1500億円から900億円に下方修正
ラオックスは、爆買いを前提とした中期経営計画の見直しを迫られた。中期経営計画では、16年12月期の売上高は1000億円、17年12月期のそれは1500億円を掲げていた。
しかし、爆買いの失速により、16年12月期の売上高は650億円の見込みで、当初の計画から350億円の目減りだ。また、17年12月期の売上目標も900億円へと従来の目標から4割も引き下げた。
爆買いに急ブレーキがかかったことで、全店の売上高は前年同期の半分以下と苦戦しており、900億円の売上目標すら疑問視する向きも少なくない。
■体験型消費を盛り込んだ大型アウトレット店に進出
またラオックスは、海外客の集客の拠点となる大型アウトレット店に進出した。
15年12月、中国・上海の不動産大手、緑地集団と共同で千葉市の複合商業施設、千葉ポートスクエアを100億円で取得した。資本金は93億円で、緑地集団が65%、ラオックスが35%出資する合弁会社が施設全体を運営する。
千葉ポートスクエアは、JR京葉線千葉みなと駅から徒歩10分、成田国際空港から40キロほどの場所にある。28階建てのオフィス棟、270室のホテル、商業棟やホール、1100台収容の駐車場がある複合商業施設で、敷地面積は2万1000平方メートル。
ラオックスは商業棟のキーテナントとして入居。売り場面積は1万6500平方メートル。全面的に改装し、衣料品や家電、化粧品などを販売するアウトレット店を開く。ターゲットは、成田国際空港から帰路につくツアー客だ。ラオックス初となる衣料品のアウトレット店は海外からの客だけがパスポートを提示して利用できる。飲食をしながらショーなどを楽しめる施設づくりを目指している。
千葉ポートスクエアについては、「商業棟はフィットネスジムと保育園が入居しているだけで、閑古鳥が鳴いている。オフィス棟の入居率は6割」(関係者)という。入居率の低迷で、施設を運営していた千葉新都心開発が05年に倒産。その後、海外の投資家の間で転売のキャッチボールが繰り返されてきた、いわくつきの施設だ。
千葉ポートスクエアを皮切りに、レジャー施設などの体験型消費需要の開拓を次期中期経営計画の柱に据える。
だが、株式市場の反応は鈍い。ラオックスの株価は、爆買いで急成長していた15年7月24日には5640円の最高値をつけたが、爆買いバブルが剥げ落ちて株価は急落した。同年12月7日の終値は801円で、ピーク時のわずか14%にとどまっている。
体験型消費を盛り込んだ大型アウトレット店で、爆買いの花はもう一度開くだろうか。
(文=編集部)
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