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来年、「日経平均2万円越え」がほぼ確実な理由 ついに「経済の好循環」がはじまる?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50541
2016.12.21 磯山 友幸 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■4年連続の「陽線」?
日経平均株価が1万9000円台を回復した。2015年末の終値が1万9033円だったので、年内にこれを上回ったまま引ければ、株価グラフをローソク足で描いた際に「陽線」となる。
アベノミクスが始まって以降、暦年ベースでは2013年、2014年、2015年と「陽線」が続いてきた。つまり、前年の年末よりも日経平均株価が高い状態が続いてきたのだが、2016年がどうなるかが焦点だ。
わずかながらも「陽線」が続き、上昇傾向をかろうじて保つのか、逆に前年末を下回って「陰線」となり、上昇基調に休止符が打たれるのか。2017年の相場を展望するうえで、大きな違いとなる。
1万9000円台回復の引き金になったのはドナルド・トランプ大統領の誕生であることは間違いない。11月8日の投票までは、ヒラリー・クリントン候補が僅差で競り勝つとの見方が強かったが、トランプ大統領の誕生が決まるやマーケットは激動となった。当初、東京市場では大幅に売られたが、米国市場でトランプ氏の政策を評価する動きが広がったことから、一気に「トランプ買い相場」の様相を呈した。
「偉大な米国を再び」というトランプ氏の選挙キャンペーンを受けて、ドル高が加速、日本円は大きく値を下げた。1ドル=103円前後だった円ドル為替は一気に円安傾向となり、1ドル=118円を付けた。当然、日本市場では輸出関連株が大きく買われることとなり、一気に株価上昇に弾みが付いた。
この上昇を支えたのは海外投資家だ。11月7日から12月9日までの5週間に2兆1700億円も買い越した。海外投資家は今年1月から9月末までに6兆1870億円を売り越しており、これに買い戻しをかけたのである。
この間、日本の個人投資家はどう行動したか。ほぼ一本調子に売り越しを続けてきたのである。10月以降、海外投資家は2兆5782億円を買い越したが、ほぼ同じ2兆6000億円を個人投資家が売っている。トランプ大統領が決まって以降だけでも1兆9674億円の売り越しだ。
個人投資家の行動は総じて「賢明」な場合が多い。年明けから3月末まで海外投資家が5兆円を売り越した際に1兆4000億円余り買い越した。海外の機関投資家などがアベノミクスの行方に悲観的になって売りに回り、日経平均が1万7000円台から1万6000円へと下落していく過程で、個人投資家は買い向かったわけだ。それが、1万8000円台から1万9000円台に上昇していく過程で、せっせと売っているのだ。
損失が消えてヤレヤレで打っている投資家ももちろんいるが、きちんと利益を確定させた個人投資家は少なくないとみられる。
上昇過程で個人投資家の売り越しが膨らんだのは、1万8000円を超えて上昇した急速な上げ相場に対して、個人投資家が懐疑的だということだ。実体経済への評価が変わらない中で、トランプ誕生だけで上昇した株価は一過性だとみているのだろう。仮にいったん2万円の大台を回復したにしても、早晩、調整が入る可能性があると感じているのではないか。
1月20日にトランプ大統領が就任すれば、否が応でも米国の政策が明らかになる。期待先行で上げた米国の株価も調整する場面があるだろう。為替が再びドル安円高に振れれば、日本の株価も大きな影響を受けるだろう。一部の週刊誌などが煽るほど、一本調子で日経平均3万円に駆け上ることは考えにくい。
では、2017年の株価はどう動くのだろうか。
■緩やかな好転、2万円固め
日本国内の景況感を見れば、底打ちから好転しそうな気配だ。雇用者数は依然として増え続け、求人倍率もウナギ登り。人手不足がますます深刻化している。最低賃金の引き上げなどもあり、ようやく賃金が増える気配が出始めた。安倍晋三首相が繰り返し述べてきた「経済の好循環」が始まる可能性が出ているのだ。
一方で、新設住宅着工件数も8万戸越えが続いており、消費増税前の駆け込み需要の水準と遜色ない。おそらくマイナス金利政策の効果で、過熱気味の不動産投資が起きている。これにつれて中古マンションなどの価格も上昇が続いている。
2016年の春から秋にかけて、消費の落ち込みが顕著だった。日本のGDP(国内総生産)の6割超は消費が占める。これに火が付かない限り、日本経済の復活はない。賃金上昇や住宅建設の増加は、早晩、消費の底打ちに結びつくはずだ。
つまり、来年の日本経済は緩やかながら、好転しそうだ。
今の株高はトランプ買いだけでなく、こうした景気改善を織り込んでいる可能性は十分にある。上昇ピッチが速いので、いったんは調整するかもしれないが、長期的には2万円を固める動きになっていくだろう。
もっとも、国際経済は読み切れない。米国の景気回復がどこまで続くのか。不動産バブルが再び盛り上がっている中国経済は、このまま持続するのか。欧州は景気悪化局面から脱却できるのか。原油価格の上昇でロシア経済は復活するのか。いずれも不確定要因である。
ちょっとした出来事を引き金に株価は大きく下落する可能性もある。2017年は2016年と同様、変動幅(ボラティリティ)の高い相場つきになるのではないか。
そうした中で、最大の注目点は、個人投資家がどのタイミングで「買い越し」てくるか。年明けに大きく調整する局面があれば、個人投資家は下値を拾ってくるだろう。また、景気回復に実感を伴うようになってくれば、本格的に個人投資家が株式に投資してくる可能性もある。
日本の株式市場の売買は海外投資家が過半を占め、海外投資家の動向によって株価が動くのも事実だ。しかし、その動きに先んじて個人投資家が売買をしているようにも見える。個人投資家の「買い越し」が相場の大きな転換点になる可能性がありそうだ。
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