http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/839.html
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コラム:
ドル高の先にある円高リスク
亀岡裕次大和証券 チーフ為替アナリスト
[東京 19日] - ドル実効為替とドル円は基本的に順相関にあるが、ときにその相関性が崩れる局面がある。従来と比べると両者の相関性は低下しており、必ずしも同じ方向には動かない。
2005年前半までは両者の相関性は高く、1995年のボトムアウトや02年のピークアウトなどのタイミングは一致していた。世界的な景気後退局面では基軸通貨のドルが買われる一方で円が売られてドル高・円安、景気回復局面ではドル安・円高となり、ドル実効為替とドル円の方向性が一致しやすかった。
ドル実効為替とは違いドル円の98年ピークが02年ピークよりも高くなったのは、日米自動車協議の合意による95年以降の円安に、97年以降の金融危機による円安が加わって大幅に円安が進み、危機終息後に大幅に円高が進んだためだ。ドル実効為替とドル円の相関性が崩れたわけではなかった。
ところが、05年後半以降は両者の相関性が崩れる局面が出てきた。07年にかけてはドル実効為替が下落する一方でドル円が上昇し、08年や15年後半にはドル実効為替が上昇する一方でドル円が下落した。低金利通貨の円が調達通貨としてリスクオン局面でドル安を上回る円安、安全通貨としてリスクオフ局面でドル高を上回る円高となり、ドル実効為替とドル円の方向性が一致しなくなったのだ。
<ドル実効為替とドル円の順相関は続くか>
09―11年には米金利低下のドル安でドル実効為替とドル円が下落し、14―15年には原油安のドル高と日銀緩和の円安で両者が上昇するなど、方向性が一致する局面もある。最近も、トランプ政策期待、米経済指標改善、原油減産合意を背景とする米株高、金利高、商品高がドル高と円安に働き、ドル実効為替とドル円がともに上昇している。
今後もこうした相場展開が続くのだろうか。それとも、相場展開が変化してドル実効為替とドル円の相関性が崩れていくのだろうか。
ドル円、ドル実効為替と、米株価指数、米長期金利、商品指数、米景況感の長期的な相関のうち、比較的相関が高い組み合わせは、ドル円と米株価指数(順相関)、ドル円と米長期金利(順相関)、ドル実効為替と商品指数(逆相関)、ドル実効為替と米景況感(逆相関)である。
ドル円と米株価指数は、04年頃までは逆相関が目立っていたが、05年以降は順相関のケースが多くなっている。また、ドル円と米長期金利も、従来に比べて順相関のケースが増えている。日本の金利が低下して他国に比べて変動が小さくなったため、従来は強かった日本の景気回復局面で円高、景気後退局面で円安という傾向は完全になくなった。そして、世界的に株価・金利が上昇するリスクオン局面で円安、株価・金利が低下するリスクオフ局面で円高が進むようになった。
<米金利上昇・ドル高による米株安・景気減速リスク>
最近もそうした傾向に沿い、米株価・金利上昇とともにドル円上昇が進んでいる。米株価と金利の上昇が続くためには、米国の成長期待が高まり続ける必要があるだろう。なぜなら、株価と金利が上昇する一方で成長期待が高まらないようだと株価が割高となり、株高が限界に達するからだ。もっとも、トランプ次期政権の景気刺激策に対する市場の期待が高まり続けることは難しく、政策内容が明らかになるにつれて政策期待は後退する可能性の方が高いだろう。
もし米国の成長期待が高まり続けるとすれば、株高が経済成長を押し上げ、それが成長期待を高めて株高につながるという好循環に入るしかないだろう。しかし、それは簡単なことではないはずだ。米株高が資産価値増大(資産効果)を通じて経済成長にプラスとなる一方で、米金利上昇やドル高が経済成長にマイナスとなるからだ。
ドル実効為替と米製造業景況感は基本的に逆相関である。ドル高で米景気後退、ドル安で米景気拡大となりやすい。また、景気後退期はリスクオフのドル高、景気拡大期はリスクオンのドル安になりやすいとも言える。
最近はそうした傾向に反し、ドル高と米景況感改善が進んでいる。米政策期待による米金利上昇がドル高に働く一方で、米株高が景況感にプラスに作用しているのだろう。ただし、米金利上昇・ドル高は米景気に逆風となる。
今のところ米経済指標は市場予想を上回るケースが多く良好だが、過去の傾向に従えばドル高にやや遅れて経済指標が市場予想を下回りやすく、17年1月以降にそうなる可能性が高い。米株価が下落に転じることで、米景気は減速しやすくなるだろう。
米景況感改善が進みにくいのであれば、世界の景況感改善によるリスクオンのドル安や米国以外の金利上昇によるドル安となる可能性は低い。たとえ米金利低下がドル安に作用してもリスクオフがドル高に作用し、ドル実効為替は下がりにくい。つまり、ドル高と米景況感悪化という方向に傾きやすいだろう。
<需要鈍化による商品安リスク>
ドル実効為替と商品指数は基本的に逆相関だが、最近はドル高・商品高と順相関になっている。トランプ政策期待による米金利上昇がドル高に働く一方で、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国(ロシア、メキシコ、オマーンなど)の原油減産合意が商品高に働いたためだ。
ただし、ドル高は商品安に作用し、商品高はドル安に作用する。ドル実効為替と商品指数の各々を押し上げる要因のどちらか一方でも弱まると、両者は再び逆相関となりやすいはずだ。
減産合意が順守されて原油在庫が減少すれば原油高要因となるが、商品高は進みにくいのではないか。減産合意に加わらなかった米国やカナダなどのOPEC非加盟国が原油を増産する可能性が高いほか、商品需要が鈍化する可能性があるからだ。中国は低価格のうちに輸入を増やしてきた備蓄用原油が貯蔵の限界に近づいているうえ、小型乗用車の減税幅縮小で年明け後に景気が減速しやすい。
また、米国発の金利上昇は世界の景気拡大と商品需要を抑える要因となる。ドル高・商品高が長く続いたりドル安・商品高に転じたりする可能性は低く、ドル高・商品安へと傾きやすいとみられる。
<ドル堅調でもドル円は下落に転換か>
つまり、ドル高のなかで、米景況感が改善から悪化へ、商品高から商品安へと変化する圧力が生まれやすい。米金利低下のドル安圧力が生まれても、リスクオフのドル高圧力が生まれるためにドル安には振れにくいだろう。
そして、米成長期待が高まらなくなることで、株高から株安へと変化しやすくなる。リスクオンの円安からリスクオフの円高へと変化するとともに、米金利上昇と日米金利差拡大も進みにくくなる。ドル実効為替が堅調に推移する一方で、ドル円が下落に転じる可能性が高いだろう。
トランプ次期政権の景気刺激策が市場の期待に未達となりそうな場合には、ドル安と円高の両圧力がかかりやすくなる。また、保護主義的な通商政策のもとでドル高(他通貨安)をけん制する姿勢を見せた場合にも、ドル安圧力がかかる。
近年、米貿易赤字は拡大こそしていないものの高水準のままであり、ドル高による輸出競争力低下で赤字が拡大する可能性もある。これまでは米国経済が他国に比べて堅調で米金利が相対的に上昇してきたことがドル高を招いてきたが、さらなるドル高が米経済成長を阻害しないようにとトランプ政権が考える可能性は十分にある。ドル実効為替がピークアウトしてドル円が大幅に下落する可能性にも留意する必要があるだろう。
*亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yuji-kameoka-idJPKBN1480PO?sp=true
コラム:円急落の裏側、17年見通し修正は必要か
佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 19日] - ドル円相場の急騰が止まらない。米大統領選が行われた11月8日を含む週からの6週間、ニューヨーク終値ベースで見ると14.4%も急上昇した。これは1973年の変動相場制移行以来最大の上昇率である。
ドル円急騰の原動力になっているとみられる米10年国債金利は過去6週間で80ベーシスポイント(bp)以上も上昇している。米10年国債金利とドル名目実効レートの相関は9月頃から非常に高くなっており、ドル円の歴史的な急騰は米長期金利急上昇による「ドル高」が一因になっていると言える。
しかし、過去6週間の主要通貨騰落率を見ると、ドルよりもカナダドルの方が強いし、英ポンドもドルと同程度強くなっている。つまり、ドル独歩高ではない。
一方で円は最弱通貨となっており、2番目に弱かったスイスフランに対しても7%以上も下落している。つまり、ドル円の歴史的な急騰には、米金利急上昇を受けた「ドル高」だけでなく、何らかの要因による「円安」も寄与している。
<外債急落が招いた国内勢の円売り戻し>
円独歩安を引き起こした要因は何だろうか。当社は、1)国内投資家による欧米債投資に絡むヘッジのリバランス、2)ベーシックバランスに起因する国内勢の円売りと海外投機筋による円売り、3)日銀のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)が主な原因になった可能性があると考えている。
まず1番目の要因から見ていこう。今年1月29日の日銀によるマイナス金利導入以降、顕著となった現象は、日本国債のイールドカーブの極端なフラット化と、それを発端とする国内投資家による為替ヘッジ付外債投資の急増だった。
今年2月から10月までの9カ月間で、国内投資家は27.5兆円の外債投資(国際収支ベース)を行ったが、これほどのペースで外債投資が行われたのはデータが利用可能な1996年以来初めてだ(ちなみに、このうち18.9兆円が米債、3.3兆円が仏債に投資されている)。
もっとも、27.5兆円の外債投資のうち、銀行が6.0兆円、生保が13.1兆円となっており、これらのかなりの部分がヘッジ付であったと考えられる。生保が保有するヘッジ付外債は30兆円弱と推計され、これに投信が保有するヘッジ付外債投資も加えれば、もう少し金額は大きくなるだろう。
今年に入ってから急増したヘッジ付外債を保有している国内投資家の一部は、債券価格が急落(金利が急騰)したことによってヘッジのリバランスのために、円を売り戻す必要があったものと考えられる。
簡単に試算してみると、米10年国債価格の11月以降の下落率は6.7%となるため、30兆円の6.7%で2兆円程度の円売りが発生した可能性もある。ヘッジ付外債投資は日本国債投資の代替手段であることを考えると、外債価格急落により発生する大きな為替リスクを許容できず、かなり大規模なヘッジのリバランスが短期間に行われた可能性は否定できない。
<海外投機筋が円ロングを一気に巻き戻しか>
国際収支に反映されるフローのうち、為替取引を伴うとみられる部分を積み上げたものを「ベーシックバランス」と呼んでいる。当社が推計している日本のベーシックバランスに起因する円の需給は、国内投資家による対外証券投資、国内企業による対外直接投資を主因に、円高が進んでいた今年に入ってもネット円売り超だったことを示している。これが円安を引き起こした2つ目の要因となった可能性がある。
つまり、2015年後半から2016年前半に向けての円高の動きの中でも国内投資家・企業による円売りの動きは続いていたが、海外投機筋が大きく円ロングポジションを積み上げていったことで、この国内勢による円売りを吸収していた可能性を示唆している。そして、その海外勢の円ロングポジションが一気に巻き戻されたことで、2016年後半に急激な円安を招来したという図式が考えられる。
海外投機筋のポジションを推計する上でよく参照されるシカゴIMM通貨先物ポジションは、上記の仮説を裏付ける動きを見せている。IMMの円ポジションは今年に入ってから一貫してロングだったが、米大統領選後は急激にロングが縮小、11月末時点でほぼフラットとなっている。
さらに12月に入ってからは急激に円ショートが積み上がっていることも示唆しており、9月27日から12月13日までの11週間のポジション変化幅(円ロングから円ショートへ)は、データが利用可能な1992年以降で最大となっている。
<ドル安予想修正にはトランプ政策の見極めが必要>
円安を引き起こしたと考えられる3つ目の要因は、日銀が9月21日に導入したイールドカーブ・コントロール政策である。
欧米の長期金利は9月頃からすでに緩やかな上昇基調に入っていた。9月21日以降の主要国10年国債金利の変動幅と通貨の動きを比較すると、明らかに欧米金利の上昇幅に比べて、日本の金利の上昇幅が小さく、日本と各国の長期金利差拡大が円安を引き起こしている図式となっている。
また、10年物日本国債金利の同米国債金利に対するベータ(言うなれば感応度)は、2013年5月以降に米量的緩和縮小観測で米長期金利が急上昇したときには0.9(米国債1bp上昇に対して日本国債0.9bp上昇)だったが、今年11月8日の米大統領選後は0.24となっている。さらに、今年1年間の動きを見ると、9月21日以前のベータが0.53だったのに対し、9月21日以降は0.15となっており、明らかにイールドカーブ・コントロールの効果でベータが下がっていることが分かる。
筆者の2017年末時点のドル円レート予想は99円である。2016年前半の動き(121円から99円まで急落)を見れば、あり得ない予想ではないが、過去6週間の円安の動きは明らかに予想外であり、蓋然性が低くなっていることは事実である。
もっとも、筆者が2017年のドル安・円高を予想するのは、欧米の政治リスク、特に米国が保護主義姿勢を強めることによるドル安を予想しているからだ。したがって、来年末時点の予想修正のためには、実際にドナルド・トランプ氏が米大統領に就任してからの動きを見極めたいと考えている。
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
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アングル:人民元安を恐れる中国人、外貨預金口座の開設急ぐ
[上海 19日 ロイター] - 中国では、人民元の下落を懸念した一般市民の間で外貨預金口座を開設する動きが加速している。上海に住む会計士のZhang Yutingさん(29)は、米国に行った経験は一度きりで、外貨を使う必要もほとんどないが、ドル口座を開いた。
同じような人は多く、公式統計によると、今年1─11月に中国の家計が保有している外貨預金は32%近く増えた。人民元がドルに対して8年ぶりの安値に下がったからだ。
外貨預金の伸び率は、人民元その他通貨の預金総額に比べて約4倍のペース。米国の利上げや中国経済の先行きへの不安から、資本が海外に逃避している。
トランプ次期米大統領が中国からの輸入品に懲罰的関税をかけると宣言したり、台湾や南シナ海問題を巡って緊張が高まっていることも、懸念に拍車を掛けている。
企業や銀行、富裕層が外貨預金口座その他の海外資産に振り向けている金額に比べれば、家計の外貨預金規模は大きくはない。11月末時点の家計の外貨預金残高は1187億2000万ドルだが、外貨預金全体の残高は7025億6000万ドルだった。
しかし家計による外貨保有の急増は資本逃避を象徴しており、人民元安と格闘する政府にとって頭痛の種だ。
政府は10月以来、外貨送金の承認制強化などの資本流出抑制策を講じてきたが、今後さらに規制を強める可能性がある。
個人による外貨換は年間5万ドル相当まで許されているが、複数の銀行筋によると、現在の状況が続けば対策が強化されそうだ。
銀行幹部2人によると、一部の銀行は、1日の上限である1万ドルの交換を2日続けて行った顧客をブラックリストに載せている。掲載された人は一定期間、交換を禁じられる可能性もあると幹部1人は話す。
また、資本流出を抑えるよう圧力をかけられている銀行は、自発的に外貨を人民元に戻した顧客に景品などを提供している。交通銀行では、1000ドル以上を人民元に換えた顧客はくじ引きに参加することができ、携帯用プリンターなど様々な商品が用意されている。中国工商銀行はウェブサイト上で、ドルから人民元への両替に優遇レートを提供している。
しかしキャピタル・エコノミクスの中国エコノミスト、ジュリアン・エバンスプリチャード氏によると、市民の間には外貨預金よりも、実際に持ち出せる現金を好む傾向も見られる。「規制当局は預金なら大いに統制しており、国内の外貨預金への流入ペースを統制することもできる」からだ。
前出のZhangさんは、人民元がさらに下がれば国が規制を強化し、口座内のドルを売るよう命じられる恐れもあると考え、ドルを現金で引き出した。こうした動きについて政府が何らかの対策を練っている様子は見受けられない。
(Winni Zhou、John Ruwitch記者)
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米利上げとドル高が招く中国の金利上昇
FRBの利上げで中国人民銀行(中央銀行)も対応を迫られた
By NATHANIEL TAPLIN
2016 年 12 月 19 日 17:57 JST
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
***
米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ決定を受け、中国の債券市場は大きな打撃を受けているようだ。この状況が2013年に中国市場をまひさせたような長期の信用収縮につながることはないだろう。それでもこれは中国で金利上昇が広がることを示唆している。
FRBの利上げ決定を受け、15日の上海市場では金利が急騰し、取引の一時停止や中国人民銀行(中央銀行)による大規模な流動性供給を迫られた。16日の取引はやや落ち着いたが、7日物レポ金利は引き続き上昇し、当局は追加流動性の注入を余儀なくされた。
この1年間は大量の短期融資を活性化する場としての大きな役割を果たしてきたため、中国の短期金融市場は重要である。ここを通じて資金の一部は直接経済に送り込まれ、一部はレバレッジ(借り入れ)による債券投資に回った。だがこれらの市場は、中央銀行が急騰するドルに対し人民元を買い支える際に影響を受けることとなる。中銀が実質的に国内市場から資金を吸い上げていることになるからだ。
人民銀行はこの夏、先回りしてこうしたリスクの高い翌日物融資の抑制に動いた(そして国債先物の大量売りを招いた)が、こうした形で大幅なレバレッジ(借り入れ)をシステムから締め出せていなかったら状況はさらにひどかったかもしれない。
翌日物債券レポの週間出来高は、7月半ばにピークをつけて以来40%程度減少しており、現在は大量の債券発行が行われる前の2015年半ばと同水準となっている。14年の水準はまだはるかに上回っているが、一部の市場参加者は明らかに大幅なレバレッジによる債券投資を縮小し、現在は市場へのエクスポージャーを制限している。
とは言え、多くの企業にとって実際の借り入れコストは明らかに上昇している。この1年はこうしたコストが大きく低下し、バランスシートの立て直しや市場混乱の回避に寄与していた。政府は16日、中央経済工作会議閉幕後の声明で、金融状況はあまり緩和的でない可能性があるとし、資産バブルに対処する必要性があると警告した。「住宅は生活のためのものであって、投機のためのものではない」としている。
14日発表された経済指標によると、ノンバンクによる「シャドーファイナンス(影の金融、従来の融資より金利は高い)」は11月の新規融資の約30%を占めた。この割合は1年ぶりの大きさで、シャドーファイナンスが純減した10月からの大幅な転換となる。債券利回りが上昇し、銀行融資の伸びが年央を下回る中、借り手は資金調達先として再び不安定な影の銀行システムに目を向けているようだ。
FRBが来年追加利上げを進めるようなら、中国の債券市場は引き続き痛みを感じるに違いない。
中国、住宅・金融市場の安定優先へ
ENLARGE
中国指導部は改革より経済安定化を優先する姿勢に変わった PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
By
LINGLING WEI
2016 年 12 月 19 日 15:36 JST
【北京】中国指導部は16日、2017年の経済目標として「安定性」を最優先し、資産バブルや金融リスクを抑える考えを前面に打ち出した。わずか1年前には慢性的な経済問題への取り組みを公約に掲げていた。
習近平国家主席率いる指導部は14日から3日間開いた「中央経済工作会議」の終了後、17年の経済運営方針として、住宅市場の問題や混迷を増す金融システムが制御不能に陥らないよう尽力する姿勢を強調した。
中国政府関係者の間では、ドナルド・トランプ次期米政権が推進するとみられる強硬な対中政策に政府がうまく対応できるのか懸念が高まりつつある。同会議の協議内容を知る政府関係者は、海外情勢が中国経済に逆風となりかねないことを習国家主席が強調したとしつつも、トランプ氏が予告している対中貿易制裁への言及があったかどうかは明らかにしなかった。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを速める可能性があることも中国の景気見通しを複雑にしている。
17年の経済運営方針は、より健全な長期的成長に必要とされる過剰生産設備や高水準な債務水準などの是正を主眼とした1年前の方針から一変する内容となった。中国政府関係者やエコノミストらは17年の計画について、これらの改革を推進する姿勢に変わりはないものの、政府が改革よりも経済安定化を優先する姿勢に変わったことがうかがえると指摘した。
中国政府の上席顧問は「最優先事項はリスクを抑制しながら経済成長を維持することだ。(中略)約束した経済再編は実行するだろうが、(経済)全体の安定性が確保されていることが条件となる」と語った。
中国で金融リスクが高まっている。左から四半期GDP成長率、不良債権比率、外貨準備高
https://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AT176_CECON_16U_20161216045708.jpg
今回の方針変更は、最高指導部の大幅な入れ替えが見込まれる17年秋の共産党第19回全国代表大会をにらんでのものだ。人事刷新を控え、指導部は経済自由化の公約に反する新たな資本統制などの政策を導入し、問題が起きないようにしている。
17年の計画は、経済成長率を指導部が容認すると考えられる水準に維持しなければならないという官僚への圧力が強まりつつあることも浮き彫りにしている。これからも中国経済への逆風はやまない見通しであるにもかかわらず、エコノミストや政府顧問の多くは、指導部が17年の国内総生産(GDP)成長率目標を6.5%より低い水準に設定することは避けると予想している。習国家主席は、20年までにGDPと国民一人当たりの所得を10年の2倍に引き上げるためには年平均6.5%以上の成長率が必要だとしている。
一方、大統領選以降のトランプ氏については、台湾の葵英文総統との電話会談など、中国政府にとって不確実性を高める行動が相次いでいる。中国政府関係者の一人は「(われわれの多くは)当惑している」と話しており、トランプ氏を「元の軌道に乗せる」ことが中国政府にとって大きな課題となるだろうと指摘する関係者もいた。
中国を為替操作国に認定し、中国からの輸入品に一律で高関税を課す考えを示しているトランプ氏の公約はまだ実現に至っていないものの、FRBが先週利上げしたことを受け、中国からの資金流出に拍車が掛かり、人民元への下押し圧力が強まる恐れがある。
17年の経済計画からは、人民元の下落を一段と容認する政府の姿勢がうかがえる。実際、多くのエコノミストやアナリストは、中国政府には選択肢がほとんどないと指摘する。中国人民銀行(中央銀行)が大規模な元買い介入を行えば、金融システムから人民元がさらに流出するからだ。
今もなお資金を必要としている中国の製造業者や民間企業にとって、こうした資金流出の可能性は不安材料と言える。一方、人民銀行は利下げや他の積極的な信用緩和策には及び腰だ。債券市場や不動産市場のバブルをいっそうあおることになり、人民元相場をさらに押し下げることにもなるからだ。
実のところ、17年の計画では、16年に「穏健」としていた金融政策方針を「穏健中立」に改め、金融政策を引き締める姿勢を示している。
大きなリスク要因の一つが、中国経済の重要セクターである住宅市場だ。建設など関連産業も合わせると、住宅市場は不動産バブルのピーク時にGDPの25%近くを占めていた。当局はここ数カ月、住宅バブルを抑えるために住宅購入規制を厳格化している。指導部は17年の計画の中に「住宅は住むためのもので、投資の対象ではない」と明記した。
だが、多くのエコノミストは、政府がこれまで導入した住宅政策は長期的な解決策にならないとみている。また、不動産開発業者からは、高い価格で購入した土地に建てた物件の値上げを禁止されているため、債務返済がいっそう難しくなりかねないとの不満の声が多く聞かれる。
2006年以来の米中同時引き締めか−人民銀の「中立」スタンス強調で
Bloomberg News
2016年12月19日 15:08 JST
共産党指導部は慎重かつ中立的な金融政策を打ち出す
米連邦準備制度は利上げペースの加速を示唆
中国共産党指導部は16日まで開いた来年の経済運営方針を決める中央経済工作会議後に、リスク抑制の取り組みを強化する考えを示し、慎重かつ中立的な金融政策を打ち出した。一方、米金融当局は利上げペースの加速を示唆しており、米中両国の金融政策は2006年以降で初めて引き締め方向で足並みをそろえることになりそうだ。
習近平総書記(国家主席)ら指導部は金融システムを守り、資産バブルを抑える方針。会議後に公表された声明では、17年の主な経済政策運営のテーマとして安定維持と供給サイドの改革推進が挙げられた。
中国民生銀行のチーフリサーチアナリスト、温彬氏(北京在勤)は「中国当局は投機を取り締まると決意し、来年もそうするとの意図を明確にしつつある」と指摘。「不動産バブルの抑制は非常に重要だ」と話した。
中国の今年の経済成長率は底堅く、習氏も6.5ー7%の成長率目標の達成に自信を示していることから、政策運営の軸足がリスク抑制に移りつつある。来年の共産党大会を控え、トランプ次期米大統領との貿易面の緊張が生じる可能性など、経済上の課題が残っている。
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループの大中華圏担当チーフエコノミスト、胡志鵬氏(シンガポール在勤)は経済工作会議の声明に関し、「『中立』を強調したことで金融政策は16年に比べてやや引き締め気味になるだろう」と分析した。
だが、米中同時の金融引き締めは保証の限りではない。米金融当局は今年、想定通りのペースで利上げすることができなかった。来年は一段のドル高や世界的なイベントが障害になる可能性もある。一方、中国では金融政策が見直されており、引き締めとなっても大半のエコノミストが据え置きを見込んでいる基準金利の引き上げではなく、短期金融市場を通じたものとなりそうだ。
原題:Neutral PBOC Sets Up First U.S.-China Tightening Since 2006 (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-19/OIF2ZZ6JTSEB01
中国、2017年は金融引き締めも=人民銀高官
[北京 19日 ロイター] - 中国人民銀行のアドバイザー、盛松成氏は、為替相場変動やインフレ高進などの経済へのリスクを抑制するため、来年金融引き締めを行うことができるとの見通しを示した。第一財経日報が19日、インタビューの内容を伝えた。
同氏は、中央経済工作会議で16日、来年も穏健で中立的な金融政策を維持するとの方針が示されたことは、現行政策が緩和的過ぎるということを示している、と語った。
為替相場の変動や物価上昇を踏まえると、来年金融緩和を行う根拠はないと指摘。株式や不動産市場もリスク要因だと語ったが、詳細は明らかにしなかった。
一方で、市場に混乱をもたらす可能性があるため、金融政策を過度に引き締めることもないと強調した。
2017年のマネーサプライM2伸び率は12%を下回ると予想。2016年の目標は13%となっている。
2017年の財政赤字は、対国内総生産(GDP)比で「間違いなく」3%を突破するとし、5%に達する可能性もあるとの見方を示した。
2016年の財政赤字は対GDP比3%と見込まれている。
http://jp.reuters.com/article/china-economy-monetary-policy-idJPKBN1480U1
中国経済成長率、2017年は約6.5%に=政府系シンクタンク
[北京 19日 ロイター] - 中国の政府系シンクタンク、中国社会科学院(CASS)は19日、2017年の同国経済成長率が前年比約6.5%になるとの予想を発表した。
それによると、第1─第2・四半期は6.5%成長を続け、第3─第4・四半期は6.4%に鈍化するという。
今年は第3・四半期までの成長率が6.7%で、通年では25年以上で最も低い伸びとなる見込み。
人民元が下落する中で国外への資金流出を阻止することが中国経済にとっての主な課題になる。元CNY=CFXSは今年、対米ドルで6%超下落している。
中国商務省の研究員は19日、2017年に人民元は対ドルでさらに3─5%下落するとの見通しを示した。
また、2017年の中国の輸出は元建てで4─6%増加し、輸入は2─4%増えると予想した。
一方、CASSは2017年の消費者物価を、前年比2.2%上昇と予想。生産者物価は同1.6%上昇するとの見通しを示した。
*内容を追加します。
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http://jp.reuters.com/article/china-economy-idJPKBN1480B3
S&P500もう一つの節目、時価総額20兆ドルへ
ダウ工業株30種平均の13日終値を表示した株価ボード(ニューヨーク証券取引所)
By CHRIS DIETERICH
2016 年 12 月 19 日 17:04 JST
先週の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均が2万ドル台乗せをうかがう展開が続いた。だが、市場はそれよりも重要性が高いかもしれない新たな節目に近づきつつある。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、S&P500種指数の構成銘柄の時価総額が20兆ドル(約2340兆円)に迫っている。20兆ドルに達すれば、史上初めてとなる。20兆ドルは強気相場が始まった2009年3月時点での時価総額の3.4倍に相当し、到達すれば1999年3月に初めて10兆ドルを突破してから17年ぶりの大台乗せとなる。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによれば、S&P500種指数の時価総額は16日終値時点で19兆5060億ドル。この時価総額は浮動株調整ベース、つまり市場で取引されている株式の時価だけを合算したもので、安定株主の保有株や持ち合い株、政府が保有している株式などを除外した金額だ。ファクトセットによると、米大統領選以降、S&P500種指数の時価総額は約5000億ドル増えた。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのシニア・インデックス・アナリスト、ハワード・シルバーブラット氏によると、07年10月から09年3月までの直近の弱気相場で、同指数の時価総額は7兆9000億ドル減少の5兆9000億ドルとなった。00年3月から02年10月まで続いたIT(情報技術)バブルが終了して以降の弱気市場の局面では、5兆8000億ドル減少した。
米住宅建設、低迷続く理由とは
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米ペンシルベニア州カノンズバーグの住宅建設現場(11月10日) PHOTO: GENE J. PUSKAR/ASSOCIATED PRESS
By
CHRIS KIRKHAM
2016 年 12 月 19 日 13:06 JST
米失業率は過去10年で最低水準付近に低下しており、失業保険申請件数は43年ぶり低水準を付け、住宅価格は過去最高に上昇している。しかし、ここ8年の景気拡大でも、一戸建て住宅の建設件数はリセッション(景気後退)時の水準にとどまっている。
米商務省が16日に発表した11月の住宅着工件数(季節調整済み)は前月比18.7%減の年率109万戸となった。着工の先行指標である許可件数は4.7%減の120万1000戸だった。
毎月の住宅指標はぶれが大きいとは言え、より広範な傾向を見ても低調だ。新築住宅建設件数は2009年初頭に35万3000戸で底を付け、今年11月には年率82万8000戸と2倍以上に回復しているものの、全般的には引き続き抑制されている。
米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)が実施した調査によると、人口増を加味した調整ベースの一戸建て住宅建設件数は1981年と91年のリセッション時の底にやっと戻った程度だ。10月の一戸建て住宅着工件数は9年ぶりの高水準となったが、それでも長期平均を15%超下回っている。
米1000世帯当たりの一戸建て住宅着工件数の割合
https://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CM791_BUILDE_16U_20161216160005.jpg
住宅建設の低迷は住宅市場崩壊の長引く負の遺産の一つであり、これが一層バランスの取れた回復を達成する上で最大の障害の一つとなっている、とエコノミストは指摘する。
ファニーメイのチーフエコノミスト、ダグ・ダンカン氏は「住宅(市場)が通常に戻っていると耳にする機会が多い」と述べた上で、「供給面からすれば通常でないことは明白だ」と続けた。
同業界の内部構造は金融危機に伴う住宅市場の急落とともに崩れ、まだ完全には回復していない。建設業者は熟練労働者の確保に苦戦しており、中小の建設業者や土地開発業者にとっては資金調達が困難になっている。さらに、若い年齢層の住宅購入者は模様眺めの姿勢を崩しておらず、建設業者は高級住宅購入者という小さな集団に照準を絞る結果となっている。
エコノミストは、12年の底入れ以降、住宅価格上昇の大半は需要拡大というよりも供給不足にけん引されていると指摘。今年8月には、売りに出されている中古住宅の米住宅総数に対する割合は、1999年の統計開始以来の最低水準に落ち込んだ。不動産情報大手トゥルーリアが行った全米不動産協会(NAR)と国勢調査のデータに関する分析で明らかになった。
11月の一戸建て住宅着工件数は4.1%減の82万8000戸だった。一戸建て住宅着工件数はリセッション終了以降、住宅建設総数のうちの約3分の2を占めていた。06年には住宅バブル時の最高となる182万戸超のピークを付けた。
中古住宅販売も景気回復期におけるこの局面としては通常を下回っている。人口調整ベースでの中古住宅販売は現在、住宅バブル発生前の1999〜2003年の水準を約10%下回っている。
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フロリダ州オーランドの住宅建設現場(2015年2月13日) PHOTO: PHELAN M. EBENHACK/ASSOCIATED PRESS
潜在的な住宅購入者について見てみると、雇用見通しの不透明さのため若年層がリセッション中は模様眺めにとどまっていた。またそれ以来、学生ローンの拡大や、住宅ローン融資基準の厳格化が強い向かい風となっている。米調査会社ピュー・リサーチ・センターが先週行った調査では、賃貸住宅入居者の72%は将来的に住宅を購入する見通しだと回答したが、住宅ローン申請者数は大幅に減少している。ピュー・リサーチによると、こうした潜在的な住宅購入者の多くは住宅ローンを受けられないと考え、申請をしていない。
その結果、数百万の米国の若年層が友人や家族と同居することになり、住宅需要の主なけん引役である世帯形成が抑制されている。30歳未満の若者は過去10年間に約500万人増加したが、この世代の世帯数は同時期に20万の増加にとどまっている(ハーバード大学のジョイント・センター・フォー・ハウジング・スタディーズ調べ)。
こうした若年層が05年と同じ割合で世帯を形成していたとすれば、今日の30歳未満の世帯数は約170万多かっただろう。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のウィリアム・ホイートン教授(経済学・不動産学)は「住宅建設業者は、世帯形成が非常に遅れているという事実を大いに考慮している」と続けた。
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トランプ株高、大統領就任式まで「寿命」持つか
イエレンFRB議長は、米経済はほぼフル稼働であるため財政刺激策は不要との考えを示した
By JAMES MACKINTOSH
2016 年 12 月 19 日 13:08 JST
――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
***
米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長は、闘牛士が乗る武装馬(鎧をつけた馬)を持っていないかもしれないが、ブルマーケット(強気相場)に対する影響力は闘牛の槍ほどの効果しかないようだ。
イエレン議長の14日の発言を受けて、株式市場は大きな打撃を受けると見られていた。その日、FRBは追加利上げに踏み切るとともに、2017年の利上げ回数予想を3回に引き上げた。イエレン議長は、米経済はほぼフル稼働状態にあるため財政刺激策は不要だと述べ、ドナルド・トランプ次期米大統領が公約通り減税を実施すれば利上げをさらに加速させる可能性をほのめかした。
ところが、米国株は14日こそ下落したものの、15日には反発した。16日は小反落したが、それでもダウ工業株30種平均は週間ベースで6週連続でプラスとなった。
イエレン議長の放った槍で足元の強気相場が崩れることはなかった。この「トランプラリー」にとって本当のリスクはそれ自体にある。闘牛場の観衆は、闘牛の突進をかわして倒すマタドールの華麗な姿に魅了されるものだが、株式市場の場合はトランプ氏の華やかさ、すなわち減税やインフラ支出という有望な見通しに魅了されている。
17年を迎えるに当たっての問題は、トランプ氏が大統領に就任する前に強気相場が勢いを失うかどうかだ。
株価は上昇が急ピッチだったため調整が入りやすくなっている。相場の勢いが増せば増すほど、強気相場が一巡してトレンドフォロー型の投資家が一斉に売りに転じたときのダメージも大きい。
実際、今回の相場の動きは非常に速い。米大統領選後に見られたディフェンシブ株から景気敏感株にシフトする動きは、リーマンショック後の反発局面の中で最大となっている。10年物米国債相場の下げ幅は、2013年の「テーパリングかんしゃく」時にほぼ匹敵する。さらに、ドルが対円で9%も急騰し、通貨バスケットに対しては02年以来の高値を付けている。
トランプ氏の政策が速やかに実行されるかどうか、また、それが公約通りの壮大な内容になるかどうかを心配する理由はいくつもある。こうした不安が直ちに意識されない限り、相場の上昇は続きそうだ。
HSBCの為替戦略部門責任者、デービッド・ブルーム氏は、大統領選後の株式や債券、ドルの素早い動きに乗り遅れた投資家はいま遅れを取り戻そうとしてトランプトレードに巻き込まれていると指摘。「現在は高揚感が高まっている。アドレナリンが出ているときは痛みを感じないが、それが止まると痛みに襲われる」と述べた。
ドルにとってその瞬間がやって来るのは、トランプ氏の公約が議会審議で現実に直面する17年5月か6月になると同氏はみている。
バンクオブアメリカ・メリルリンチのファンドマネジャー調査によると、経済成長やインフレ、企業利益に関して回答者が自信を強め、成果がすぐに出る投資を行っていることがうかがえる。他の調査でも強気心理が過熱を示す水準に向けて急上昇している。
市場で既に持ち高が積み上がっている取引を手掛けるリスクの大きさは、今夏の出来事で明らかなはずだ。ほんの数カ月前の市場では世界的なデフレ懸念が支配的で、経済成長に賭けようという投資家はいなかった。10年物の米国債利回りは7月、取引時間中の過去最低となる1.32%を付けた。これはもう遠い昔のことのようだ。10年債利回りは15日に一時2.64%まで上昇した。
市場ではトランプトレードによる持ち高がますます積み上がっている。そのため、トランプ氏の実力が期待されたほどではない兆候が見られた場合にこうした取引が被る打撃も大きくなっている。米国株を買い続ける投資家は、強気相場に「買い疲れ」が生じないよう願った方が良さそうだ。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjh47bai4DRAhWEnZQKHcbIB88QqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11677208751388613819604582505921123052872&usg=AFQjCNEty9Y8FlOlWrx-uYLiNXh3NRs17Q
2016年12月19日公開(2016年12月19日更新)
ザイ編集部
「日本債券型投信」の安全神話はもはや過去のもの!日銀のマイナス金利政策の導入で最終利回りが信託報酬を下回って成績が悪化するリスクに要注意!
ダイヤモンド・ザイ1月号では、ザイ読者10人の保有する投資信託が「いい投資信託」なのか「悪い投資信託」なのか、プロに診断してもらう特集『行列ができる投信診断室』を掲載。診断してくれたのは、長年投資信託に携わってきた経験を活かし、投資信託を評価するデータベース「ファンド・ラボ」を開発した「投信の窓口」ファンド・リサーチセンター長の植村佳延さん。今回は、2種類の債券型ファンドを保有する読者への診断を抜粋して紹介しよう!
★保有投資信託に不安を感じる読者・石橋さん
石橋典夫さん(仮名・青森県・42歳)
大きなリスクは取りたくない安定運用志向で、日本債券を組み入れたファンドと為替ヘッジ型の世界公共インフラ債券ファンドに投資。しかし、本当にリスクを抑えられているか、肝心の利回りに問題ないかが不安。
★石橋さんが保有する投資信託
◎「三井住友・日本債券インデックス・ファンド」
◎「UBS世界公共インフラ債券投信(円コース)」
石橋さんの保有銘柄の診断結果(1)
⇒「三井住友・日本債券インデックス・ファンド」(保有額の68%)
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日本の国債や地方債、社債などに投資する日本債券型の投資信託は、低リスクで安定的にプラスの成績を上げていましたが、問題が浮上しています。日銀がマイナス金利政策を導入し、10年物国債の満期まで保有した場合の最終利回りがマイナスとなってしまったのです。
低コストのインデックス型にも影響は大きく、「三井住友・日本債券インデックス・ファンド」の保有債券の現在の平均最終利回りは0%。そこから信託報酬の0.17%を引くと、マイナス0.17%になります。
さらに金利が低下すれば、債券価格の上昇で値上がり益が狙えますが、金利が横ばいの場合は、運用収益で信託報酬をカバーできず、成績悪化は避けられません。低コストのインデックス型でも「日本債券型だから安心」という認識は改めるべきです。
石橋さんの保有銘柄の診断結果(2)
⇒「UBS世界公共インフラ債券投信(円コース)」(保有額の32%)
拡大画像表示
もう1つの保有投資信託「UBS世界公共インフラ債券投信(円コース)」は、インフラ債券に投資する通貨選択型の円コース型。為替リスクを排除できるのが、この円コースや為替ヘッジ型ですが、ヘッジ取引の需要が強いこともあり、円からドルに投資するヘッジコストが上昇しています。
「UBS世界公共インフラ債券投信(円コース)」も、最終利回り1.84%から信託報酬の1.65%を差し引くと0.19%。ヘッジコストを差し引くとマイナスで、今後成績が悪化する可能性があります。
ポートフォリオの診断結果は…
為替リスクがない債券型投信も
低金利とヘッジコストで危険な状況!
安定的な資産増を目的に低リスクの日本債券型を買うのは従来は悪くない方法でしたが、マイナス金利政策の導入により、投資信託が保有する債券の最終利回りが信託報酬を下回り、成績悪化リスクが高まっています。
国債は日本も先進国も低利回りですが、先進国の投資適格の普通社債などを含む投資信託なら信託報酬を上回るものがあります。月次レポートなどを見て、最終利回りと信託報酬を確認して投資することが大切です。資産の傾向もチェックしましょう。
債券型から独立系投信、ラップ型投信まで多様な投信を診断
ダイヤモンド・ザイ1月号の「投信診断室」をチェック
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