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日産が虎の子の部品メーカーを売却した理由は?(c)AFP/SCOTT HEPPELL〔AFPBB News〕
自動車業界が2017年に歴史的転換点を迎える理由 キーワードは「EV」と「自動運転」、そして「北米市場」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48685
2016.12.19 加谷 珪一 JBpress
これまで完璧な垂直統合モデルを構築し、あらゆる面で盤石だった自動車業界に、とうとう地殻変動の兆しが見え始めた。キーワードは「EV(電気自動車)」と「自動運転」、そして「北米市場」である。2017年は自動車産業における歴史的な転換点となるかもしれない。
■トヨタはエコカー戦略を転換、日産は虎の子部品メーカーを売却
トヨタ自動車はこれまでの方針を大きく転換し、EVの量産化に踏み切るという決断を行った。11月17日にEVの開発を担う社内ベンチャーを発足すると発表し、EVの開発を本格化させる方針を内外に示した。これは見方によっては、従来のトヨタの戦略を根本から変えてしまうほどのインパクトを持つ。
同社は次世代のエコカー戦略について、一貫して、燃料電池車(FCV)とハイブリッド車(HV)を中核として位置付けてきた。特にFCVについては、日本の国策にもなっており、全国に水素ステーションを建設する計画まで浮上している。だが、こうしたトヨタの思惑とは逆に、世界ではEVがエコカーの主役となりつつあり、FCVは劣勢に立たされている。
トヨタは世界最大の自動車メーカーなので、あらゆる製品ラインナップを揃えておく必要がある。EVが相対的に有利になってくるのであれば、それに対応した製品を開発するのはトップメーカーとしてはごく当たり前の行為であり、声高に叫ぶような話ではないとの見方もあるだろう。だが自動車業界のEVシフトはかなり本格的なものであり、今回のトヨタの決断は、単にラインナップの中にEVが加わったということ以上の意味がある。
EVシフトの動きは日産を見ればより鮮明である。同社は11月22日、保有するカルソニックカンセイの株式を米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却すると発表した。日産はカルソニックカンセイの株式を約41%保有していたがこれをすべて手放す。
カルソニックの株式を売却するのは、財務的に見た場合、傘下に収めた三菱自動車の取得費用の手当てということになるが、現実には1900億円にのぼる売却代金の多くはEVへの開発投資に充当されることになる。
日産はもともとEVに積極的なメーカーであり、三菱自動車を救済したのも三菱が持つ電気自動車の技術に魅力を感じたからだ。日産にとってみれば、今がEVに本格投資する絶好のタイミングであり、資金捻出のため、虎の子である部品メーカーの売却に踏み切ったものと考えられる。
(参考・関連記事)「日本ではなぜ報じられないのか?車の潮流はEVへ」
■自動車産業は完璧な垂直統合モデル
それにしても、自動車メーカーが中核となる部品メーカーを売却するというのは、従来の常識ではとても考えられない。これまで自動車業界は完成車メーカーを頂点とした完璧な垂直統合モデルを形成していた。その理由は、内燃機関は技術的な難易度が高く、優秀な技術を持つ部品メーカーを囲い込んでおかないとバリューチェーンを維持できないからである。
完成車メーカーは、機関系の開発と最終組み立てを行い、駆動系や電装系は有力な部品メーカーが開発・製造を担当していた。例えばトヨタは、トランスミッションなど駆動系を得意とするアイシン精機、電装系を担当するデンソー、走行系に強い曙ブレーキなど、優秀な部品メーカーを傘下に抱えている。
これは米国など諸外国も同じで、むしろ日本の自動車メーカーは米国の自動車メーカーと比較すると内製率が低いくらいだった(かつて米国の自動車メーカーは鋼板まで内製していた時代もある)。トヨタがFCVにこだわったのも、まさにこの部分であり、内燃機関の技術を残すことでグループのバリューチェーンを維持したかったからである。
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