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家賃補助で女子比率は上がるのか。「そもそも女子にとって東大は魅力がないのでは」という声もある(撮影/写真部・大野洋介)
東大の「女子限定」家賃補助 ずるい? それとも…?〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161214-00000208-sasahi-soci
AERA 2016年12月19日号
大学が、世間と隔離された「象牙の塔」と言われたのはまさに「今は昔」。国からの補助金も削られ、若年人口も減少する中、自ら「稼ぐ」ことなしに生き残りを図れない傾向が強まっている。働く環境の悪化に苦しむ教職員。経営難の地方私大の中には「ウルトラC」の離れ業で大逆転を狙うところも出てきた。そんな大学の最新事情を12月19日号のAERAが「大学とカネ」という切り口で特集。
毎年、全国から数多くの入学者を集める東京大学では、女子学生限定の新たな制度がスタートする。なぜ、女子学生限定なのか、その狙いとはなんなのか、東京大学が行う注目の取り組みについて紹介する。
* * *
「なぜ女子学生だけが好条件で住めるのか」
「該当する物件はもともと学生に人気が高い。女子学生向けに確保されると、男子学生が入居しづらくなるのでは」
男子学生からは、そんな不満の声も上がる。
東京大学は2017年4月から、1〜2年生が通う東京都目黒区の駒場キャンパス付近で、セキュリティーが十分で保護者も宿泊できるといった条件を満たす100室を借り上げる。ここには、東大に入学する女子で通学に90分以上かかる人だけが入居でき、月額3万円の家賃補助もするという。
●20年までに女子3割
冒頭のような声も少なくないが、東大の女子学生は約4割が自宅外から通学しているのに、10年に取り壊されて以降、東大には女子寮がない。いま、女子が安価に入居できるのは、三鷹市にある男女共同の寮のみだ。
「新たな女子寮の建設を検討しているが、建設コストの高騰もあり、寮の整備が遅れているため、即効性のある今回の措置となった」(東大広報担当)
背景には、女子学生比率を引き上げたいという狙いがある。
東大は、20年までに女子学生比率を全体の3割まで引き上げることを目標にしているが、16年現在で全体の19%と、2割に満たない。
タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「世界大学ランキング」の上位に名を連ねる海外トップ大学はいずれも、女子学生比率が高い。米イェール大学が49%、スタンフォード大学が42%、英ケンブリッジ大学が45%と、東大を大きく引き離している。国内の難関大学でも、大阪大学、早稲田大学、慶應義塾大学、名古屋大学はいずれも3割を超えている。
学部から大学院に進学した男子学生(23)は、東大はとにかく女子学生が少ないと嘆く。
「理Iの1〜2年生のころのクラスでは38人中女子は3人。理学部物理学科に進学すると、71人中女子はゼロでした。現在所属する研究室では、女性は教授の秘書1人だけです」
どの大学でも学部によって女子比率は異なるが、そもそも女子学生が少ない東大では、理学部や工学部といった学部ではまるで男子校のようにほとんど女子がいない状態だ。
女子の受験生を増やすために、女子高校生向けのイベントを開くなどしてきたが、なかなか増えないのが現実だという。
「なぜ増えないのか」を知るために、東大に在籍する女子学生の特徴を見てみよう。
東大が毎年実施している学生生活実態調査(14年)によると、自宅通学者は全体では55.9%だが、女子学生に限ると60.9%。親の年収を見ると、全体では年収750万円以上の世帯が70.1%で、女子学生に限ると72.2%。さらに年収が1550万円以上の世帯は全体で13.6%、女子学生に限ると14.5%だった。
●たとえ学力があっても
厚生労働省によると、14年の日本人の平均世帯所得は541万9千円だから、東大生の家庭は比較的裕福で、女子学生ではその傾向がより強いと言っていいだろう。
典型的なのは、都内の私立中高一貫進学校から東大へというケースだ。
東大理科II類を卒業し、現在は東大大学院に通う女子学生(26)もそう。中学3年生のときに始めた通信教育をきっかけに、東大を目指した。
「周りの友だちも東大志望が多かった。東大は自然な選択肢でした。親も高校の先生も、好きなところに進学しなさいと言ってくれて、ものは試しと勉強を続けたら、受かっちゃったという感じです」
経済的に豊かで自宅通学が可能。さらに、周囲の理解や協力もある──。これが、東大という選択をする多くの女子学生の共通項だ。
逆に言えば、地方在住で経済的に厳しい状況に置かれ、周囲の理解や協力も得られない女子学生が東大への進学を目指すことは、たとえ、東大に合格できるだけの学力があったとしても、かなりハードルが高い。
●通学できる範囲で進学
札幌市で受験生を指導する、駿台予備学校札幌校校舎長の藤井真哉さんはこう話す。
「うちですごく成績がいい女子には、地元の北海道大学志望者が多いんです。十分に東大を目指せるのに、なぜ北大?と聞くと、『親が道外に出してくれない』と言う人もいます」
以前は東京で予備校生を指導していた。男子であれ女子であれ、志望校選びの基準は成績だったと藤井さんは言う。
しかし札幌では、
「成績はトップでも、家の事情が上京を許さず、家の手伝いをする必要があるので自宅から通える道内の大学に進学するという女子もいました」
大学進学の地域格差を調査する国立教育政策研究所高等教育研究部総括研究官の朴澤泰男さんはこう話す。
「女子のほうが、自宅から通学しやすい範囲で進学する傾向がありますが、背景には親が娘をひとりで遠くに行かせたくない、出すとしてもせめて、セキュリティーがいいところに住まわせたい、という希望があるようです」
東大生の生活費の支出合計は月額9万3210円で、その最も多くを占めるのが住居費6万1080円だ。セキュリティーがよくて大学から近い物件に住もうとすると、住居費はさらに上がるだろう。「女子比率を上げる」という目標を達成するには、現在4割以下にとどまる、地方出身者など自宅外から通学する女子学生を増やす必要がある。その意味で、住宅支援は効果的なインセンティブになる可能性が高い。
朴澤さんは、
「過去20年間で東京など都市部で大学の収容力が増えたことで、進学率が上昇してきました。それによって、地方間の進学率の差が広がった面もあります」
と説明する。
●目に見えない壁もある
浪人生を含む大学進学者数をその年の高校卒業者数で割った大学進学率は、男女ともに年々伸びて、15年度の全国平均は男子51%、女子46.6%。大学進学者数の男女比率は、1.1:1とほぼ同じだ。男女間の進学格差も、全体では徐々に縮小している。
だが、1990年代には縮小していた都道府県間の進学格差が、この10年は逆に拡大している。
都道府県別大学進学率は、05年度ではトップの東京都が50.6%、最下位の鹿児島県が25.8%とその差は24.8ポイントだったが、15年度にはトップの東京都が63.9%、最下位の鹿児島県が30.1%とその差は33.8ポイントに拡大している。
となると、地方出身の女子学生が東京で一人暮らしをするための支援は、より重要になるだろう。
経済的支援では乗り越えられない、目に見えない壁も厳然としてある。
東海地方出身で東大を卒業した女性会社員(36)は、親戚からかけられた言葉が忘れられない。
「女の子が『東大出身』なんて言うと、お嫁に行けなくなるわよ」
男女の大学進学率の差が縮まっても、男性のほうが女性よりも高学歴であってほしい、という男性優位の考えは、日本のあちこちに残っているのか。(編集部・長倉克枝)
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